低糖、ベジタリアン、宗教対応食…無料で頼める「機内特別食」の多様化がスゴイ
「お肉かお魚、どちらがよろしいですか?」2種類のメニューの機内食。とりあえず片方を選択し、おなかを膨らますだけの食事をしていたのは過去の話。多様化が進む今、機内食は多種多様に、より健康的に美味しく進化しています。驚きの現状レポートをお伝えします!
これまで色々なエアラインに搭乗して感じたのは、機内食に糖質や脂質の高いメニューが多いこと。ビジネスクラス以上はヘルシーな食事が用意されている場合も多いですが、エコノミークラスの食事はファストフード感覚です。
ハイカロリーな機内食を摂ってから眠り、目覚めて降機するころには体にだるさが残ってしまうことも。とはいえ、「機内食に贅沢は言えない」そう思いあきらめていました。しかし、これからは機内食の多様化により、エコノミークラスでもヘルシーな食事をすることが出来るように変わってきています。
オンラインで食べたい機内食を選び、無料で予約が出来る
「特別機内食」を知ったのは、全日空のシンガポール発羽田行きのチケットを購入した時。サイトで席の確認をしているときに、搭乗前に予約をすれば無料で特別機内食をオーダーできることを知りました。しかも驚いたのは、その種類の多さ。そして健康状態を考慮したメニューが豊富なことです。
野菜中心の食事を選択したい場合、ベジタリアン(VLML)、ヴィーガン(VGML)、ベジタリアン(RVML生野菜・果物限定)、ベジタリアン(VOMLオリエンタル)と、野菜のメニューだけで4種類もあります。ヨガジャーナル読者の方々に伝えたいのは、「健康をサポートするお食事」の種類の充実度。低糖質(DBML)、低塩(LSML)、低脂肪(LFML)、低カロリー(LCML)、消化の良い食事(BLML)、グルテンフリー(GFML)まで用意されていました。
全日空のウェブサイトに、特別機内食(全24種類)が掲載されています。 また、特別機内食は世界各国のエアラインで採用されており、アラブ首長国連邦のエミレーツ航空では、特別機内食のニーズが高いとのこと。人気エアラインとして受賞回数の多いシンガポール航空は、特別食の中にある離乳食や幼児食が充実しています。
ヒンドゥー教対応の機内食(HNML)、頼んでみたらこんな感じ
全日空の特別機内食には、宗教食もありました。海外から日本に来た外国人が、宗教に合った食事をすることが出来ずに困るケースがあると聞いたことがあったのを思い出しました。特別機内食の存在を知っていれば、機内でも快適に過ごせます。
種類も豊富です。ヒンドゥー教対応(HNML)、ヒンドゥー教ベジタリアン(アジア風・AVML)、イスラム教対応(MOML)、ジャイナ教対応(VJML)、ユダヤ教対応(KSML)。筆者はシンガポールでインド料理を習っているので、ヒンドゥー教(HNML)のチキンカレーをオーダーしてから搭乗しました。
機内サービスがスタートしました。まずは、ハラル認証のマークがついたおかきが配られました。グルテンフリーです。添えられたナプキンは、茶殻をリサイクルして製造されたもの。
こちらがリクエスト初体験の特別機内食
スパイスのバランスも丁度良く、日本人の口に合うチキンカリーはとても美味。添えられたダール(レンズ豆のカレー)は塩分控えめで優しい味。もちろん、お米はパラパラとほぐれてカリーにぴったり合うバスティマライスです。機内で本格的なスパイスカリーを頂いたのは今回が初めてでした。
通常の機内食では食後にハーゲンダッツのバニラが配られていましたが、今回はハラルの抹茶アイスクリームでした。「ハラル」は、直訳すると「許可されたもの」。イスラム法で許されている食品を指しています。
今回、偶然ネットで見つけて特別機内食をオーダーしましたが、日本のエアラインがここまで特別機内食の種類を揃えているのは意外でした。その背景について、全日空広報部の方にお話を伺いました。
全日空広報部の方に話を聞いてみた
ーー世界における特別機内食の現状はいかがでしょうか?
特別機内食は、提供している全航空会社が原則、ガイドラインに従って準備しているものと承知しております。一方で、(一般論として)特別機内食は補助的なメニューとして、あまり力を入れていない会社が多いのではないか、と推察しております。全日空では、お客様の様々な食の嗜好にお応えするための一つの手段として、多くのお客様に「特別機内食をオーダーしたい」と思っていただけるようニューの開発を目指しております。
ーー特別機内食に注力されている理由や背景はありますか?
ANAでは「ANA Future Promise」に基づき、すべてのお客様に多くの選択肢の中からお食事をお選びいただけるよう、食のユニバーサル化を推進しています。現在の特別機内食は全部で24種類あります。ご搭乗の皆さま全てが頼みたくなるメニューを目指し、メニュー開発を行っています。
ーー「Future Promise」は、SDGsへの取り組みが含まれているのですね。機内で配られたナプキンも再生紙が使われていました。特別機内食は、どのように開発されているのでしょうか?
特別機内食は通常のメニューに比べ、各種食材等の制限が多い中でのメニュー開発となります。メニュー開発の際は、QSAI(Quality & Safety Alliance Inflight Services)の定めるガイドラインに厳格に従って、使用できる食材や成分を厳選しています。QSAIとは、2006 年に IATA(国際航空運送協会)の主催により発足した「機内食会社品質監査プログラム」のことです。国際的な独立系監査会社Medina Quality-Food Assurance Servicesが運営しています。
ーーかなり厳しい品質チェックがあるのですね。生産するまでに時間やコストもかかっているのではないかと思いますが、無料で提供されているのが凄いです。今回、宗教食を頂きましたが、こちらはさらに規定が厳しそうですね。
各種宗教対応食ごとに制限品が異なり、上述のガイドラインに沿ってメニュー開発を行っております。本格的な味わいを目指して、研究と開発を続けています。
ーーヒンドゥー教のチキンカリーは、本格的な味わいでした。また、リピートしたいです。ところで、ユダヤ教(コーシャー)の食事には祈祷がされているとのことですが、どのような経緯を経て搭載されるのでしょうか。
ユダヤ教対応(コーシャー)のお食事はお祈りをささげたお食事でないといけないため、確実に規律に沿ったお食事を提供するためには自社工場での製造は難しく、ユダヤ教の規律に沿って製造された食事を選定し、ご提供しております。
ーー自社工場ではない場所からわざわざ取り寄せて搭載されているのですね。日本国内のエアラインでこのような取り組みがされているとは。特別食に対して搭乗者の方々からの反響はいかがでしょうか
昨年秋よりリニューアルしたヘルシー系の特別機内食を召し上がったお客様からは「機内食のイメージが変わった」「味・彩が素晴らしい」「次は別の種類を頼んでみたい」といったお声をいただいております。また、特別機内食をご存じないお客様も多くいらっしゃることから、多くの方に知って欲しいと思っております。
まだ知名度が上がる途中にある「特別機内食」。降機後の体調を整えるためにも、是非自分に合ったメニューをセレクトしたいものです。皆さんも、よく使うエアラインのサービスをチェックてみてはいかがでしょうか。
AUTHOR
栗尾モカ
記者・漫画家。新卒で航空会社に就職。退社後、出版社に入り多くの企画に携わる。「ダ・ヴィンチ」で漫画家デビュー後、朝日新聞の社会見学連載、「TVタックル」モバイルサイトインタビュー、女性誌「STORY」の海外・美容取材など数多くの連載を担当。女性のウェルネスをテーマにしたコミックエッセイは、取材の経験がニュースソースになっている。シンガポールのメディアに再就職した際、締切と子育てに追われる中でインド・バンガロールにあるヨガ研究大学(Swami Vivekananda Yoga Anusandhana Samsthana / S-VYASA)により考案されたヨガインストラクター認定プログラムに出逢い、資格を取得。伝統的なヨガ哲学や、心身を癒すメソッドを学び始める。著書に「サロン・ド・勝負」「おしゃれレスキュー帳」(KADOKAWA)「女のネタ帖」(学研)などがある。
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