姑・義母との関係に悩む人に、臨床心理士が伝えたい〈義実家との付き合い〉に役立つ3つのステップ

 姑・義母との関係に悩む人に、臨床心理士が伝えたい〈義実家との付き合い〉に役立つ3つのステップ
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南 舞
南 舞
2024-06-21

昔よりは良好な関係を維持できていると聞くことも増えたように思いますが、それでもなお難しさを感じる人が多いのが『義母(姑)』との関係ではないでしょうか。「お義母さん、苦手なんだよな」「義実家に帰省するのが嫌だ」と思う方へ。義母と上手に付き合っていくために役立つアプローチを、心理学の視点からお話します。

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苦手な義母との関わりを変えていくために必要なこと

義母との関わりを変化させていく上で大切なのは、『原因追及をしないこと』『簡単に変えられないものに執着しないこと』です。例えば、『あの時のあのやりとりがいけなかったんだ』と原因を探し当てたとしても、タイムマシンがない限り、その場面に戻ってやり直すことはできませんよね。また、相手や自分の性格や思考を根本から変えるというのもなかなか難しいでしょう。逆に、意識して欲しいことは、『解決思考に基づいて考えること』『わりと簡単に変えていけるものに着目すること』です。これは心理療法のひとつ、ブリーフセラピーに基づいた考え方で、過去ではなく今や未来に意識をむけること、また、比較的変えやすいとされる、【関係の持ち方】【コミュニケーション】に注目して、現実的かつ実践的な解決策を見つけていきます。このブリーフセラピーの考え方を用いて、義母との関係を変化させていくためのステップをご紹介しますね。

義母との関係を変えるための3つのステップ

その1:ゴールを設定する

まずは、義母とどのように関われるようになったら気持ちが楽になるか、自分の中にある理想をもとにゴールを設定しましょう。その時に気をつけるポイントは、【なるべく大きいものではなく、小さいものであること】【抽象的ではなく、具体的な行動にすること】【否定形ではなく肯定形で語ること】です。例えば、『週末の食事会で、一部でもいいからお義母さんと和やかな雰囲気になれるように話しかけてみる』といったような感じです。

その2:例外を探してみる

いつもは義母とうまくいかなかったり、折り合いが悪いとしても、『ある一瞬くらいはいい感じの雰囲気になった』ということはなかったでしょうか?ブリーフセラピーではそれを【例外】と呼びます。そして、それはすでに解決に近づいている状態とも言えるのです。まずはそうした例外がないかを思い浮かべてみましょう。そして、以下のように問いかけて、より明確にしてみることもおすすめです。

・義母といい雰囲気になったのはどんな時だったのか。

・どうやって、何がきっかけでその雰囲気になったのか。

・その時に自分はどのようなことをしていたのか。

・家族や周囲の人の行動で、いつもと違うことはなかったのか。

その3:実際に行動してみる、そして観察する

その1で決めたことを、まずは期間を決めて、継続的に行なってみましょう。そして、続けてみたことによってどのような変化があったか、あるいはあまり変化がなかったかを観察します。変化があった場合は、それが解決策に近づく適切な方法と捉えて、さらに続けていきましょう。また、変化について尋ねた時に『大きな変化はなかった。』と答える方が少なくないですが、大きな変化ではなくても、小さな変化が起きていることもありますので、よく思い出してみてくださいね。それでも小さな変化が見当たらなかった時は、少し対応を変えてみましょう。例えば、その1で決めた、食事会で義母と和やかな雰囲気になれなかったと感じていたとしたら、パートナーや周囲の人に『今日の私と義母の会話の様子、どうだった?』と聞いてみたり、あるいは義母との会話が膨らみそうな話題を事前に用意しておくのも良いと思います。

1から3までのステップを繰り返し行なってみましょう。困った時には、例外を探す、行動して観察し、小さな変化を見つけるということを思い出してみてくださいね。

それでもうまくいかないと感じる時は

義母との関係をよくするために、『行動してはみたけれど、やはりうまくいかない』『そこまでしても、義母といい関係になれると思えない』という方もいるでしょう。そう思うときは、『義母とうまくやろうとしない』と決めて、その心に従って振る舞いましょう。不思議なのですが、それによって逆に関係改善のヒントが見えたりすることも。この現象をブリーフセラピーでは【逆説的介入】と呼んだりしますが、これはいわゆる『押してダメなら引いてみな』の状態。押してダメな時って引いてみた方が意外と物事がすんなり運ぶって往々にしてありますよね。今日ご紹介した内容が、義母との関係に悩む方、あるいは周囲の人との関係で、似たような悩みを抱えている方のお役に立てれば幸いです。

【参考文献】

森俊夫・黒澤幸子(著)『〈森・黒沢のワークショップで学ぶ〉解決志向ブリーフセラピー』ほんの森出版(2002)

黒澤幸子(著)『ワークシートでブリーフセラピー(CD-ROM付き! )-学校ですぐ使える解決志向&外在化の発想と技法』ほんの森出版(2012)

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南 舞

南 舞

公認心理師 / 臨床心理士 / ヨガ講師 中学生の時に心理カウンセラーを志す。大学、大学院でカウンセリングを学び、2018年には国家資格「公認心理師」を取得。現在は学校や企業にてカウンセラーとして活動中。ヨガとの出会いは学生時代。カラダが自由になっていく感覚への心地よさ、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングの考え方と近いものを感じヨガの道へ。専門である臨床心理学(心理カウンセリング )・ヨガ・ウェルネスの3つの軸から、ウェルビーイング(幸福感)高めたり、もともと心の中に備わっているリソース(強み・できていること)を引き出していくお手伝いをしていきたいと日々活動中。



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