危険な頭痛の見分け方は?薬の飲み方で注意すべきことは?日本一多忙な専門医が【頭痛の疑問】に回答
1日300人もの患者さんを診察、日本一多忙な頭痛の名医、清水俊彦先生に『頭痛』にまつわる素朴な疑問にお答えいただきました!
Q.片頭痛はどうして起こるの?
最初に脳血管内に血小板からセロトニンが異常に放出され、これに反応して脳血管が一度収縮します。その後、今度はセロトニンが代謝して枯渇した状態になり、脳血管はその反動で異常に拡張します。その情報を脳血管周囲のセンサーである三叉神経が読み取り、大脳に痛みの情報として伝えることにより片頭痛の痛みが引き起こされます。
Q.片頭痛に種類はある?見分け方は?
片頭痛は前兆の有無により「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」に大別できます。まず「前兆のある片頭痛」についてご説明します。片頭痛の痛みは最終的に脳の興奮状態を伴い引き起こされますが、この興奮状態が強いと視覚前兆として目の前にギザギザ光が出たり、また視野の一部が欠損したりします。このような視覚前兆が数十分続いたのちに片頭痛の痛みが誘発されますが、この視覚前兆は火山の噴火の前触れのようなもので激しい痛みを引き起こすことが多いようです。それ以外の大半の片頭痛は予兆症状として片側の肩こりや頸部の痛みをきたしたのちに頭痛が生じる、「前兆のない片頭痛」であることが多いようです。
Q.痛む場所によって対処法は変わる?
片側の片頭痛の痛みの際には、鎮痛薬が手元にない場合でも簡単にできる対処法があります。耳孔の少し前にある浅側頭動脈という皮膚の上から触れる動脈を指先で軽く圧迫します。これにより痛みが軽減することもあります。またこの場所をタオルで包んだ保冷剤で冷やすことも有効です。
Q.自分で対処してよい頭痛とすぐに病院にいったほうがよい頭痛、見分け方は?
鎮痛薬で軽減する軽い痛みは月に1~2日であれは問題はありません。ただ、毎日痛い、もしくは頭痛が2~3日続く、更に随伴症状として嘔気や嘔吐を伴い寝込んでしまうようになれば専門の医療機関を受診するのが良いでしょう。また痛みに伴い手足のしびれやしゃべりにくい、もしくは日増しに頭痛が強くなるような際には、脳内に器質的疾患が潜んでいることを考え、緊急に医療機関で検査を行うべきでしょう。
Q.市販の頭痛薬が効かないとき、痛みを緩和する方法はある?
市販の頭痛薬によって、片頭痛の痛みは改善しますが、痛みの水面下にある脳の過敏状態は残存します。したがってこの過敏性が蓄積してゆくと片頭痛の頻度や程度が増悪し、抑えきれなくなります。このような際には病院処方のトリプタン製剤という、痛みと共に水面下の脳の過敏状態も改善する発作頓挫薬もあります。最近はラスミジタンという異なる作用機序のお薬も発売されています。また、水面下の脳の過敏状態があまりにも大きい際には、片頭痛予防薬として、抗てんかん薬であるバルプロ酸Naを少量処方することもあります。しかし毎日の予防薬がうまく服用できない、もしくは何等かの副作用で予防薬を服用できない際には近年、抗CGRP抗体製剤(ガルガネズマブ、フレマネズマブ)もしくは抗CGRP受容体抗体(エレヌマブ)という片頭痛発作の際に脳血管周囲に放出される神経炎症たんぱくを中和する、もしくは脳血管壁のCGRP受容体をブロックして片頭痛を起こりにくくする月に1回の注射剤も処方可能となり、片頭痛治療の幅も広がりました。まずはどの治療がよいか専門の医師に相談するとよいでしょう。
Q.頭痛の薬を常飲することによる副作用はある?
片頭痛の痛みに対して市販の頭痛薬での対処を繰り返すことで痛みの水面下にある脳の過敏状態は徐々に蓄積してゆき、結果として毎日頭が痛くて頭痛薬を服用してしまうという、薬物乱用頭痛(薬剤の使用過多による頭痛)に陥ってしまいます。しかしながら、頭痛薬を使わずに我慢しても脳の過敏状態は残存し、蓄積してゆきます。結果、同じように毎日頭が痛い状態に陥り、慢性片頭痛と呼ばれる状態に陥ります。また、歳をとって脳血管が動脈硬化を起こして異常に拡張しなくなり頭痛が軽減しても、脳の過敏状態のみが残存してしまい、これが浮動性の眩暈や耳鳴り(頭鳴症状)に変化する、いわゆる脳過敏症候群に陥ってしまいます。このような状況に陥らないよう、片頭痛に対しての正しい知識と対処、時に専門的な治療が不可欠であると言えるでしょう。
Q.ピルを飲んでいるけど、頭痛薬を服用しても問題ない?
一般的にピルを服用し女性ホルモンの急激な変動をなくすことで大きな頭痛発作はあまり起こらなくなることもありますが、だらだらとした慢性的な頭痛に変わることも多く、また脳の大きな静脈の血栓形成のリスクを伴うことがあります。特に痛くなる前にチカチカとした視覚前兆を伴う片頭痛では頭痛期になる前の脳血管の異常な収縮が強くなるためピルの処方は禁忌とされています。トリプタン製剤は頭痛期の異常な拡張を収取させるため、ピルを服用している患者さんでは、あまり好ましくないかもしれません。このような際には脳血管周囲ではなく三叉神経核と呼ばれる三叉神経の大元に作用するとされているラスミジタンという頓服薬、または通常の鎮痛薬を服用するか、もしくは抗CGRP抗体薬、抗CGRP受容体抗体薬による予防的治療を優先し、トリプタン製剤の頻回の服用を抑えるのが良いでしょう。
Q.頭痛の緩和、体質改善に有効なサプリメントや漢方はある?
一般的に医学的確証があり、片頭痛の予防に有効とされているのはビタミンB2、もしくはマグネシウムです。B2は脳神経細胞の異常な興奮を抑制し、またMgは脳血管を安定させることから片頭痛を予防するとされており、これらを多く含む食事を心掛けることは頭痛予防には有効であるとされています。またハーブのうち夏白菊(フィバーフュウ)の葉っぱを煎じて飲むことは片頭痛予防に有効であるとされています。これはその成分中に血小板からのセロトニンの異常放出を抑制する効果があるとされているためですが、血小板抑制効果のため、過量摂取により口内炎ができたり、また妊婦では流産のリスクがあり禁忌とされており注意が必要です。
Q.妊娠してから、定期的に強い頭痛に悩むように…薬を服用しても問題ない?薬以外で頭が痛くなった際にできる対処法はある?
妊娠中の治療は限られており、一般的に頭痛時にはアセトアミノフェンや制吐剤のメトクロプラミドで対処することが良いとされています。上述の様にビタミンB2製剤を予防的に処方することもありますが、なによりも大切なのは生活改善です。血糖値を一定に保つよう規則正しい食生活を心掛け、極力ブルーライトへの暴露を避けるよう、夜間のPCやスマホの使用を控える、外出時には帽子とサングラスを携帯するなど強い日差しを避けて行動するようにしましょう。
教えてくれたのは…清水俊彦(しみず・としひこ)医師
東京女子医科大学脳神経外科頭痛外来客員教授、獨協医科大学神経内科臨床准教授。1986年、日本医科大学卒業。東京女子医科大学脳神経外科学教室入局。1998年、東京女子医科大学脳神経外科 頭痛外来講師。2004年、獨協医科大学神経内科講師。2011年より、現職。現在、東京女子医科大学をはじめとする複数のクリニックで頭痛外来を担当。月に一度は伊豆大島にも診療に出かけている。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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