睡眠コーチは「20時就寝→2時起床」?驚異のライフスタイルに学ぶ、自分にフィットする睡眠のあり方

 睡眠コーチは「20時就寝→2時起床」?驚異のライフスタイルに学ぶ、自分にフィットする睡眠のあり方

睡眠のプロは、どんなライフスタイルを送っている?15万人の日本人のデータを集め睡眠改善をしてきた「上級睡眠健康指導士」角谷リョウさんに聞いてみました!

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ーー角谷さんは今、20時に寝て深夜2時に起床されているとお伺いしました。超・夜型の私からすると「信じがたいライフスタイル」なのですが…。

角谷さん:僕はもともと重度の睡眠時無呼吸症候群だったんです。実際にCPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)をしていたんですけど、それを自力で、軽度というかほぼほぼ安全っていうレベルまで改善しました。不眠症も併発してて、睡眠薬も服用してました。これも、睡眠薬を飲まずとも眠れるレベルまで自力改善しています。これがあった上で、今、20時台に寝て深夜の2時台に起きて2時半から働き始めるというスタイルで過ごしています。

ーー何度聞いても信じがたいライフスタイルですね(笑)

角谷さん:基本的に言うと、僕は夜に仕事するということが苦手なんですよ。だから、できるだけ夜の仕事は受けたくないというのが本音としてはあります。あとは、僕はどちらかというと創造する仕事、例えば研究論文を書いたり本を書いたりする仕事の方が好きなんですね。だけど、実際、会社をやっているのでスタッフもいるし、毎日企業のいろんな人にセッションをしたり、連絡にはレスをしなきゃいけないわけです。そうすると僕の自由な時間は朝しかないんですよね。僕、前は5時に起きていました。だから朝5時に起きて7時までの間の、たった2時間が僕の朝の自由時間だった。

僕にとって「夜の時間」というのは、あまり生産性の高い時間ではないんですよ。僕、テレビとかそういうの見ないから、そこで何か楽しめたり休まるわけでもないし。だったら寝る時間を前倒しして、朝の自由な時間が4時間とか5時間増えた方が自分の幸福度が高い。僕、その時間が自分が一番したい仕事ができるから、最高に幸福な時間なんですよ。だけど夜の2時間って、自分にとってはあまり幸福な時間じゃない。

ーー角谷さんにとって、夜は「あってないような時間」なんですね。

角谷さん:そうそう。仕事で疲れてるから、そこから本書けますかっていったら書けないし。そうなると惰性でYoutubeみたりネット見たり…そもそも、本を読めるエネルギーも、夜には残ってないんですよ。

ーーとはいえ、朝といっても、2時ってまだ「夜」じゃないですか。どうなんですか?世界はまだ暗いですけど…。

角谷さん:でも、それは「どう考えるか」ですよ。捉え方次第。早起きしてる人って、いるんですよ。なんなら僕、朝の5時から経営者にセッションすることもある。

ーー朝の5時からセッション…!?

角谷さん:5時からセッションしてほしいっていう社長さん、経営者さんも普通にいますからね。なんなら、僕が10月に出した『超熟睡トレーニング』の編集者さんも朝5時台に普通に連絡が来てましたから。エグゼクティブ層の早起き組が朝5時ぐらいから活動し始めるなら、僕はそれより前に攻めるっていうのかな。

ーー私たちの中で、一般常識として「夜寝て朝起きる」っていうスタイルが普通とされているじゃないですか。だから、私の中で夜8時ぐらいに寝るってできないことなんじゃないかとか、夜中2時に起きるってすごく難しいことなんじゃないかとまず思っちゃう。けど、それは慣れなんですか?

角谷さん:考え方次第ですよ。僕は逆に言うと、ラッシュの時間帯に電車に乗ったり仕事に向かう方がよっぽどつらいと思う。だって、始発列車、ガラガラですよ。

ーー確かに、人が動いてない時間はストレスフリーではありますよね。

角谷さん:午後になったらオフィスには人はうじゃうじゃいるし、どんなにノイズキャンセルしても、壁とか衝立をしても、人がいるという空気感でザワザワするものですよ。でもそれが、朝の2時から7時は誰も来ない、誰もいない。

ーーそりゃ、来ている人がいたらびっくりですよね。

角谷さん:夜型組はいるから。そこで朝型の僕とバトンタッチする感じかな。そこが交差点なんですよ。

ーー深夜のオフィスに知られざる交差点が存在するわけですね。

「8時間睡眠」実はよくない!

ーー20時に寝て2時に起きる角谷さんですが、睡眠時間だけでいえば6時間ぐらいは取れてるってことですかね。睡眠時間的には問題ないんでしょうか?

角谷さん:実は厚労省が推奨している睡眠時間というのは6時間です。高齢者に関しては、8時間以上とると死亡リスク上がるとまで言っています。

ーー6時間でいいんですね!そうなると、なんとなく人々の中で良いとされている「8時間睡眠」っていうのは、何か、前の時代の風説みたいな情報なんでしょうか?

角谷さん:大規模データでも7時間ぐらいが一番いいって言われてるんだけど、そのときにその睡眠時間を決めたやり方っていうのが、口頭調査だったんですよ。口頭ってのはつまり「あなた何時に寝ていますか?」と聞いているだけだから、つまり「測っていない」。計測したわけじゃなくて、自己申告です。だから、実際に測ると、その時間とずれてたりするんですよ。今、ウェアラブルの端末の、睡眠が測れるスマートウォッチとかあるでしょ。それで正しい睡眠時間を計測すると、自己申告している時間との間にズレが出てくるんですね。

ーーつまり、「8時間睡眠が良しというのは、調査がゆるかった時代の話なんですね。

角谷さん:8時間はほぼないですね。なぜ6時間かという根拠については、やっぱり5時間以下になると優位差があるんですよ。7時間に比べて、よくないよと。でも5.5時間になると優位差がない。だから安全を見て6時間にしている。6時間はリスクがない、現実的にはそれぐらいとっていれば問題ないんじゃないかと厚労省のおすみつきの時間です。

ーーあまり知られていないですよね。6時間睡眠じゃ足りないんじゃないかとか8時間寝ないとダメなんじゃないかとか思っていました。

角谷さん:残念な話すると、睡眠時間は長ければ長いほど、だめなんですよ。9時間睡眠で、相当リスクが高くなります。

ーー睡眠が長いことによるリスクって、どういうことなんですか?寝ていることって体にとっては負担がないと思っちゃうんですけど、長く寝ることによって体にどんなことが起こるんですか?

角谷さん:全部が解明されているわけじゃないけど、ひとつ言うと、ずっと寝てると、深い眠りが減って浅い眠りの比率が増えるんですよ。長く寝てるからいいかなみたいなことが起こって、深いノンレム睡眠が出ている時に成長ホルモンが出たりしているんだけど、睡眠がただ長いと、浅い睡眠ばかりになってしまう。そうすると、肌の再生もされないし疲れも取れない。

ーーただ横になっているだけ…ってことですか?

角谷さん:そうそう。浅い睡眠の時って、半分起きているみたいなものなんですよ。起きている時の脳波に近かったり、微妙なんです。浅いノンレム睡眠にも1と2があるんだけど、1って医学的に1なだけで、「今寝てましたよ」っていったとしても本人にとっては全然寝てないっていう感覚になる、そういうレベルなんです。寝ているか寝ていないかの線引きは実はすごく曖昧。だから、長く寝ている人っていうのは、ただ横になっているだけってことになるから、めちゃくちゃ損してる!

ーーだったら起きて何かやる方がいいよねってことになりますよね。だから、決して長く寝る必要は全くなくて、あとはこの「6時間睡眠」を1日のどこに持ってくるかということも、比較的自由なんですね。

角谷さん:うん、自由。体内時計があるから、それを自分でコントロールすればいいだけの話。だって海外にいったら体内時計がズレるじゃないですか。

ーー確かに、ずれますね。

角谷さん:体内時計が何かというと、この時間に体温が上がって、この時間には下がります…っていうリズムがあるということ。これがズレていると、例えば体温は上がらないのに起きちゃうと、何もできないというだけの話。

ーーちなみに、この記事を読んでいる人の中にはきっと、夜勤の方もいらっしゃると思うのですが、夜勤の方も体内時計さえズレなければどの時間に6時間睡眠をとっても大丈夫っていうことですか?

角谷さん:夜勤の人はね、この話すると長くなっちゃうけど…夜勤の人は、めちゃくちゃ大変なんですよ。夜勤自体は、その方の勤務スタイルがずっと夜勤だったら、それがルーティンになっていれば問題ないんです。夜勤の方の何が大変かっていうと、多くの人は、日勤の人と暮らしていたり、日勤の日常に夜勤が入ってしまうのが課題なんですね。

ーー看護師さんも連日夜勤とかじゃなくて、日勤の日もあったりしますもんね。

角谷さん:生活全てを夜勤モードに統一できたら楽なんですよ。ルーティン化し切らないのが落とし穴なんですね。だから、できることは、体内時計を狂わせないようにこういう工夫してくださいね、とかそういうアドバイスをするわけです。ただね、夜勤ってメリットもある。

ーー例えば?

角谷さん:夜って静かでしょ。対人ストレスが少なかったり、みんなが働いている時に映画見たりできるでしょ。夜勤のメリットを活かしつつ、デメリットを最小限にすれば、むしろ夜勤の方が気持ちよく働けるっていうことはありますよ。

ーー考え方次第なんですね。どうこなすかというか、自分にとってフィットするやり方を選んでいくってことですね。

角谷さん:そう。世間の状況とか常識にとらわれず、その時の自分にとっての最適解を見つければ、快適に過ごせるんですよ。人がいいって言うからとかデータがいいから、っていうのはあくまでも参考程度でいいんです。

ーーその時その時の自分の状態を常に知っていくことが大事ってことですね。

角谷さん:そう!そしてそれを楽しむという姿勢が何より大事です!

お話を伺ったのは…角谷リョウさん

1970年、名古屋生まれ。上級睡眠健康指導士。 NTTドコモ、サイバーエージェント、損保ジャパンなど160社以上、15万人以上のビジネスパーソンの睡眠改善をサポートしてきた実績あり。 認知行動療法や心理学をベースにした独自の睡眠改善メソッドによるサポートは評価が高く、講義・サポート依頼が殺到。 また、経営者1,000人以上の睡眠改善を通じて得た経験を活かし、現在は経営者特化型のサポートも実施中。 著書『働くあなたの睡眠術』は台湾・中国・韓国で翻訳出版されるなど、ベストセラーとなっている。 「人は、強制されても生活や行動は変わらない」をモットーに、楽しくみずから自分を変えたくなるようなサポートを追求している。LIFREE 株式会社共同創業者。著書に『働くあなたの快眠地図』(フォレスト出版)、『働く50代の快眠法則』(フォレスト出版)がある。2024年9月にYouTubeチャンネル「睡眠先生リョウ【仕事に超役立つ睡眠術】」を開設。

最新著書

超熟睡トレーニング
『超熟睡トレーニング』(角谷リョウ・著/Gakken・刊)

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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