重篤な病気が隠れていることも。医師が教える「放置してはいけないあざ」の特徴とは?
ケガをしたときなど日常的によく見られるあざ。軽くぶつけただけなのに、気付いたら大きなあざができていた、といった場合などには注意が必要かもしれません。医師が解説します。
あざができる理由とは?
皮膚は上から表皮、真皮、皮下脂肪織の3層からできています。
表皮の基底層(最下層)にはメラニン色素という黒い色素を産生するメラノサイトという細胞があり、このメラノサイトが作るメラニンが多いと皮膚の色が黒くなります。
メラノサイトは、通常表皮に存在しますが、真皮にメラノサイトが存在する場合には、メラノサイトが作るメラニンのため、皮膚は青く見えます。
一般的に、メラニンが皮膚の深い部位に存在すれば存在するほど、皮膚は青く見え、皮膚の浅いところに存在すると茶色く見えます。
一方で、真皮や皮下脂肪織には血管があり、皮膚に栄養と酸素を供給しています。
血管には赤血球が流れており、赤血球に存在するヘモグロビン(赤い色素)のために、血液は赤く、また赤血球が増えると皮膚は赤く見えます。
赤アザは、皮膚に存在する血管が増えて、赤血球のもつヘモグロビンのために赤く見える皮膚病変です。
放置してはいけないあざとは?
ぶつけた覚えがないのに太ももなどに紫色の大きなあざができるようになった、軽くぶつけただけなのに、気付いたら大きなあざができていた、高熱が出て自宅で療養していたら手足に小さなあざがたくさん出現したなどの場合には、厳重な注意が必要です。
放置してはいけないあざのひとつに、急性骨髄性白血病が挙げられます。
急性骨髄性白血病は、幼稚な骨髄細胞が異常に増殖し、正常な造血機能が阻害される血液腫瘍であり、白血球減少・貧血・血小板減少などのさまざまな症状が現れます。
適切な治療が行われないと、感染症や出血によって命を脅かす重篤な病気です。
急性骨髄性白血病では、白血病細胞が増えることで正常な血液細胞が適切に作られず、赤血球・血小板・白血球の数が減少する結果、貧血による息切れ・動悸・血小板減少による鼻血・感染による発熱・歯茎からの出血などの症状が出現します。
貧血が進むと、脱力感・疲労感・蒼白(皮膚や粘膜の血色が失われる)が現れます。
急性骨髄性白血病では、血小板が極端に減少するため、あざ、鼻血、歯茎からの出血、そして脳や腹部の重大な出血が生じます。
白血病細胞は他の臓器に侵入することもあって、骨髄での増殖による骨痛・関節痛・肝臓・脾臓の腫れによる腹部の膨満感・腹痛が起きる場合もありますので、万が一にもあざだけでなく、これらの症状が同時に認める場合には、専門医療機関で早期の診断と治療が必要です。
また、放置してはいけないあざの原因疾患として、血友病が挙げられます。
血友病とは、出血を止める凝固因子が正常に働かない病気で、先天性(遺伝が関係する生まれつき)のものと後天性(遺伝は関係せず発症する)のものに分類されます。
主な症状は、出血症状や血が止まりにくい、あざができやすいなどが挙げられます。
出血しやすい部位は先天性と後天性で異なり、先天性の場合は主に関節内や筋肉内に出血が見られる一方で、後天性で関節内出血が見られるケースは稀といわれています。
まとめ
これまで、あざができる理由、放置してはいけないあざなどを中心に解説してきました。
あざとは、色素細胞の異常増殖による皮膚の変色をいいます。
ケガをしたときなど、日常的によく見られる症状であるために、軽く考えられがちな傾向にありますが、けがをしたり、どこかにぶつけたりした覚えがないのにもかかわらず、あざができやすい場合には、血友病など背景に思いもよらない原因があることも想定されます。
また、血液の細胞の基となる造血幹細胞に異常が生じ、がん化された血液細胞が生み出されるようになる病気である急性骨髄性白血病では、正常な血液の細胞がうまく作られなくなるため、血小板数が減少し、あざができやすくなりますので注意を要します。
心配であれば、血液内科など専門医療機関を受診して、相談しましょう。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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