「一度かかるとクセになる?」膀胱炎を繰り返す理由は|泌尿器科専門医に聞いた対処法

 「一度かかるとクセになる?」膀胱炎を繰り返す理由は|泌尿器科専門医に聞いた対処法
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田中篤
田中篤
2023-02-17

膀胱炎はなぜ繰り返すのでしょうか?膀胱炎の原因と予防、治療などについて、泌尿器科医師が詳しく説明します。

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皆さんは膀胱炎になったことはありますか?膀胱炎は自然に治癒することもあるため病院で診断されたことは無くても、膀胱炎にかかったことがある方は実は多いかもしれません。膀胱炎は基本的には抗生剤を内服することで数日以内に治癒しますが、泌尿器科の外来では頻繁に膀胱炎を発症してしまい悩んでいる方も多くおられます。繰り返す膀胱炎の中には日常生活で少し気をつけるだけでも予防できるものもあるため、今日は膀胱炎の治療法や予防法などについて一緒にみていきましょう。

膀胱炎の原因・症状

女性は男性よりも尿道が短く細菌が膀胱内に入りやすいため、膀胱炎は10-30歳台の若い女性がなりやすい疾患です。特に持病が無くても発症することがありますが、ストレスや過労による疲れや、風邪やダイエットによる免疫力低下が原因になることが多いです。

膀胱炎の症状は、下腹部の痛み、排尿時に出口が痛む、尿の回数が増える、おしっこが我慢できない感じがある、といったものが典型的です。ひどくなると血尿が出ることもあります。熱が出ることは基本的にはありませんが、細菌が尿の通り道を逆流して腎臓に達すると腎臓に感染して熱が出ることがあり、これを腎盂腎炎といいます。小さい子供でも膀胱炎になることはありますが、繰り返す場合は尿の通り道に何らかの異常がある場合があるので一度小児科や泌尿器科へ受診した方が良いです。

膀胱炎の治療

膀胱炎は抗生剤の内服と積極的に飲水を行うことで治療します。もし抗生剤が効いていれば2~3日で症状は良くなってきますが、効果が乏しい場合は症状も改善しません。数日内服しても全く症状が改善しない場合は、処方されたお薬に対して細菌が「耐性」を持っている可能性があるためもう一度病院に受診しましょう。その際、最初に行った病院と同じ病院に受診することが大事です!なぜなら、膀胱炎の治療開始時には尿培養検査を行うことが多く、他の病院に行ってしまうとせっかく行った尿培養検査の結果を参照して治療を受けることができなくなってしまうからです。膀胱炎の治療を適切に行うためには尿培養検査をしっかりと行い、どのような細菌が膀胱炎を起こしたのか、そしてどんな抗生剤が効果的かを調べておくと治療の助けになります。

膀胱炎
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ここからは繰り返す膀胱炎の治療についてお話しします。1年以内に3回以上、あるいは半年以内に2回以上再発を繰り返す場合は抗生剤の予防内服が効果的な場合もあります。ただし、漫然と抗生剤を内服していると耐性菌が出現してしまうリスクがあがってしまうため、必ず医師に相談したうえで抗生剤の内服を行いましょう。頻繁に繰り返す膀胱炎を治療するうえで注意しなければいけないのは、そもそも膀胱炎が毎回治癒していない可能性もあるということです。治療を自分の判断で中断したり、抗生剤を飲んだり飲まなかったりしていると完全に細菌を倒すことができません。中途半端に抗生剤を内服すると菌の耐性化が進行し内服薬では治癒できなくなりますので、しっかりと医師の指示に従って内服を行うことが重要です。ちなみに、妊婦さんは使用できる薬が異なるため注意が必要です。妊娠の可能性がある場合は必ず医師に伝えるようにしましょう。

予防はできる?

膀胱炎の予防には、膀胱内に細菌を入れないことと身体の免疫力を落とさないことが重要です。膀胱内に細菌を入れないためには、水分摂取をこまめに行うことと排尿を我慢しないようにしましょう。また、性活動が盛んになりやすい年齢では性交渉後に排尿を行う習慣をもつことも大事ですね。ちなみに、クランベリージュースが膀胱炎の予防に効果的であることが昔から言われています。しかし、毎日自宅にクランベリージュースを準備するのは結構大変ですし、飲みすぎると糖尿病など他の疾患を発症してしまうリスクもあるため個人的にはあまり現実的ではないと思います。

また、身体の免疫力を落とさないためには、ストレスや疲労をため過ぎないことや栄養バランスのとれた食事が大事です。年齢を重ねるごとに免疫力は低下してきますので、今からしっかりと習慣づけしておくことが大事ですね。

1:Lala, Vasimahmed, Stephen W. Leslie, and David A. Minter. 2022. Acute Cystitis. StatPearls Publishing.

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AUTHOR

田中篤

田中篤

関西の市中病院、大学病院での研修を経て2020年に泌尿器科専門医を取得。大学院では癌を専攻しワクチン開発に関する研究を行なった。日常診療では、癌領域以外にも性病や尿管結石、排尿障害などについても幅広く診察をおこなっている。また、若手泌尿器科医向けにも執筆を行なっており、著書に「泌尿器科専門医 合格マニュアル: 泌尿器科レジデント必見!泌尿器科研修するならまず読むべき1冊! Kindle版」」などがある。



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