【健康診断】尿蛋白って何?検出されるとどんな病気が疑われる?医師が解説【意外と知らない検査数値】

 【健康診断】尿蛋白って何?検出されるとどんな病気が疑われる?医師が解説【意外と知らない検査数値】
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-03-01

健康診断や人間ドックを受けて、検査結果が届いた!けど…「γ-GTPって結局何?」「アルブミンってなんのこと?」など、わからない用語がたくさん。知っているようで実はよく知らない用語について、医師が解説します!

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尿蛋白とは

健康診断では、採取した尿に試験紙か試薬を使って尿蛋白の判定を行う検査方法があります。

試験紙や試薬が変色しなければ、尿蛋白陰性で、異常なしと判断されますし、変色すれば尿蛋白陽性を意味して、尿にたんぱく質が含まれていることを示しています。

一般的に、健康な人の尿には通常、ごく微量に蛋白質が含まれているものの、尿蛋白はほとんど排出されませんが、腎臓に問題が生じて、正常な状態よりも多くの蛋白質の成分が尿に含まれることが経験されます。

慢性腎臓病診療のガイドラインによれば、蛋白尿の基準値は、0.15g/gCre未満を正常、0.15g/gCre以上0.5g/gCre未満を軽度、0.5g/gCre以上を高度と定めています。

尿蛋白が陽性(2+)以上の場合には、不規則な生活習慣や腎臓の病気などが疑われることになり、二次検査として再検査や精密検査が必要な状態と提言されています。

子供の頃に実施する健康診断の機会においても、尿検査をした経験は多くの方が持っていると思いますが、尿検査では、尿蛋白が陽性かどうかをみて、腎臓病があるかどうかを確認することができます。

蛋白尿とは、腎臓や膀胱など泌尿器系の臓器に障害があって、尿中に異常な量のタンパク質が検出されることを指していて、一般的に蛋白の出ている尿は蛋白尿、尿中に含まれる蛋白が尿蛋白と表現しています。

蛋白尿は腎臓に何らかの異常が起きていることを示すSOSのような役割を担っている検査異常であり、例えば検査結果として尿蛋白が2+や±(プラスマイナス)といった蛋白の程度を表現することになります。

医療機関では、定量検査と呼ばれる方法で1日あたり蛋白尿が何グラム程度出ているかを詳しく的確に調査する精密検査を実施することが可能です。

尿蛋白が検出される疾患について

一般的に、腎臓は必要な物を体に留めて、不要な物をろ過して尿として体の外に出す役割を持った臓器であり、腎臓の糸球体というフィルターのような構造の存在によって、蛋白は通常であれば必要な成分であるため体外に出ることはありません。

尿中に蛋白成分が混在しているということは、糸球体をはじめとして腎臓に何らかの異常がある可能性が懸念されます。

慢性腎臓病は生活習慣病を原因とし、メタボリックシンドロームと関係が深い病気であり、腎臓病は初期には自覚症状があらわれにくいので尿検査での早期発見が必要です。

腎機能が低下するとともに蛋白尿が検出されると糖尿病の発症も疑われることが知られており、糖尿病ではインスリンの作用低下が原因で高血糖が慢性的に続き、腎機能低下、網膜症、神経障害の主要な合併症を伴うことが多い病気として認識されています。

それ以外にも、蛋白尿が検出される原疾患としては、急性糸球体腎炎や慢性糸球体腎炎といったものが挙げられており、急性糸球体腎炎においては小児では溶連菌感染の後に見られることも多いです。

腎臓の中の糸球体という尿を作る部位で、免疫異常などによる炎症が慢性的に継続する慢性糸球体腎炎では、IgA腎症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎などに分類されており、尿蛋白や尿潜血が持続的に陽性となる疾患として知られています。

また、健康診断や人間ドックで尿蛋白が3+や4+など強陽性として指摘された場合には、免疫や遺伝の病気であるネフローゼ症候群、血管炎などを発症している可能性がありますので、迅速に腎臓内科など専門医療機関を受診しましょう。

まとめ

これまで、健康診断項目のひとつである「尿蛋白」の概要や尿蛋白が検出される疾患などを中心に解説してきました。

健常者であれば腎臓からは蛋白成分は漏れ出ませんので、腎臓に何らかの異常がある場合に尿蛋白が陽性反応として出現します。

したがって、尿蛋白が2+以上の場合や、1+でも繰り返して陽性と判定されて心配であれば、適切なタイミングで腎臓内科など専門医療機関を受診されることを推奨します。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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