女性は閉経すると、血管が急激に硬くなる…?血管の専門家に聞いた、その理由
女性はおよそ50歳前後で閉経を迎えますが、それに伴って、血管が硬くなるという事実をご存じですか?動脈硬化などの生活習慣病に詳しい家光素行先生の著書『からだがやわらかくなると血管が強くなる』から、動脈硬化と閉経の関係性についてご紹介します。
まずは血管の役割についておさらい
血管は、言わずとしれた血液の通り道です。体中の器官・細胞に酸素や栄養を届け、二酸化炭素やいらなくなった老廃物を回収するという大事な働きも担う血液。それが正常に行えないと、体の健康も損なわれてしまいますよね。
家光素行先生によると、スピードに個人差はあるものの、血管は加齢とともに硬くなっていくそうです。血管が硬くなることを「動脈硬化」といい、悪化すると脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなってしまいます。
「血管は、弾性繊維が減ったり、内皮細胞が衰えることで硬くなっていくわけですが、その減少は20歳頃から徐々に始まります」(家光先生)
年齢を重ねると、血管は硬くなっていく
上の図をご覧ください。これは、年齢に伴う血管の硬さの変化を示したグラフで、男性・女性ともに年齢を重なることで血管が硬くなっていくことがわかります。家光先生によると、加齢とともに血管が硬くなっていくことには3つの原因があるそうです。
「まずひとつは、血管の中膜にある『弾性繊維』がもろくなり、減っていくこと。(中略)血管自体が硬くなり、柔軟性が失われていくことを想像していただけると思います」(家光先生)
「次に、内膜の『内皮細胞』の衰えです。(中略)次第に内皮細胞からNO※を十分に分泌することができなくなるのです。すると、平滑筋を緩ませることができません。つまり、平滑筋が緊張した硬い状態が続いてしまう。すなわり柔軟性のない『カチコチ血管』になるというわけです」(家光先生)
※NO:nitric oxide、一酸化窒素
血管の構造については上図をご覧ください。内膜の「内皮細胞」が加齢によって衰えることによって、血管が硬くなっていくのですね。
「そしてもうひとつの理由が、『筋力低下による血行不良』。血液は、心臓の拍動によって押し出され、全身を巡り再び心臓に戻ってきます。(中略)心臓の拍動だけでは力不足。そこで、その助けをするのが『筋肉』です」(家光先生)
家光先生によると、筋肉は加齢や運動不足・栄養不足などに伴って減っていくことがわかっているそうです。つまり筋力が減る=血管が硬くなるにつながていくのですね。血管の老化のスピードは、予防と対策によってある程度まではおさえることができるのだそうです。
閉経すると血管が硬くなってしまうワケ
先程のグラフに戻りましょう。女性のグラフに注目すると、50歳を過ぎたあたりから、動脈硬化の数値が急激に上昇していますね。これには女性ホルモンの一種、『エストロゲン』の働きが深く関係していると家光先生は言います。
「実はエストロゲンには、血管を拡張し動脈硬化から守る働きがあるのです。閉経を迎えるとエストロゲンの分泌が急激に減少します。一般的に女性は50歳前後で閉経するため、血管もその頃から急激に硬くなる傾向があるのです」(家光先生)
上のグラフを見ると、女性が閉経を迎える50歳前後までは、女性の血管のほうが男性のものよりもやわらかい状況が続いています。これは、女性ホルモン「エストロゲン」の恩恵によるものだったということですね。
教えてくれたのは…家光素行先生
立命館大学スポーツ健康科学部教授。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所客員研究員。
1996年、川崎医療福祉大学医療技術学部卒業。2003年、筑波大学大学院医学研究科博士課程修了。筑波大学先端学際領域研究センター客員研究員、国立健康・栄養研究所身体活動研究部客員研究員などを経て、14年より現職。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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