"なんもしない人"がヨガの聖典『バガヴァッド・ギーター』を持ち歩く理由
――3年たった今でも、毎日、持ち歩く理由とは?
「一つは、文庫本なので持ち歩きやすいからです。もう一つは、1章1章がとても短い構成なので、すき間時間にパッと開いて読めるから。そして、1章のなかに、何か、こう、気が晴れるような、刺さる言葉が書いてあるからです。
『バガヴァッド・ギーター』は物語ではありますが、一般的な小説と異なり、最初から最後まで文脈を追わなくても読めます。クリシュナの言葉は、部分が全体になっているというか、それだけで、すべてを言い尽くしているように思えます。しかも、ものすごく抽象度が高いので、同じ言葉でも、読むときの心理状態によって解釈が全然違ってくる。それが面白いな、と思います。
今は最初から最後までしっかり読むことはありませんが、本を開く回数は多くなりましたね」
――何かに迷ったら開く、という感じでしょうか?
「いえ、単純に、好きだから開く。で、たまたま開いたところに書いてあった言葉を読み、“ああ、自分は今、こういうことに迷っていたんだな”と気づくことが多いです。
何かが気になっている最中って、それを俯瞰してみられない。『バガヴァッド・ギーター』を読むことが、捕われを外すことにつながっています。
読むと、初心を思い出します。『レンタルなんもしない人』の活動を始めた当初は、あまり迷いのない状態でした。結果などにこだわらず、ただただ自分のなすべきことをする、というか。多分、この本に書かれている“理想の状態”だったと思うし、だからこそ、この活動を始められました。でも、メディアに取り上げられたり、いろんな方と関わるようになったりするようになってくると、俗っ気のあることも浴びていく。そうすると、僕も生身の人間なので、影響を受けて迷いも生まれてきます」
――俗っ気とは?
「具体的に言うと、例えばメディアとの出演料の交渉とかです。『なんもしない人』の活動ではお金にこだわらず依頼を受けている一方、活動から生まれた仕事ではギャランティーの交渉をしている。やっぱり“いつの間にか、お金のことを気にするようになっていたな”と感じるし、迷いは生じます。これを、どう考えていけばいいのかは、答えが出ていないのですが」
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