"なんもしない人"がヨガの聖典『バガヴァッド・ギーター』を持ち歩く理由

 "なんもしない人"がヨガの聖典『バガヴァッド・ギーター』を持ち歩く理由
Shintaro Sumida(Gran)
広告

"なんもしない"活動から得られたもの

――最後に、「なんもしない」活動を続けていてよかったと思うことは?

「常によかったなと感じています。僕が『なんもしない』からこそ皆さんは依頼してくれるわけだし、得られたことばかりです。

人は『自分はこんなことできます』と発信する人やいろいろと出来る人に対しては、余計なお世話かなと思って、いろいろと口を出さないと思います。でも、「なんもしないです」というと、皆さん、いろんなものをくれる。物やお金、知識。ベタな話ですが、やっぱり人は、空の容器には水を注ぎたくなるんでしょうね。あえて空白を持っているほうが、いろんなことに巻き込まれやすいという知見を得られました。

とはいえ、自分的に『余計なお世話だな』と思うことは発生するので、つい『言われなくてもわかっています』などと口にもしてしまいますが」

――え! 面と向かって言ってしまうんですか(笑)。

「はい。人間、色々経験すると濁っていくので。でも、自分自身が濁っていくことも含めて、面白いと感じています。

活動をとおして人の助けになった、というつぶやきを見ると、僕を品行方正な人格だと想像される方もいますが、時にはTwitter上で反論することもある。『意外と人間味があると感じたので依頼しました』と言われることもあります。

ただ、いろんなことを気にするようになったり、濁り過ぎたときは、『バガヴァッド・ギーダー』を読んで清めて、リセットします」

――もっと仙人みたいに、いろいろ受け入れる人なのかと思っていました(笑)。

「ははは。でも、例えば自分の人に言えない話をしたい、という依頼もあるのですが、仙人みたいな人には、なかなか悩みは話しづらいと思います。悩みって人間的な部分から発生するので、仙人には理解できませんから。

 カウンセラーではなく僕のところにくるのは、専門家は『相手は自分のことを全部わかっちゃうんだろうな』とか『悩みを持つことは(人として)低いレベルと思われるのでは』などと感じたり、(悩まないように自分を)治されそうな気がするから。自分の悩みを大切にされない感じがするからだと思います。

だから僕は、人間的である部分を大事にしています。きっと、ヨガの境地に達したら、この活動は成り立ちません。究極の静寂になってしまったら、誰も僕に寄りつかなくなると思いますよ」

Profile:レンタルなんもしない人(森本祥司)さん

レンタルなんもしない人
レンタルなんもしない人(森本祥司)さん photo by Shintaro Sumida(Gran)

1983年生まれ。理系の大学院を卒業後、教育系出版社に就職。会社員生活を送る傍らコピーライターを目指すも方向性の違いに気づき、会社を退職。2018年より「なんもしない人(僕)を貸し出します。常時受付中です。国分寺駅からの交通費と飲食代等の諸経費だけ(かかれば)もらいます。飲み食いと、ごくかんたんなうけこたえ以外、なんもできかねます。」という、「何もしない」というサービスを始め、現在も従事。著書に『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』(晶文社)、『〈レンタルなんもしない人〉というサービスを始めます。スペックゼロでお金と仕事と人間関係をめぐって考えたこと』(河出書房新社)などがある。

twitterアカウント:@morimotoshoji

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

広告
  • 4
  • /
  • 4

Text by Kyoko Nagashima
Photos by Shintaro Sumida(Gran)
撮影協力:cocobunjiプラザ



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

レンタルなんもしない人
レンタルなんもしない人
レンタルなんもしない人