一緒に調理されることが多いけど…ほうれん草とベーコンは食べ合わせNG?管理栄養士が噂を検証
一緒に食べると良くないと伝えられている食材の「食べ合わせ」。良くない根拠として、それぞれの食品に含まれる栄養素が阻害されてしまい栄養素として体で使われない可能性があるなどといったことが挙げられます。現在は、さまざまな食べ合わせが噂されていますが、意外にも根拠がないものもあります。 そこで、今回は「ほうれん草とベーコン」の食べ合わせについて、栄養学的に正しいのかどうなのかを検証していきます。
「ほうれん草+ベーコン」が良くないと言われるのはなぜ?
「ほうれん草+ベーコン」の食べ合わせはソテーなどで実際に食べている方もいらっしゃるかもしれません。では、なぜ食べ合わせると良くないといわれるのでしょうか。
ベーコンなどの加工食品にはリン酸塩が含まれていることがあります。
このリン酸塩によりほうれん草に含まれる鉄分とカルシウムの吸収を阻害する恐れがあるため、食べ合わせとして良くないとされています。
また、ほうれん草に含まれる硝酸とベーコンに含まれる発色剤やたんぱく質を一緒に摂ると、体内で発がん性物質が作られるため良くないといわれているようです。
それぞれの栄養を見てみよう
では、それぞれの食材にどのような栄養が含まれているかチェックしてみましょう。
ほうれん草は、カリウム、マグネシウム、鉄、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンC、葉酸が含まれています。
一方でベーコンは、たんぱく質、脂質、ナトリウム、リンが含まれています。
このようにほうれん草とベーコンはそれぞれ主に含まれる栄養素に違いがあることが分かります。
何がどう作用する?食べ合わせの栄養学的な根拠
「ほうれん草+ベーコン」は、噂されるように栄養学的に良くない組み合わせなのでしょうか?
まず、ベーコンに含まれるリンはほうれん草のカルシウムの吸収を阻害する可能性があるようです。
長期間にリンを過剰摂取するとカルシウムの吸収抑制などが起こるとされています。そのため、1回食べ合わせただけでは影響が少ないでしょう。
また、鉄分はリン酸塩の摂取により吸収が阻害されるという栄養学的な根拠がないため、鉄分は吸収阻害されることはないと考えられます。
一方で、ほうれん草とベーコンに含まれる成分がそれぞれ発がん性物質の発生に関与する可能性もあるようです。
ほうれん草に含まれる硝酸塩は体内で亜硝酸塩となり、発がん性物質であるニトロソ化合物が作られる恐れがあります。この亜硝酸塩はベーコンの発色剤に含まれていることがあるため、ベーコンにも発がん性物質を生成に関与する可能性があると考えられています。
しかし、硝酸塩が亜硝酸塩となるメカニズムは複雑であり、がんの発症リスクに関連があるという根拠もはっきりしていません。一般的にがんを発症する場合はさまざまな原因が考えられるため、通常の食生活ではほうれん草とベーコンを摂取しただけでがんのリスクが高まる可能性は低いでしょう。
今回取り上げた「ほうれん草+ベーコン」の食べ合わせは、摂り過ぎると栄養素の吸収を阻害する可能性があると考えられます。また発がん性物質の発生に関与する可能性もありますが、がんの発症につながるかは明らかになっていません。不安に感じる場合はこの食べ合わせを避けた方が良いでしょう。
まだまだ「ほうれん草+ベーコン」以外にも食べ合わせNGと噂されている説があります。引き続き他の食べ合わせについて栄養学的に検証していきたいと思います。
【参考文献】(2022年11月28日閲覧)
AUTHOR
一ノ木菜摘
管理栄養士/ライター。短大卒業後、病院で栄養士として働きながら管理栄養士免許を取得。その後は病院の管理栄養士やコールセンターなどの経験を経てライターとして活動を始める。ダイエットや食品、メンタルなどのヘルスケアについて論文などの科学的根拠をもとにコラムを執筆している。
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