産後の女性に起きやすい「忘れっぽくなった」その原因は?その対処法を臨床心理士が解説
産後の女性に起きやすい『忘れっぽくなる』という現象は、【マミーブレイン】と呼ばれており、産後女性の悩みのひとつとされています。産後の忘れっぽさはなぜ起きるのか、そしてその対処法は?臨床心理士が解説します。
【マミーブレイン】とは?
マミーブレインとは、日本でいうと『産後ボケ』のことを示し、診断名ではなく産後女性に起きる特有の現象として使われている言葉です。例えば
☑︎物忘れが多くなった
☑︎ミスが増えるようになった
☑︎ボーッとすることが増えた
☑︎以前できていたことが思うようにできなくなっている感じがする
☑︎周囲の人との会話がぎこちなくなった感じがする
といったことを自覚する人が多いと言われています。これらの多くは、産前に経験したことがないケースがほとんどなので、『自分がどうにかなってしまったのではないか?』と不安に感じる人も多いのだとか。
【マミーブレイン】が起きる理由や対処のヒントとは?
マミーブレインの原因は諸説ありますが、どれもはっきりしたものではありません。また疾患ではないので、診断も治療法もありません。しかし、忘れっぽくなるというマミーブレインの特徴への対処法のヒントとなるのが、【ワーキングメモリー】とうまく付き合うことだと筆者は考えます。ワーキングメモリーとは、認知心理学で用いられる概念。心の中に情報を保持し、同時に処理する能力のことで、脳の前頭前野という部分が関係しています。ワーキングメモリーが同時に処理できる情報の数は約5〜7つとそんなに多くありません。そのため、目の前に同時に処理しなければいけないことが重なってしまうと、処理できない情報はキャパオーバーとなり、古い記憶から順番に消えていってしまいます。産後の女性の場合、自分のことに加えて家のこと、子供のこと、その他それらに関連する様々なことなど、たくさんの情報を目の前に日々を過ごしています。また、ワーキングメモリーは心や身体の状態にも影響を受けやすいという特徴があるため、子育てによる睡眠不足や疲労によって記憶できる容量が減ってしまうということが起こりうるのです。
ワーキングメモリーとの上手な付き合い方とは?
不安やストレスに感じていることを人に話す
ワーキングメモリーが処理する情報として、不安という感情やストレスに感じていることも対象になります。ワーキングメモリーの容量は決まっているので、不安やストレスに感じていることを外に手放すだけでも、自身のパフォーマンスが変わります。
自分の行動をルーティンにする
「午前はこれ、午後はこれ」というように、1日の行動パターンを決めてしまうのもおすすめ。日々のルーティンワークにしておくと、自分の記憶の中にも残りやすく「うっかり忘れた!」を防止することができます。
To Doリストやリマインダーを活用する
やるべきことがたくさんあると頭の中がグルグルしてしまい、それを処理するためにワーキングメモリーが使われてしまいます。日々のやるべきことや想いをTo Doリストにする、リマインダー機能で日時や時間を指定するなど、必要な情報を目に見える形にすることによって、うっかり忘れを予防する手助けになります。
「忘れっぽくなった」以外の状態があるときは要注意
例えば「気分の落ち込みが続く」「疲れが取れない」「興味・関心の減退がある」など、忘れっぽい以外の状況が長く見られる時は、産後うつなどの可能性を考えて、産婦人科や心療内科、保健センターなどの関係機関への相談をしてみてください。出産という大きなイベントの後は、私たちが思っている以上に心身に大きなダメージや影響を受けています。一人で抱えずに、専門家と話すことで解決の糸口が見えてくるかもしれませんよ。
AUTHOR
南 舞
公認心理師 / 臨床心理士 / ヨガ講師 中学生の時に心理カウンセラーを志す。大学、大学院でカウンセリングを学び、2018年には国家資格「公認心理師」を取得。現在は学校や企業にてカウンセラーとして活動中。ヨガとの出会いは学生時代。カラダが自由になっていく感覚への心地よさ、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングの考え方と近いものを感じヨガの道へ。専門である臨床心理学(心理カウンセリング )・ヨガ・ウェルネスの3つの軸から、ウェルビーイング(幸福感)高めたり、もともと心の中に備わっているリソース(強み・できていること)を引き出していくお手伝いをしていきたいと日々活動中。
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