【格闘技ドクターが解説】回数をこなすだけじゃダメ?「何度練習しても上達しない」本当の理由

 【格闘技ドクターが解説】回数をこなすだけじゃダメ?「何度練習しても上達しない」本当の理由
Adobe Stock
広告

運動を効果的に上達させる方法は他にもあります。例えば20回、同じ技を練習するにあたり、奇数回は実際に体を動かして技を行い、偶数回は体を動かさずイメージだけする、つまり「動かない」を間に挟む、という練習です。偶数回で何が起こっているかというと、「体を動かさない」ことで「一次運動野からの運動指令が抑制される」ため筋肉群が収縮しない、もしくは収縮が抑制されます。つまり「体を動かさないようにブレーキをかけた状態で、まるでその技をやったかのようにイメージする」動かない練習を加えることで、「一次運動野以外の運動に関するエリアが強く活性化」し、運動の原点である運動イメージが強化される可能性があります。

「失敗」と「修正」が上達に導く

運動学習における小脳の役割を知れば、失敗は「畏れるもの」から「修正するもの」に変わります。失敗しないように練習するのではなく、どんどん安全な範囲で失敗を積み重ねながら、修正した回数が上達への道となります。実践において問題にすべきは「修正しない」であり、指導においては「失敗を許容する」が重要になることがわかります。

このように脳と運動の関係を紐解いていくと、スポーツはもちろん、あらゆる身体活動におけるパフォーマンス向上のヒントがたくさん見つかります。いままで信じられてきた常識と違うこともきっとあると思いますが、科学的事実というのは研究や科学技術の発展と共にどんどん更新されていくものです。正しく身体を知り、正しく脳を知ることで、個人のレベルはもちろん、そのジャンル全体の技術が進化する可能性があるわけです。そんなワクワク感と共に、スポーツ医学の知見を共有できたら嬉しいです。

教えてくれたのは…二重作拓也さん
挌闘技ドクター/スポーツドクター 富家病院リハビリテーション科医師  格闘技医学会代表 スポーツ安全指導推進機構代表 1973年生まれ、福岡県北九州市出身。福岡県立東筑高校、高知医科大学医学部卒業。8歳より松濤館空手を始め、高校で実戦空手養秀会2段位を取得、USAオープントーナメント高校生代表となる。研修医時代に極真空手城南大会優勝、福島県大会優勝、全日本ウェイト制大会出場。リングドクター、チームドクターの経験とスポーツ医学の臨床経験から「格闘技医学」を提唱。専門誌『Fight&Life』では10年にわたり連載を担当、「強さの根拠」を共有する「ファイトロジーツアー」は世界各国で開催されている。『Dr.Fの挌闘技医学』『Dr.F 格闘技の運動学』(DVDシリーズ)『Fightology(英語版/スペイン語版)』『プリンスの言葉』『Words Of Prince(英語版)』など著作多数。

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

広告
  • 3
  • /
  • 3



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

脳