あなたは「"普通に"食べられている」?インテュイティブ・イーティングコーチ岡井麻悠子さんと考える

 あなたは「"普通に"食べられている」?インテュイティブ・イーティングコーチ岡井麻悠子さんと考える
吉野なお
吉野なお
2022-04-20
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ーー日本でも肥満外来で食事制限を指示されて、一時的に体重は減ったけどすぐに戻ってしまって、体をコントロールできない自分に自己嫌悪を抱いてしまうという話も聞きます。単純に栄養的に何を食べればいいとか、一方的に制限することって根本解決になっていないのだと感じます。

麻悠子:日本では「普通に食べられない」ということへの問題認識がまだ低いので、インテュイティブ・イーティングへの理解も難しいと感じます。摂食障害という病気は、病院に行って診断されないとわからない。でも、ダイエットするうちに上手に食べ物と付き合えなくなったとか、そこで鬱っぽくなってしまったという多くの人たちは、問題にされていないんです。アメリカでは摂食障害を「イーティングディスオーダー(Eating disorder)」と呼ぶんですが、その前に、「ディスオーダードイーティング(Disordered eating)」という言葉があって、それは「行動」のことを言うんですね。偏食のような、正しくない食べ方の行動に名称があるんです。そういう言葉があるから問題意識があって、解決法としてインテュイティブ・イーティングがある。でも日本では言葉がないから、問題意識がないんですね。ダイエットしてるか、摂食障害かの2つ。日本では未病という言葉がありますが、その間で苦しんでいる人はたくさんいると感じます。そういった方達にインテュイティブ・イーティングを伝えたいです。

自分に向き合えていないのに自分を変えたいと思う"不思議"

ーーダイエットのために食事制限してると、まだ効果が出てなくても「頑張ってて偉い」という印象があって、もっとハマっていったりするんですよね。でも実はディスオーダードイーティングになっているかも。

麻悠子:日本では、ヨガもダイエットとしてやる人が多いですね。その意識もちょっと違うと感じます。アメリカではダイエットでヨガをするっていう感覚はないんです。マインドフルネスとかそういうジャンルのものです。フィットネスとしてやってる人もいますが、そういう考えの方が少ないんです。あと日本ではヨガ講師たちが「美しい体」とか「美容体型」とアピールすることにも驚きます。アメリカだったら差別になってしまうので考えられない。あと、ヨガウェアの問題も大きいですよね。ブラトップとレギンスで、ピッタリしているデザインなので、お腹が出て見えないか気にしたり、ずり落ちないように気にしたり、ヨガウェアを着ること自体に抵抗があったりしますね。

ーー鏡や写真で自分を見るのが怖いという方も多いですね。よく考えてみたら、自分に向き合えていないのに、自分のことを変えたいと思ってしまうのって何だか不思議な事かもしれません。インテュイティブ・イーティングに興味を持ったら、どうすればいいでしょう?

麻悠子:ぜひ私のやっている講座を受けてください!カウンセリングでも。摂食障害の方は場合によっては個人カウンセリングがいいかも。ときどき無料セミナーもやってるので、そういったものでお試ししていただくのもおすすめです。また、2021年に、エモーショナルイーティング(過食)のワークブックを出版しました。まだ英語版しか無いのですが、過食してしまう人のためのマインドフルネスを重視したアクティビティの本です。もし興味があれば読んでみてください。

ーー就活で「痩せていないと採用されないのでは?」「綺麗じゃなきゃいけないのでは?」と悩む女性もいます。よく私の記事がバズったりすると「太っているとアメリカでは自己管理が出来ないと見なされて就職が不利になる」という都市伝説的なコメントがついたりするんですが、実際にはその考え方はNGになっているそうですね。

麻悠子:それはもうすぐにアウトです。アメリカではそもそも履歴書に写真をつけないですし、年齢も書かないです。

ーー「決して太ってはいけない」「痩せなさい」という脅しのようなメッセージが、日本では至るところにたくさんありますね。

麻悠子:一人一人カウンセリングで話を聞いたりするのですが、太ることに対してマイナスの偏見(ウェイトスティグマ)がある社会から変えていかないと、この問題は無くならないのかなと感じます。自分に問題がなくても、自分の偏見を見つめ直すことが大切ですね。無意識に刷り込まれているものなので誰にでも、どうしてもあります。あまり言いたくないけど、こういう仕事をしている自分でも気付いたりします。どこで自分が偏見を持っているかを探ることは重要であって、「普通体型であれば自分は関係ない」ではなくて、体型の大きい人や自分じゃない誰かにとっても快適な空間になっているかとか、体が大きいその人がいけないのではなく、用意しない人がいけないという意識に切り替えないといけない。イスのサイズとか、服のサイズとか、言葉遣い、態度など。

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吉野なお

吉野なお

プラスサイズモデル・エッセイスト。雑誌『ラ・ファーファ(発行:文友舎)』などでモデル活動をしながら、摂食障害の経験をもとに講演活動やワークショップのほか、ZOOMでの個人セッションも行っている。mosh.jp/withnao/



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