虫刺されのときの正しい対処法は?市販薬の選び方と塗り方のポイント|薬剤師が解説
アウトドアだけでなく、家の中でも虫刺されに悩まされるシーズンが到来。もっとも多いのが蚊に刺されるケースですが、正しいケアをしないと膿んだり茶色の跡が残る人も少なくないようです。虫に刺されてかゆみが出たら、かゆみ止めを塗り、かきむしらないことがポイント。この記事では、虫に刺さされたときの正しい対処法について解説します。
虫刺されとは?
虫刺されとは、虫が血を吸ったり、刺したり、咬んだりすることによって起こる皮膚の症状のことで、専門的には「虫刺症」(ちゅうししょう)といいます。虫のもつ唾液成分や毒成分などが皮膚の中に入ることで、刺激反応やアレルギー反応が起こり、かゆみ、赤み、痛み、腫れ、水ぶくれなどの症状が現われます。
虫刺されの原因となる虫
蚊のような血を吸うタイプの虫や、有毒毛をもつ毛虫のようなタイプの虫など、虫刺されの原因となる虫はさまざまで、現れる症状も原因となる虫によって異なります。原因となる虫には以下のようなものが挙げられます。
蚊
夏場、もっとも虫刺されの原因となるのが蚊でしょう。蚊は家の中や庭、公園、山野など、屋内・屋外を問わず、どこにでも生息しています。かゆみとともに刺された部分が腫れ、20~30分もするとおさまりますが、思い出してかくとまた膨らみます。これは皮膚内にまだ残っている化学物質をかくことで、皮膚を刺激するためです。
ブヨ
小型のハエのような虫で、高原や山間部の渓流沿いに生息しています。刺されたときには異常を感じることが少なく、半日~1日後に徐々に激しいかゆみと赤い腫れが現れます。皮膚を咬んで出てきた血液を吸うため、内出血ができたり、赤いしこりが長く残ることもあります。
ノミ
ネコやイヌなどのペットに寄生するネコノミが、吸血のために人を刺すことがあります。血を吸われてから1~2日後に強いかゆみをともなう赤いブツブツが現われ、水ぶくれができることもあります。
ダニ
室内で刺されるダニのほとんどはイエダニによるものです。腹部や太ももの内側、脇や二の腕など、衣服で隠れている部分が刺されやすく、強いかゆみをともなう赤いブツブツが現れます。数日~1週間以上にわたって、しつこいかゆみが続くこともあります。
ハチ
庭の手入れやハイキングなどの際に、アシナガバチやスズメバチに刺されるケースがみられます。ハチに刺されると、毒成分の刺激により、刺された直後から激しい痛みをともなう赤い腫れが生じます。呼吸困難などアナフィラキシーショックを起こすこともあるのでとくに注意が必要です。
毛虫
庭の手入れなどの際に、チャドクガのような有毒毛をもつ毛虫に触れることで、激しい痛みやかゆみをともなう赤いブツブツがたくさん現れます。患部をかくと、肌に刺さった有毒毛をさらに擦りつけることになり、蕁麻疹じんましんのように症状が広がります。
虫刺されに効果的な市販薬の選び方
虫刺されの薬には「かゆみ止め(抗ヒスタミン)」「抗炎症剤(ステロイド)」「細菌による化膿止め(抗生物質)」の3種類があり、症状に応じて使い分けることが大切です。かゆみが強い場合は「抗ヒスタミン」、炎症をともなう場合は「ステロイド」、化膿してしまった場合は「抗生物質」と覚えておくとよいでしょう。
①かゆみ止め薬(抗ヒスタミン)
強い鎮痒作用(かゆみを抑える作用)をもつ「抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミンマレイン酸塩など)、「局所麻酔薬(ジブカイン塩酸塩など)」、「殺菌薬(デカリニウム塩化物など)」「清涼剤(l-メントールなど)」を配合。クリームやゼリータイプ、液状タイプがある。
【製品例】 「ムヒS」(池田模範堂)、「新ウナコーワクール」(興和)、「マキロンかゆみ止め液P」(第一三共) など
②炎症を抑える薬(ステロイド)
3~4日たっても治らず、患部がジュクジュクしてきた場合に有効。炎症、鎮痒作用がある「ステロイド剤(デキサメタゾン酢酸エステルなど)」を主成分に二次感染を防ぐ「殺菌剤(クロルヘキシジン塩酸塩、デカリニウム塩化物など)」を配合。軟膏やクリーム、ローションがある。
【製品例】 「リンデロンVs」(塩野義製薬)、「ウナコーワエースAL」(興和)、「オイラックスA」(第一三共) など
③化膿を止める薬(抗生物質)
細菌による二次感染を起こした場合に有効。化膿の原因となるブドウ球菌、連鎖球菌などに強い抗菌力をもつ「抗生物質」が主成分。
【製品例】 「クロマイ-P軟膏AS」(第一三共)、「フルコートf」(田辺三菱製薬)、「ドルマイコーチ軟膏」(ゼリア新薬) など
虫に刺されたときの正しい対処法
自分の症状がかゆみ、炎症、化膿のどの段階なのかを見極めて、適切な薬を塗ることが、キズや跡を残さず、早く治すために大切です。
まずは、患部を水で洗い流すなどして清潔にしてください。かゆいからといって、ひっかいたり、かきむしったりすると炎症が皮膚の深いところまで達し、茶色い跡が残ってしまうため、かきむしらないことがポイントです。かゆみが強い場合は、冷水や保冷剤などで患部を冷やすとかゆみが和らぎます。
かゆみ止めは、かゆみが起こるたびに何度でも塗るようにしてください。一度に厚くたくさん塗る人もいますが、薬は皮膚と密着している部分からしか入らないので、あまり意味はありません。薬の量より回数を多く塗るようにしましょう。
薬はむれると皮膚表面がやわらかくなり、浸透がよくなるので薬を塗った上に、ばんそうこうをかぶせて貼ると効果的です。無意識にかきむしったりするのを防ぐこともできます。最近では、患部に貼るパッチ型の薬も市販されていますので利用するのもよいでしょう。
まとめ
虫刺されは、虫の唾液成分や毒液などが皮膚の中に侵入し、かゆみや炎症を起こし、場合によっては化膿することもあります。それぞれの症状に合った市販薬を選び、症状が治まるまでくり返し塗ることで、跡を残さず、症状の悪化を防ぐことができます。かゆいからといって、決してかきむしらないことが大切です。
また、虫刺されの約9割が病院での受診、治療の必要のないケースですが、市販の塗り薬を購入し、しばらく塗ってみても症状が変わらない、もしくはひどくなっている場合には、一般的な虫ではない場合や、虫刺されが原因ではない可能性もあるため、皮膚科などの医療機関を受診してください。
AUTHOR
小笠原まさひろ
東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。
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