放置すると失明してしまう可能性も…。「糖尿病網膜症」になりやすい人の特徴は?医師が解説

 放置すると失明してしまう可能性も…。「糖尿病網膜症」になりやすい人の特徴は?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-11-08

血糖値が高い状態が続くと、糖尿病に合併する様々な病気を引き起こすようになります。そのひとつが「糖尿病網膜症」。生活スタイルによっては症状の重症化の可能性も。医師が解説します。

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「糖尿病網膜症」とは、どのような病気なのか?

糖尿病とは、血液中に含まれるブドウ糖を反映する血糖値が慢性的に高値を示す病気を指しています。

糖尿病に罹患すると、慢性的に高血糖が続くために、喉が渇きやすくなり、尿量増加、体重減少などの身体のサインが現れる場合もありますが、顕著な自覚症状が認められないケースも少なくないと言われています。

万が一、糖尿病の初期症状が認められる際や糖尿病と診断された場合には、糖尿病に随伴して、「糖尿病網膜症」など様々な合併症を引き起こすことが知られていますので、専門医療施設で精密検査を必要に応じて受けることが重要です。

短期間に限って血糖値が一時的に高くなっている状況だけでは自覚症状がないことも少なくありませんが、血糖値が急激に顕著に高値を示すと喉の渇きや多飲、多尿といった症状が認められることも往々にしてあります。

また、血糖値が高い状態が続くと全身のあらゆる血管を傷つけてダメージを与えることで、さまざまな部位に症状が現れて、「糖尿病網膜症」をはじめとして、糖尿病に合併する多彩な病気を引き起こすようになります。

糖尿病網膜症は、糖尿病による3大合併症のひとつであり、初期の段階では自覚症状がないままに、眼底出血が起こり、病状が進行すると視力が低下する病気で失明する可能性もあります。

「糖尿病網膜症」になりやすい人の特徴

糖尿病の主な発症原因は、血糖値を降下させる作用のあるインスリンと呼ばれるホルモンの分泌量が低下したり、働きが悪くなったりすることで発症すると言われています。

本邦では、糖尿病患者さんの約9割以上が2型糖尿病と言われています。

いわゆる、「ストレス」、「肥満」、「運動不足」、「暴飲暴食」などの日々の生活習慣の乱れが主な原因となってインスリンが相対的に効きにくくなることでブドウ糖が細胞に十分に取り込まれなくなります。

インスリンの分泌量やその機能に異常が生じる原因としてもっとも多いのは、高脂肪高カロリー食物繊維不足などのいわゆる悪しき食生活習慣です。

糖尿病
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このような生活スタイルを送っている人は、糖質成分の取り過ぎや顕著な運動不足が続くとインスリンの抵抗性が増して徐々に血糖値が上昇して、糖尿病、ならびに糖尿病網膜症に罹患しやすいと考えられます。

糖尿病網膜症は、高血圧症や脂質異常症なども発症や進行に強く関わってきますが、主な原因は高血糖であり、糖尿病の罹患期間が長いほど糖尿病網膜症の有病率は高く、病気の重症度は高くなるとされています。

インスリン分泌量の低下やインスリン抵抗性を引き起こす2型糖尿病と診断された時には、すでに糖尿病網膜症になっている人が約3割程度存在するといわれています。

一方で、自己免疫が主な原因で発症する1型糖尿病では、思春期より前に視力低下を引き起こすほどの重症の糖尿病網膜症を発症することは少ないといわれています。

まとめ

糖尿病とは、インスリンという血糖値を下げるホルモンの機能が減弱することで、慢性的に血糖値が高い状態が継続する疾患です。

一般的に、喉の渇き、多飲、多尿、足のしびれなど糖尿病の初期症状を放置して血糖値が高い状態が継続すると、血管が障害されて心筋梗塞、脳卒中など重篤な病気に繋がります

糖尿病という病気は、インスリンの作用不足により高血糖が慢性的に続き、糖尿病網膜症を含めて、腎症、神経障害の三大合併症をしばしば伴うことが知られています。

したがって、糖尿病が疑われる際や糖尿病と診断された場合は、網膜の状態を調べる眼底検査をはじめとして、腎機能検査、腱反射、動脈硬化の程度を調べる検査などを必要に応じて受けることが推奨されています。

特に、「糖尿病網膜症」に関連した有意な身体のサインを自覚した場合には、すぐに糖尿病内科や眼科など専門の医療機関を受診して精密検査を受けることを心がけましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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