若者だけじゃない【コロナ禍で急増する性感染症】どんな症状?予防するには?泌尿器科医師が解説
コロナ禍で、梅毒に感染する人が急増しています。どんな症状なのか、そして万が一感染してしまったらどうすればいいのか?医師が解説します。
梅毒とは
皆さんは梅毒という名前を聞いたことがありますか?梅毒は、梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌に感染して起こる性感染症です。江戸時代にも多くの遊女たちが梅毒に苦しんでいたことが漫画「JIN-仁-(集英社)」でも描かれていましたね。厚生労働省によると2021年(令和3年)の梅毒患者報告数は7875人でこれまでの最多報告数であった2018年(平成30年)の7007人を上回りました。梅毒患者が急増している理由として、近年の性生活の多様化やSNSを通じた出会いの場が増えて性活動が活発化していることが一因であると考えられています。
感染経路
主な感染経路は、感染部位と粘膜や皮膚の直接の接触です。具体的には、性器と性器、性器と肛門(アナルセックス)、性器と口の接触(オーラルセックス)等が原因となります。妊婦さんが感染すると胎盤を通じて胎児に感染する場合もあるため注意が必要です(先天梅毒)。
症状
梅毒は、症状が出たり消えたりしながら少しずつ全身を侵していく感染症です。大きく分けて第1期から第3期までに分類され、それぞれの時期で特徴的な症状が出現します。
第1期梅毒は、感染後約3週間後から症状が現れます。感染がおきた部位(陰部、口唇部、肛門周囲など)に痛みを伴わないしこりや潰瘍ができることがあります。また、股の付け根の部分のリンパ節が腫れることもあります。こちらも痛みを伴わないことも多く、治療をしなくても症状は自然に軽快します。そのため治ったと勘違いしてそのまま放置してしまうことも多いのです。
治療をしないで3か月以上を経過すると、病原体が血液によって全身に運ばれ、全身の激しい免疫応答が生じます。これが第2期です。手足、体全体にバラ疹と呼ばれる赤いブツブツが出ることがあります。また、咽頭痛、筋肉痛、全身リンパ節腫脹などを伴います。発疹は治療をしなくても数週間以内に消える場合がありますが、抗菌薬で治療しない限り、病原菌である梅毒トレポネーマは体内に残っており、梅毒が治ったわけではありません。
感染後、無治療のまま数年が経過すると約1/3の人が第3期梅毒へ進行します。皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生することがあります。また、心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死亡に至ることもあります。現在では、比較的早期から治療を開始する例が多く、抗菌薬が有効であることなどから、第3期に進行することはほとんどありません。しかし、症状の出ない「無症候性」のまま長時間放置してしまうこともあるため油断はできません。気になる症状がある場合は速やかに医師に相談しましょう。
治療方法
一般的には、ペニシリンという抗菌薬を内服することで治療します。医師が治療を終了とするまでは、処方された薬は確実に飲みましょう。性交渉等の感染拡大につながる行為は、医師が安全と判断するまでは控えることも重要です。
予防方法
感染部位と粘膜や皮膚が直接接触をしないように、性行為時にはコンドームを使用することが勧められます。感染力の強い第 I 期及び第 II 期の感染者との性行為は避けることが基本です。コンドームが覆わない部分の皮膚などでも感染がおこる可能性があるため、コンドームを使用しても、100%予防できると過信はせず、皮膚や粘膜に異常があった場合は性的な接触を控え、早めに医療機関を受診して相談しましょう。
AUTHOR
田中篤
関西の市中病院、大学病院での研修を経て2020年に泌尿器科専門医を取得。大学院では癌を専攻しワクチン開発に関する研究を行なった。日常診療では、癌領域以外にも性病や尿管結石、排尿障害などについても幅広く診察をおこなっている。また、若手泌尿器科医向けにも執筆を行なっており、著書に「泌尿器科専門医 合格マニュアル: 泌尿器科レジデント必見!泌尿器科研修するならまず読むべき1冊! Kindle版」」などがある。
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