「痩せたいのに食べるのがやめられない人」がダイエットする前に見つけなければならない大切なこと
身体や食事の悩みは、教科書に載っているような栄養の知識にそってダイエットするだけで解決できるほどシンプルではありません。自分の身体や食事が思うようにコントロールできないのは、「満たされない心を食べ物で埋めているから」という可能性もあるからです。
「痩せたいのに食べるのがやめられない」という悩みを持つ人に共通しているのが「食べるのが好き」ということ。それを悪いことだと信じている人が多いのですが、食事は人生をカラフルにするためにも重要な役割を果たすものです。
本当の問題は、食べるのが好きと言いつつ、早食いが癖でご飯をゆっくり味わって楽しめなかったり、一度食べ出したら止められない傾向にあります。「食べたいから食べている」というよりは「食べ物を前にした途端、食欲のコントロールを失って食べて“しまって”いる」のです。
例えば、『自分で焙煎したコーヒーを1杯、香りや豆の違いを楽しみながらゆっくり味わって飲む』と『1日4杯は飲まないと気が済まないので、インスタントでもいいから飲む』では、どちらも「好き」ですが、内容が全く異なりますよね。
食べ物を口に運ぶ手が止められず、ゆっくりと味わう気持ちの余裕もなく、質よりも量に走ってしまう...。自分の意思に反した状態で食べて“しまう”のは、「好き」というピュアな感情ではなく、「依存」や「衝動」に近いものではないでしょうか?
衝動が起こりやすくなる仕組み
衝動的になって食欲のコントロールが難しくなる身体のしくみは、科学研究のおかげで分かってきました。例えば、「血糖値の上下が激しい食生活をしていると、急激に血糖値が下がる時に空腹感から食べ物に飛びつきやすくなる」というのがその1つ。
しかし、「血糖値をコントロールすれば食欲をコントロールできる」というのは理論上の話。実際にダイエットの現場を見てみると、習った通りにやっているのに結果を得られない人や、そのやり方にきっちり従おうとするほど余計に食欲のコントロールができなくなって、やけ食いに走ってしまう人たちがたくさんいます。
確かに血糖値は原因の1つかもしれませんが、1つを克服すれば全てが解決できるほど人間は単純にできていません。ダイエット情報には、複雑な解決策の一箇所に焦点を当て、それを100倍に拡大して「これさえすれば解決!」と伝える発信が目立ちます。しかし、そんなに簡単に解決するのなら、ダイエットで失敗する人など存在するはずがないのです。
血糖値以外にも原因があるかもしれない。栄養を超えた枠にも原因があるかもしれない。そんな広い視点が考えてもらいたいのが、心理面での解決策です。
「私の頑張りが足りないから」「私がだらしないから」と自分を責めて悩んでいる人は、少し視点を変えて「満たされない心を食べ物で埋めようとしていないか?」という観点でこの問題を考えてみましょう。
心を無視した方法論
世に出回るダイエットやフィットネス情報の中には、人の「人生」や「心」の配慮が欠落しているものがよく存在します。数字や理論だけで話を進めてしまい、人生の厚みや心の温かさを無視した『心の通わぬ冷たいアドバイス』になっているのです。
「炭水化物を抜きましょう」
「1200kcal以下にしましょう」
「欲に負けないで頑張りましょう」
残念ながら、こうした『心を無視した方法論』が「9割以上が失敗する」と言われる原因のひとつになっています。人の心は、身体とは切っても切れぬ関係にあります。問題が「心」にある限り、どれだけ「身体」だけいいコンディションに持っていこうとしてもうまくいきません。
普段から「やらなきゃいけない」「今やっといた方がいい」「こうあるべき」ばかりを優先し、「自分が好きだからやりたい」「とにかく楽しい」を後回しにしてきたタイプの人は、満たされない心を食べ物で埋めようとしていませんか?親や社会から『理想像』を強く押し付けられてきたり、家族を支えるために常に『自分を後回し』にしていたり、自分の気持ちよりも『誰かに与えられた正解』を優先していると、心は空っぽになっていきます。「誰に何を言われてもいい、将来のためにならなくてもいい、何も生み出さなくてもいいから、今“あなたは”何をやりたい?」という質問にすぐ答えられるでしょうか?
自分の気持ちや今の幸せを押し殺して「こうあるべき」ばかり優先してやってきた人の心は、いくら教科書の理論で栄養だけ満たしても埋まりません。知らないうちに心のコップの水は溢れ、ちょっとしたはずみで心の隙間を食べ物で満たすようにやけ食い・暴食に走ってしまうのです。
心を満たすために必要なこと
そんな人たちに必要なのは、世界一有名なダイエットの先生の助言でもなく、気合で乗り切るためのプレッシャーでもなく、痩せるスムージーでもなく、脂肪燃焼サプリでもなく、効果・効能・生産性・義務・自分の役割を全部無視して「これをやってる時間が心から楽しい」と思える時間です。
それは絵を描くことかもしれない。推し活かもしれない。読書かもしれない。カフェ巡りして感想をノートにまとめてみることかもしれない。旅行かもしれない。ぼんやりと海辺で波を眺める時間かもしれない。
「心の隙間が埋まる」「心を満たす」「心の火が燃える」、そんな時間。食べ物で心を埋めている人に必要なのは、ダイエットうんぬんよりも、まずはそういった時間を積み重ねて『生きがい』を見つけることなのです。
「生きがいのある生活」を心がけていると、心の隙間は埋まっていきます。そうして自分の意識が食べ物以外のことに向いているうちに、暴食の罪悪感でガチガチだった心は少しずつ過去のものになっていく。 栄養の知識はその後でいいんです。隙間だらけの心を栄養で満たそうとしたって、何も解決しないんだから。
「あなたの心を満たす時間」は教科書には書いていませんし、流行で変わることもありません。次々と出てくる最新のダイエット情報とにらめっこをする前に、食べ物以外で心を満たすライフスタイルを見つけることに優先順位を置いてみてはいかがでしょうか。
AUTHOR
mikiko
パーソナルトレーナー|自身の失敗経験を元に個人差や体質を重視した『mikiko式フィットネス論』を提唱|身体と人生観が変わるフィットネス哲学で、一生ブレないための視野と学びを発信しています|流行を根拠と本質で斬る人| 筑波大学健康増進学修士|NZベストトレーナー入賞
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