体内のミトコンドリアを増やすことが免疫力向上のカギ!でも、何をすれば?研究者が勧める3つの方法
近年注目を集めているミトコンドリアと免疫の関係とは?研究者に聞きました。
世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス。国内でもワクチンの接種が進んでいますが、変異株の報道も心配です。長期にわたるコロナ禍において、感染症予防のためにも免疫力に注目をしている人も多いのではないでしょうか。
また、近年注目を集めているミトコンドリアも免疫に大きな役割を担っていることがわかってきました。
そこで、日本ミトコンドリア学会名誉理事長である太田成男先生に、免疫のしくみや話題の“ミトコン活”について教えていただきました。
自然免疫と獲得免疫
「まずは、免疫についてお話しします。細菌やウイルスなどから身を守り、病気にかかるのを防いでくれる免疫システムは、私たちが健康を維持していくために大切な働きをしてくれています。
免疫は大きく分けて『自然免疫』と『獲得免疫』の2つに分類されます。
自然免疫は私たちの体にもともと備わっている仕組みで、はじめて侵入してきたウイルスを発見し、排除する働きをしてくれます。主な細胞として、体に侵入してきた異物を食べてくれる『マクロファージ』や、感染細胞を自殺に追い込み排除してくれる『NK細胞』などがあります。
一方、獲得免疫はウイルスに感染したあとに作動する後天的な仕組みを持っており、感染したウイルスを識別し攻撃してくれます。主な細胞にウイルスの情報を伝える『ヘルパーT細胞』や、感染細胞を自殺に追い込み拡大を阻止する『キラーT細胞』、抗体を作りウイルスの感染を阻止する『B細胞』などがあります。また、ワクチンは獲得免疫に関係しています。ワクチンを摂取することによって同じウイルスや細菌が侵入したとしても、獲得免疫がすぐに攻撃をするため、増殖を抑えるというわけです」
細胞の中で働く“ミトコンドリア”が免疫に大きく関わっていた!
次に「ミトコンドリア」について詳しく伺いました。学生時代に理科の授業で習ったミトコンドリアが今、健康維持や免疫力アップの観点から注目をされています。
「ヒトの体は、約37兆個の細胞から成り立っており、その細胞の一つひとつにミトコンドリアという細胞小器官が含まれています。ミトコンドリアは、細胞の活動に必要なエネルギーを作り出す大切な役割をはたしています。ですからミトコンドリアはいわば、私たちの体のエネルギー工場といえます。
また、近年の研究により、ミトコンドリアは免疫に大きく関係していることがわかってきました。
ウイルスが細胞内に入ってくると、ミトコンドリアがウイルスを感知し、免疫システムをオンにします。ミトコンドリアの働きによって免疫細胞が活発に活動をはじめるというわけです。ですから、ミトコンドリアが元気でエネルギーがたくさん作られれば、免疫細胞も共に活発に活動するということです」
ミトコンドリアを活性化させる「ミトコン活」は運動と睡眠、食事がポイント!
ミトコンドリアの数は1細胞あたり100~3000個とされており、細胞によって数が大きく異なります。しかし、私たち現代人は運動不足や不眠、栄養面の不安からこのミトコンドリアの量や質を低下させる生活を送っています。そこで、ミトコンドリアを積極的に増やし、細胞を活性化させる「ミトコン活」に注目をしましょう。
ミトコン活のポイントは3つ。運動、睡眠、そして食事です。
①運動でミトコンドリアを増やす方法
ミトコンドリアは、細胞の中でダイナミックに分裂や連結をおこなっています。ミトコドンドリアは、長く連結しているほど元気だということがわかっています。そこで、長いミトコンドリアにするためには、ややきついと感じる運動「インターバル速歩」がオススメ。
【インターバル速歩】
方法:3分早歩き、3分ゆっくり歩き、を交互に繰り返す
頻度:1日合計15分 週4日以上 5ヶ月間以上継続
②睡眠でミトコンドリアを増やす方法
寝ているときにも、ミトコンドリアはエネルギーを作り続けて働いています。また、睡眠中は元気なミトコンドリアが増えやすい時間帯でもあるので、良質な睡眠をしっかりとることが重要。
ミトコンドリアが元気になると、さらに睡眠の質もあがるという相乗効果も得られます。
③食事でミトコンドリアを増やす方法
ミトコン活にかかせないのはなんといっても食事です。下記に示した栄養素は、ミトコンドリアを元気にすることがわかっています。これらの栄養素が含まれる食品を毎日積極的にとることが重要です。とくに還元型コエンザイムQ10は、ミトコンドリア内でエネルギーを生産する工程に直接関わっているので、とても大切な栄養素なのです。
【ミトコンドリアが元気になる栄養素】
還元型コエンザイムQ10(+抗酸化作用)
ビタミンB1(チアミン)
ビタミンB2(フラビン)
α-リポ酸(+抗酸化作用)
L-カルニチン(脂質代謝)
パントテン酸(CoA)
ミトコンドリアは細胞を動かすエンジンの役割もはたしており、私たちが健康な生活を送るうえで欠かせない存在だということがわかりました。
老化やがん、生活習慣病などさまざまな病気にも関係しているミトコンドリア。
マスクを完全に外せる日まで、ミトコンドリアを意識して生活する“ミトコン活”で免疫力を高めましょう。
教えてくれたのは…太田成男(おおた しげお)先生
日本ミトコンドリア学会名誉理事長 日本医科大学名誉教授 順天堂大学客員教授。
1974年東京大学理学部卒業。1979年、東京大学大学院薬学系研究科博士課程を修了した後、スイス・バーゼル大学バイオセンター研究所研究員、1985年自治医科大学講師・助教授を経て、1994年より日本医科大学教授、2003年日本医科大学大学院教授、2015年日本医科大学先端医学研究所教授を経て、2017年3月退任。30年以上にもおよぶ研究から、ミトコンドリアに備わっている機能が心身の健康と密接にかかわっていることを発見する。ミトコンドリア研究の第一人者であり、日本ミトコンドリア学会名誉理事長、日本Cell Death学会元理事長などを務めている。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
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