他人や自分にイライラする本当の理由は|禅の教えに学ぶ、自分らしく生きるためのマインドフルネス術
ネット社会化が進み、人間同士が直接顔を突き合わせてコミュニケーションをとることが減ってきている世の中。ときには顔が見えない相手とのやり取りで、イライラしたり嫌な思いをしたりすることもあります。今回もアメリカを拠点に活動している住職の松原正樹さんの著書『心配ごとや不安が消える「心の整理術」を一冊にまとめてみた』(アスコム)より、心がスッと軽くなる方法をご紹介します。
不幸や不満を抱えているのは決して自分だけではない
生きていると、他人に対して卑屈な感情を抱いてしまうこともあります。たとえば、「どうして自分だけが苦しい思いをしなければいけないんだ」「なぜ自分ばっかり損な役回りを引き受けてしまうんだ」といった具合に、思考の矛先が完全に自分へ向き、突き刺さってくる経験をしたことはありませんか?
こういった思考に陥ってしまうのは、他者との間に自分で勝手にラインを引いてしまっているから。「自分も苦しいけれど、あの人にも苦しいときは必ずある。」そう思った瞬間に他者との間に引かれたラインは消え、不幸なのは自分だけではないと気づくことができます。
この気づきがあるかないかだけでも、精神面にはかなりの差が出るはず。
私たちが見えないラインを引いてしまう瞬間として代表的なのは、以下の様な状況です。
・ネガティブ思考になっているとき
・自分はスペシャルな存在だと思い上がったとき
とくに、後者のケースについて松原さんはその危険性を訴えており、実際に書籍を書くにあたり、自身で実験をして精神に与える悪影響を確認しています。
その方法は、至ってシンプル。同じ通りを2回歩き、1回目は「自分はスペシャルな人間で、お前らとは違う!」と思いながら歩き、2回目は「みんな、同じ人間なんだ」と思いながら歩くというもの。すると、1回目に歩いたときは、目の前を歩く人を邪魔に感じ、赤信号で立ち止まることにイライラし心が乱れるのを感じたそう。2回目は、周囲の人の表情や着ている洋服など、他人の良さにも気づける余裕があり、1回目には見えなかった景色が目に入ってきたといいます。
この松原さんの実験から、同じ人間でも、考え方の違いで人が変わったように思考に違いが出るということが証明されています。
周囲から孤立する人が陥りやすいパターン
人間関係を拗らせ、最終的に周囲から孤立してしまう……そんな人もいますね。
これは、ある同じような考え方をする人たちがよく陥ってしまう状況であり、孤立する人は自分を「スペシャルな人間である」と認識していることが原因で、トラブルを抱えやすくなるそうです。自分は特別、あなたは違うというように、自ら他者との間にラインを引くことは、感情的にも他者から離れていく原因となります。結果的に「私とお前は違う!」という空気を周囲に察されてしまい、だんだんと人が離れていく……これが、孤立するまでの王道パターンだと松原さんは分析しています。
自分の考え方が原因だとは気付かず、人間関係を希薄なものにしてしまうのは、とても悲しく滑稽な姿に思えてきます。
「心と体」という言葉の本質を知れば、人に優しくできる
ヨガジャーナルオンラインの読者は、「心と体」というフレーズを耳に、もしくは目にする機会も多いのではないでしょうか。松原さんは、この心と体という表現についても言及しています。「心と体はつながっています。体が心に影響を及ぼし、心が体に影響を及ぼす。それは医学でも証明されています。心と体は同じものであり、本来であれば『と』でラインを引いて分けられるものではありません。」
この本質を読み解くと、心と体以外では「あなたと私」という表現も、本来であれば「私のあなた」「あなたの私」といった同個体とした考え方を持って過ごすことで、他者とのつながりをプラスに捉え、穏やかな心で過ごせるようになる。そんなメッセージが受け取れます。
「自分ばっかり」「自分だけ」といった思考に陥り、他者を批判したい気持ちになったときは、「私のあなた」と心の中で唱えて他者と自分は同じであると考えると、敵対意識が薄れ、心もほぐれていきますよ。
著者/松原 正樹(まつばら・まさき)
1973年、東京都生まれ。東京大学大学院情報学環客員教授。千葉・富津市のマザー牧場に隣接する臨済宗妙心寺派母寺住職。グーグル本社で禅や茶道の講義をするなど、マインドフルネス界からも注目を集めている。ニューヨーク在住であり、アメリカと日本を行き来しながら、禅とマインドフルネスの橋渡し的存在として、国籍や人種、宗教を問わず人々の「心の救済」にあたっている。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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