「もっと努力しないと幸せになれない」と思う人に伝えたい|「ある」ものに目を向け、価値を認める練習

 「もっと努力しないと幸せになれない」と思う人に伝えたい|「ある」ものに目を向け、価値を認める練習
Nao Yoshino
吉野なお
吉野なお
2023-03-31

プラスサイズモデルでありアクティビストとしても活動する吉野なおさんによるコラム連載。

広告

日常生活の中で、あなたはどんなことに意識を向けているでしょうか?

去年の夏の出来事です。私はパートナーの帰省も兼ねてフランスのとある田舎町の家に滞在していました。その家にはバスタブが無く、シャワーのみの生活。1日に給湯できる量が限られていたため、他の家族が遊びに来たりシャワーを使用する人数が多い日には、お湯が出なくなってしまうこともありました。

私はシャワーがあるだけでも有り難かったのですが、「たまにはお風呂に浸かりたいな〜」と思ったことが何度かありました。しかも日本で住んでいる家のお風呂には自動湯沸かし機能が付いているので、適温且つちょうど良い量のお湯をスイッチひとつで沸かし、お湯がたまると「お風呂が沸きました♪」という、親切なアナウンスまであります。日常生活では当たり前の物事が、特別で幸せなものに感じました。

こんな風に、実は私たちの生活の中には、とても便利だったり恵まれているものなのに、慣れすぎて感じなくなってしまう「幸せ」がいくつもあるのかもしれないと思いました。

 

吉野なお 記事内画像202302

そういえば、 以前参加したヨガクラスでは、クラスの最後に先生が「今ある自分に感謝をしましょう」と言って自分自身に手を合わせ、お礼を言う時間がありました。今あるものに感謝をすることを、ヨガ哲学では、『サントーシャ』と呼び、日本語で言うところの『足るを知る』という意味なのだそうです。

『足るを知る』とは、今持っているものに目を向け、満足し、価値を認め、それを活かすということ。「現状に満足したら向上心が無くなってしまう」と感じるかもしれませんが、実際のところは、欠点やネガティブなことばかりに目を向けすぎて、価値がないと責めて、むしろ苦しくなっているパターンがよくあります。
それはまるで、嫌いな人を大事にしようとしているようなもの。苦しくて当たり前ですよね。

 私も過去、自己嫌悪から始めたダイエットがうまくいかず、さらなる自己嫌悪を繰り返したり、「こんな私でも付き合ってくれるから」と、モラハラ男性との交際をなかなかやめられなかったり、数々の失敗をしてきました。

その元には、いつも自分に対する欠乏感がありました。「溺れる者は藁を持つかむ」ということわざもあるように、欠乏感や焦燥感から行動を選択すると、とんでもない結果になってしまう場合があるんですよね。

そこで今回おすすめしたいワークは、欠乏感が湧いたときほど、「ある」ものに意識を向け、紙に書き出してみること。頭の中だけで考えるのではなく、スマホより紙に書き出して、自分の目で確認できるようにするのがポイントです。当たり前すぎたり、慣れすぎて普段は気が付かない些細な物事を、アウトプットして認識するためです。

例えば私の場合だと、自由に動ける体があること、平穏に暮らせる家があること、着るものがあること、メガネがあること、スーパーに行けば食べ物が売っていること、こうしてインターネットを使えていること、周りにいるパートナーや友達・・・意識し始めるとキリがないほど、たくさんの物事が自分の身の回りにあることに気がつきます。

そしてそれらに感謝してみること。すべての物事は、必ず誰かや何かのお陰でそこにあるからです。たとえば、食べ物はまさに、過去の人類の知恵や知識の集大成といった感じがします。

体に対しても、普段は何も感じていなくても、病気やケガをした時には、体のありがたみや凄さを実感します。

私はギックリ腰になりやすいのですが、そのたびに「普通に歩けるってすごい」「腰の役目って大事なんだな」と実感しますし、歯が痛くなった時は、何の問題もなく食べ物を噛めることが奇跡のように感じたりします。

そんなふうに「今あるもの」について書き出したものを眺めてみると、実は「無い」「足りない」ものの方が少ないことが分かってきますし、「あるもの」を普段から意識していた方が、もっと「いま」を大事にできます。

寂しい時や、気持ちに余裕がない時は、誰でも「足りない」「欲しい」という強い欠乏感や不安におそわれやすいもの。でも、こんなふうに少し視点をずらして物事を見てみると、その不安をゆるめる解決策が見えてくるかもしれません。

とはいえ、自分の意識を変えるよりも、思いきって周りの環境を変えることが必要な場合もあります。いずれにしても、冷静な判断をすることが必要だと思うので、いったん立ち止まって自分の今居る状況を見直してみることをおすすめします。

広告

AUTHOR

吉野なお

吉野なお

プラスサイズモデル・エッセイスト。雑誌『ラ・ファーファ(発行:文友舎)』などでモデル活動をしながら、摂食障害の経験をもとに講演活動やワークショップのほか、ZOOMでの個人セッションも行っている。mosh.jp/withnao/



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

吉野なお 記事内画像202302