「無理に人と合わせない」ADHDグレーである自分を客観的にみつめ、見つけた解決方法【体験談】

 『ただのぽんこつ母さんだと思っていたらADHDグレーでした。』(はちみつコミックエッセイ)より
『ただのぽんこつ母さんだと思っていたらADHDグレーでした。』(はちみつコミックエッセイ)より

「待ち合わせの時間や場所を間違える」「忘れ物などのうっかりミスをしてしまう」「空気が読めない」——子育てや家族に関する漫画を描いているはなゆいさんは、「ADHDあるある」で悩んできました。『ただのぽんこつ母さんだと思っていたらADHDグレーでした。』(はちみつコミックエッセイ)では、心療内科を受診し、自分の特性と向き合い、自分なりに困りごとを克服していくまでの過程が描かれています。後編では、人付き合いに関する悩みとその解決方法や、ご自身の長所について伺いました。

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「普通」にしなくても、色々な生き方がある

——本書では娘さんが「普通」からはみ出ていないか、はなゆいさんが心配されている様子も描かれています。「普通」にとらわれないことは、同調圧力の強い今の社会では難しくも感じますし、親御さんの心配する気持ちゆえでもあるとも思いますが、どのように考えを切り替えましたか?

社会の変化が激しい時代でもあり「普通」の尺度も弾力的になりつつあると思っています。以前は私自身が「ちゃんと『普通』にしていないと『普通』に幸せになれない」という見方をしていました。

ただ、生き方を模索するうえで、私の幼少期よりも大きなテクノロジーの発展もあり、個人がSNS等の各プラットフォームで自分の絵や漫画、小説、動画、知見を社会に出し、場合によってはそれをお仕事にしていくという道もゼロではなくなってきました。

私もブログで描き始めた子育て漫画の延長が、幸運にもこのように書籍出版の取材をしていただけるようになりました。娘にもそういった意味で、「生き方としては、たとえ遠回りになったとしても、色んな生き方があるので、柔軟に考えていいよ」ということを身をもって伝えられたらいいなと思っています。

——はなゆいさんご自身が「無理に人と合わせない」「苦手なことは無理せず、自分にできることをする」という行動をとってから、人付き合いに関する考え方に変化はありましたか?

人間関係が楽になりました。書籍でも描きましたが、そもそも私は「阿吽の呼吸」をこなすのが苦手で、今でも一番苦労しています。ふとした瞬間に、相手の気に障ることを言ってしまう恐怖があるんです。

そうならないように精一杯トライするのですが、今では「空気を読むことができないとダメなんだ」と自分を追い込まないようにしていて。できないなりに、できる範囲でいいと割り切るようにして、自分を保つようにしています。

まずは自分のことをよく知る

——人を頼ること・頼られることについて、どのように考えていますか?特性を自覚したうえで、気をつけないといけないと思っていることと、手を抜いてもよい・人に頼ってもよいと思っていることの線引きについて、考え方を教えていただきたいです。

まずは、自分のことをよく知ることが大切だと思います。そのためにADHD関連の本をたくさん読みました。自分でも気づいていない考え方のクセや、行動のクセがたくさんあることを知りました。

その上で、自分が苦手だと思うことでも、自分なりにできる対策を考え、実践するようにしています。特に難しいと思うのは、やはり人間関係で、その場ですぐに対応するような場面はドキドキするし、「しまった」と思うこともよくあります。

とはいえ、全く参加しないわけにはいかない。なので、集まりなどに参加するときは、人が多いところに入っていくと混乱してしまうので、なるべく早く到着するようにしたり、忙しくないときに誰かに聞くなど、なるべく相手の負担にならない範囲で、人に聞いたりお願いしたりしながら、自分ができることは精いっぱいやるようにしています。

あと、感謝の気持ちを忘れないこと。家にちょっと高級なお菓子を何箱かストックしてあって、何か頼んだときや、失敗して迷惑をかけてしまったとき、このお菓子を渡すなどして、感謝の気持ちを言葉だけでなく、ちょっとした贈り物と合わせて伝えるようにしています。

——今はどんなところがご自身の長所だと感じていますか?

人に合わせることは苦手ですが、自分の「好き!」に敏感で、すぐに行動に移せることです。さらに、興味の幅が広くて、気になったことはどんどん調べて、調べたことや発見したことを人に伝えることが好きです。

それが今の「漫画を描く」という仕事につながっています。麻雀や海外旅行のときもでしたが、やりたいと思ったことはとことんやって、たとえそれが何も生み出してないように見えたとしても、全く苦にならずに続けられます。

漫画を描くということも、とにかく楽しくて、暇さえあれば漫画のことを考えていて。夫にも「ずっとやっているけど休憩しないの?」って言われるぐらい、飽きることがないです。私の中にやりたいエネルギーがあって、ときにそれが仕事になっています。海外旅行のときは、旅ライターとして活動していました。なので、自分の「好き」にまっすぐに生きられることが長所かなと思っています。

『ただのぽんこつ母さんだと思っていたらADHDグレーでした。』(はちみつコミックエッセイ)より
『ただのぽんこつ母さんだと思っていたらADHDグレーでした。』(はちみつコミックエッセイ)より

失敗には対策がある

——考え方や行動を変えてから、どんなことが楽になりましたか?今でも「すべて悩みがなくなる」ということではないと思うのですが、悩んだり落ち込んだりしたときにどのように気持ちを切り替えていますか?

「失敗には対策がある」と思えたことが一番の変化です。今までは自分のことがわからなすぎて、ブレーキの壊れた暴走車を運転して、事故を起こして落ち込むことを繰り返すしかなく、そんな出口の見えないトンネルにいる気持ちでした。

でも、今は自分のことを客観的にたくさん知ることができました。そして自分を知れば知るほど、面白いと思えるようになりました。さらに、そのことを発信する中で、同じように悩む人に出会えて、その人たちとつながれたことで「私は一人ではない」と思えたし、発信することで人の役に立てているという充実感も生まれました。

もう一つ大きな変化として、夫も私のことをより理解してくれるようになったんです。そのおかげで、今までは失敗をしたことを恥ずかしいと思い隠したり、ごまかしたりしたい気持ちになっていたのですが、夫が笑いとばしてくれるので軽い気持ちで話せるようになりました。

今「やっちゃった…」と思うときは、誰かに話すか、ネタにして発信するか、好きな漫画を読んだり、甘いものを食べたりして、自分に優しくしています。発信すれば、客観的に自分を見られるようになって、落ち込んだり、悩み続けたりするのを防げます。そうやって、できるだけ自分に優しくし、明るく前向きに悩みに向き合うようにしています。

『ただのぽんこつ母さんだと思っていたらADHDグレーでした。』(はちみつコミックエッセイ)
『ただのぽんこつ母さんだと思っていたらADHDグレーでした。』(はちみつコミックエッセイ)

【プロフィール】
はなゆい

「笑う母には福来る」をテーマにクスッと笑えて時にウルっとする育児漫画をブログやSNSで投稿。家族の「笑い」と「感動」を漫画にしてます! (SNS総フォロワー数 約20万人)

■X(旧Twitter):@hanayuistudio

■Instagram:@yuihanada7

 

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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