いつも笑顔で「悩みがなさそうな子」の問題行動に大人はどう対応すればいい?臨床心理士が解説

 いつも笑顔で「悩みがなさそうな子」の問題行動に大人はどう対応すればいい?臨床心理士が解説
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・いつでも笑顔で話す ・友達とも楽しそうに過ごしている ・大きな問題も起こさない そんな悩みがなさそうな子が突然リストカットをしたり、不登校になったりと思ってもみなかった行動を起こすことがあります。これはいったいなぜなのでしょうか? 今回は悩みがなさそうな子が抱えるしんどさと、大人にできる対応についてお話しします。

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「あの子は、にこにこしているから大丈夫」それ、本当?

笑顔で自分を守っている

悩みがなさそうな子がにこにこしているのは、他人を信頼していないからです。「他人は攻撃してくるもの」と思っているため、攻撃されないように笑顔で自分を守っています。
また、「どうせ誰も助けてくれないだろう」とも感じています。本当は「助けてほしい」と思っていても、「もし助けを求めて無視されたら…」と思うとSOSを出せません。1人でしんどさを抱えた方がマシだと考え、笑顔の仮面でしんどさを隠してしまいます。

1人で抱え込んだ結果さらなる問題に発展することも

他人を信頼できない子たちは、悩みがあっても自分で解決するしかないと考えます。
たとえば、しんどさをやわらげるために自傷行為や市販薬濫用を繰り返したり、少しでも自分を肯定するためにダイエットやSNS投稿にのめりこんだりします。しんどさが限界に達して不登校になることもあります。
これらは彼/彼女の心を守るための対処法なのですが、大人からは「問題行動」に見えます。ふだんは悩みがなさそうに見える子どもたちなので、行動の背景にあるしんどさは見逃されてしまい、ただ「やめなさい」と叱られてしまうことも。
すると、彼/彼女はしんどさへの対処法を失い、苦しくなります。苦しさのあまり「やめなさい」と言われたことに再び手を出し、また怒られ、それでも繰り返し……、いつの間にか「悩みがなさそうな子」から「問題児」へと大人の評価が変わり、ついには見放されるようなこともあります。

大人はどうすればいい?

「いつもと違う」を大事にする

笑顔で自分を守っている子に「しんどい?」と聞いても、「大丈夫です!」と笑顔で受け流されます。そんなときは言葉や表情よりも、身体や行動の変化をチェックしてみましょう。下のチェック項目を参考にしてみてください。

【身体】
□やせてきた
□眠れていない(くまができている/日中眠そう)
□頭痛や吐き気など体調不良の訴えが増えた
□疲れやすい

【行動】
□ぼーっとしている
□遅刻や欠席が増えた
□宿題が出せない
□成績が下がった

当てはまる項目が多い場合は、「最近しんどそうに見えるよ」など声をかけてみましょう。

「何もないです」と笑顔で返されるかもしれませんが、「あなたを気にかけているよ」というメッセージを伝えるのが大切。毎日ほんの少しでも気にかけていることを伝え続ければ、「本当に私を大切に扱ってくれている」と感じてもらえれば、笑顔の仮面を外して「実は……」と悩みを話してくれることがあります。

問題行動を解消するより「しんどさ」を解消してあげる

大人は「問題行動をなくそう」としがちですが、その背景には子どもが抱えるしんどさがあります。そのしんどさを解消しないまま、問題行動をなくそうとしても解決しません。彼/彼女はますます「他人は攻撃してくるもの」「誰も助けてくれない」という考えを強め、大人から見えないところで問題行動は継続・悪化していくでしょう。
「自分を攻撃しない大人」「自分を助けてくれる大人」だと信じてもらえるように、気長に根気強く手を差し伸べ続けることで、「悩みを話してみようかな」と思えます。大人に頼れるようになれば、問題行動によってしんどさを解決する必要がなくなりますから、問題行動は少しずつ解消されていくでしょう。

文/佐藤セイ(臨床心理士・公認心理師)

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

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