【健康診断】見逃しがちなPSAの数値、何を意味する?前立腺に関係が?医師が解説
健康診断や人間ドックを受けて、検査結果が届いた!けど…「γ-GTPって結局何?」「アルブミンってなんのこと?」など、わからない用語がたくさん。知っているようで実はよく知らない用語について、医師が解説。今回は「PSA」を取り上げます。
PSAとは
PSAとは、前立腺特異抗原(英語表記:prostate-specific antigen)の略語であり、前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパク成分です。
その多くは精液中に分泌されますが、ごく微量が血液中に取り込まれていて、近年においては健康診断や人間ドックの検査などでPSAの数値をチェックする機会が増加しています。一般的には、PSAの基準値は一般的には0~4ng/mLとされていて、基準値を超える場合、すなわち4ng/mL以上になった場合にはPSAが高値と判定されます。
また、若年者の場合には、基準値を3ng/mL以下などのように年齢によって基準値を低く設定する場合もあります。PSA検査は前立腺がんを早期発見するための最も有用な検査であり、前立腺がんや前立腺炎などの炎症に伴って前立腺組織が壊れると、PSAが血液中に漏れ出して数値が増加します。
血液検査でPSA値を調べることによって前立腺がんの可能性を調べることができ、PSA値が4~10ng/mLの場合には、約25~40%程度の割合で前立腺がんが発見されることがある一方で、PSA値が10ng/mL以上の場合でも前立腺がんが発見されないこともあります。
PSAの数値が異常になると何を意味するのか
PSAが高い場合に考えられる疾患は前立腺がん、前立腺肥大症、前立腺炎などが挙げられますが、もっとも見逃してはならない重要な疾患が前立腺がんです。
前立腺がんは、前立腺細胞が無秩序に増殖を繰り返す疾患であると認識されており、加齢と共に罹患率が増加する病気です。2016年には本邦における前立腺がんの罹患数は男性におけるがん疾患の中で第一位と推定されるにもかかわらず、その死亡者数は2014年に減少に転じるなど近年において前立腺がんの疫学的状況に変化を認めています。
前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な増殖機能を失って緩徐に自己増殖することが知られており、早期に発見すれば根治的に治癒することが可能な疾患とされています。前立腺がんの多くの症例でがんの進行度は比較的ゆっくり進展すると言われていますが、時に前立腺の近傍リンパ節や骨、肺、肝臓などに転移することが認められます。
早期の段階における前立腺がんは、ほとんど自覚症状が無く経過しますが、症例によっては尿が出にくい排尿困難、あるいは排尿の回数が多い頻尿症状が出現することもあります。前立腺がんの病状が進展すると、血尿、腰痛など骨転移に伴う疼痛症状が合併して認められることも経験されます。前立腺がんによる有意症状が自覚されずに経過することも多いため、周囲リンパ節、骨、肺、肝臓など他臓器に転移した進行がんの状態で初めて発見されることも少なくありません。
前立腺がんの明確な発症メカニズムは解明されていないのが現状ですが、発症リスク要因としては、アンドロゲンと呼ばれる男性ホルモン、あるいは遺伝性や加齢などの要素、そして肥満体形や喫煙歴なども関連していると言われています。また、日常生活において動物性脂肪やカルシウムの過剰摂取など日々の食生活習慣の乱れが前立腺がんの発症に関連する危険因子として認識されています。
まとめ
これまで、血液検査の結果のところにある「PSA」の概要やPSA値が異常になると何を意味するのかなどを中心に解説してきました。
PSAとは、前立腺特異抗原(英語表記:Prostate Specific Antigen)の頭文字をとった略称であり、前立腺で作成されるタンパク質です。健康診断など採血検査で測定できる指標値であり、前立腺肥大症や前立腺炎の発症を予測できる、あるいは前立腺がんの腫瘍マーカーとして広く用いられています。
特に、前立腺がんを早期に診断する為に、血液検査でPSA値(基準値は0~4ng/mL)を調べる方法は最も簡便で有用な検査として認識されており、PSA値が4~10ng/mLであれば、約3割程度の割合で前立腺がんが発見されると言われています。前立腺という臓器は男性にしかない特有のものであり、尿道という尿の通り道を取り囲むようにして膀胱の真下ぐらいの位置に存在しています。
前立腺肥大症や前立腺炎、そして前立腺がんは、早期段階で発見すれば治癒する見込みが高いため、泌尿器科専門医に適切なタイミングで相談することが推奨されます。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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