不安症状の治療にヨガが有効?米国の医療現場でヨガが受け入れられている理由
不安症状の根本的な問題を解決へと導くヨガ
2011年、ハーバード大学の研究者らが、全国から抽出した標本から得たデータを解析し発表した。それによれば、標本の3%(アメリカ全体では約640万人に相当)が医療従事者からヨガや瞑想のような心と体の治療法を勧められており、そのような処方の3分の1以上が、不安を訴える人に対して出されていたことがわかった。米国精神医学会の2014年の年次総会では、ヨガと瞑想に関するセミナーやセッションが実施され、統合腫瘍学会では、乳癌患者の不安に対する補完医療としてヨガと瞑想が承認されている。
「特に不安のある患者に関しては、心理学者からの推薦が顕著に増えています」。心理学博士号を有し、カリフォルニア大学サンディエゴ校マインドフルネスセンターの常任理事を務めるヒックマンはこのように述べた。同センターでは、心理学者を含めたさまざまな医療従事者がマインドフルネスに関する研究を行っており、患者を対象に講座を行っている。「瞑想がストレスや気分障害に効果を発揮することを示す有力な証拠があるため、療法士も医師も瞑想による治療に対する考え方を改めつつあります」。
また、このような古来の方法が新たに受け入れられている要因として、統合医学とそれに類する統合的心理療法の普及を挙げることができる。いずれも、会話療法に呼吸法や漸進的弛緩法を組み合わせるなどして、東洋医学と西洋医学の良い点を融合させた医療である。そして、さらに重要なのは、いずれもこれまで満たされていなかった安全な治療を求める大きな需要に応えているという点だろう。世界保健機関(WHO)によれば、アメリカは信じられないほど不安を抱えた国である。しかも、アメリカ人のほぼ3分の1が人生のどこかの時点で不安に苦しみ、36歳から50歳までの19人にひとりがベンゾジアゼピン系薬の処方を受けている。この薬は不安によく処方される習慣性のある鎮静剤で、高用量で用いると眠気、めまい、混乱、記憶障害、悪夢を引き起こす可能性がある。
「薬剤のマイナス面がよくわかってくるにつれて、不安を治療するのに薬物療法ではない代替医療に興味を持つ人が増えてきています」と、医師でありノヴァサウスイースタン大学の臨床学の助教を務めているアダム・スプラヴァーは語る。「ヨガが有効であることを示す証拠があります。さらに、ヨガは薬剤のように症状を治すだけでなく、不安に対処する術を学ぶのに役立ちます。選択の自由を与えられれば、私の患者の大半は、絆創膏を貼って済まそうとせずに問題を克服するほうを選ぶと思いますよ」。
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