トマトのへたを食べてはいけない理由|味や食感以外でも食べない方が良い理由とは?管理栄養士が解説
トマトを食べるときは、捨てるのが当たり前になっている「へた」。「おいしくない」「食感がわるい」以外にも、食べないほうがよい理由があります。そこで今回は、トマトのへたを避けるべき理由を管理栄養士が解説します。
【理由1】へたには有毒成分が含まれるから
トマトの赤い実には、ビタミンAやビタミンC、ビタミンEなど、身体にうれしい栄養素が豊富です。
一方でトマトには、じゃがいもの芽に多く含まれる天然毒素「ソラニン」とよく似た構造の「トマチン」も含まれます。トマチンとは、ソラニンとおなじような毒性を持つグリコアルカロイドとよばれる成分です。
トマチンを大量に摂取すると食中毒を起こすおそれがあり、吐き気や嘔吐、腹痛、頭痛などの症状が出ることもあります。
トマチンは、熟したトマトの実にはほとんど含まれません。そのため、一般的な食べ方であれば、トマチンによる食中毒を心配する必要はないでしょう。しかし、トマトのへたや茎、葉、熟していない青い実には、熟した赤い実よりもトマチンが多いといわれています。
また、トマチンには強い苦みがあるため、トマチンの多いトマトのへたは風味も食感もよくありません。
へたを数個食べたくらいでは、食中毒を発症するとは考えにくいですが、「おいしい」「栄養価が高い」などのメリットもないため、あえて食べる必要はないでしょう。
【理由2】へたのまわりに細菌が溜まりやすいから
「トマチンによる影響がないのであれば、数個くらいへたを取らずに食べてもよいのでは?」と考える方もいらっしゃるでしょうか。しかし、トマトのへたを避けてほしい理由はほかにもあります。
それは、洗浄不足によって食中毒を起こすリスクがあることです。トマトのへたは複雑なかたちをしているため、流水で洗っても細菌が落としきれず、食中毒の原因となるケースがあります。へた自体はもちろん、へたの根元周辺も細菌が残りやすい部分です。
衛生上の観点からいうと、トマトはへたを取り除いてから流水で洗って食べるのがよいでしょう。
お弁当の彩りにミニトマトを使う方も多いかもしれませんが、お弁当は詰めてから食べるまでに時間があいてしまうため、雑菌が繁殖しやすい環境でもあります。ミニトマトはへたを取ってから流水で洗い、しっかりと水気を拭いてからお弁当箱に詰めるようにしましょう。
トマトのへたを誤って食べてしまったときは?
誤ってトマトのへたを食べてしまったと気づいたら、それ以上食べるのはやめましょう。前述のとおり、トマチンの摂りすぎを心配しすぎなくてもよいと考えられますが、もしも吐き気や腹痛など、体調に変化がみられた場合にはかならず医療機関を受診してください。
まとめ
「トマトのへたを食べない理由」について、あまり考えたことがないかもしれません。実はトマトのへたには、食中毒を引き起こす可能性が少なからずあります。食中毒の発症を防ぐためにも、トマトはへたを取り除いてしっかりと洗ってから、おいしくいただきましょう。
【参考文献】
・レファレンス協同データベース「トマトに含まれるトマジンという成分について知りたい。(多量摂取すると毒になるという。)」
・一般社団法人日本植物生理学会「植物Q&A トマチン」
・文部科学省「調理場における衛生管理&調理技術マニュアル」
・農林水産省「aff 2022年12月号 家庭で実践!食中毒予防策」
・農林水産省「ソラニンやチャコニンによる健康影響」
AUTHOR
藤倉詩織
管理栄養士。【予防医療】にかかわりたいという思いから、大学卒業後は健診センターに就職。メタボリックシンドロームや生活習慣病の方への栄養指導・特定保健指導を経験し、現在はフリーランスの管理栄養士・ライターとして活動中。
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