「なかなか疲れがとれない」原因とは?薬剤師が教える、慢性疲労の原因と疲れをためない生活の工夫

 「なかなか疲れがとれない」原因とは?薬剤師が教える、慢性疲労の原因と疲れをためない生活の工夫
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朝スッキリと目覚めず、何となく疲労感が残ってしんどい、という経験はありませんか? 仕事に家庭に重い責任がのしかかる働き盛りの人は、毎日の生活でつい無理をしがちです。一過性の疲労で休養すれば回復できるなら問題はありませんが、原因となる病気が隠れているケースもあるため注意が必要です。この記事では、慢性疲労の原因と対処法を解説します。

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疲れが抜けないときに考えられる病気

「昨日深夜まで仕事をした」「急に激しい運動を行った」など、原因となる行動が明らかで一過性の疲労なら、十分に休養をとれば回復しますから心配はいりません。しかし、「何もしていないのに疲労感が残る」という場合、病院ではまず内科や内分泌の病気が潜んでいないかを検査します。

疲労感が出る病気には、甲状腺機能低下症、肝機能障害、貧血、心不全などがあげられます。それぞれの特徴は次の通りです。

甲状腺機能低下症

血液中に甲状腺ホルモン(体の成長や代謝に関係するホルモン)が欠乏する病気で女性に多い傾向がある。脈拍数が減る、体温が低くなる症状が出るほか、新陳代謝が低下するため、気力がなくなり何をするのもおっくうになる。

肝機能障害

肝臓は物質代謝の中心で、合成や解毒などの働きをする。自覚症状が出にくい“沈黙の臓器”だが、急性肝炎や肝硬変などが起こると体のだるさや食欲不振、発熱などがみられる。また、黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)、手のひらが赤くなるなどの症状がしばしば現われる。

貧血

赤血球またはヘモグロビン濃度が一定以下に下がった状態。鉄分の摂取不足や消化管出血などによる出血で起こる鉄欠乏性貧血、慢性感染症などが原因で起こる二次性貧血がある。疲労感とともに、顔色が悪い、めまいがするなどの症状が出る。

心不全

心臓の収縮力が低下し、血液の必要量を送り出せなくなった状態をいう。息切れや動悸、足のむくみ、胃のもたれ感、疲労感などの症状が起こる。

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「何もしていないのに疲労感が残る」という場合、甲状腺機能低下症、肝機能障害、貧血、心不全などの可能性も。photo by Adobe Stock

仮面うつ病の可能性も

上記のような病気が見つからない場合、もっとも多いのが、うつ状態に陥っているケースで、「仮面うつ病」などがあげられます。仮面うつ病とは、うつ病の一種でイライラや不安感など感情や気分の変調が仮面をかぶるように隠れてしまい、疲労感や不眠、肩こり、吐き気など身体的な症状が前面に出る病気です。

社会的な役割が重くなる30代から50代の人に多く見られます。うつ病による疲労感は精神神経科、または心療内科で抗うつ剤による治療などを行います。

慢性疲労症候群の疑いも

内科や精神科などの病気がないにもかかわらず、全身の強い疲労感が長期にわたって起こる場合、「慢性疲労症候群」と診断されるケースがあります。一般に、慢性疲労症候群は、激しい倦怠感(6カ月以上)に加えて微熱、のどの痛み、筋肉痛などの身体症状と、抑うつ、集中力の低下、不眠などの精神症状がみられます。

慢性疲労症候群は20~50代に起こり、女性に多いのが特徴です。発症にはウイルス感染や免疫異常、心身のトラブルなどが関係していると考えられています。治療は症状に応じた対症療法とともに、カウンセリングや生活指導などを行います。

アルコール依存症にも注意を

アルコール依存症は自分の意思で飲酒をコントロールできなくなる病気。アルコールの禁断症状として、全身の疲労感や手のふるえ、イライラ、不眠、不安感などの症状が起こります。仕事のうさばらしで暴飲暴食をするような人は要注意。

疲れをためない生活の工夫

  • 疲労の多くは精神的な緊張やストレスが原因で起こりますから、次のような生活を心がけ、予防・回復をはかりましょう。
     
  • 疲れているからといって、休日に家でゴロゴロしていたのでは疲れは回復しない。趣味やスポーツなどの時間をとり、精神的な緊張を解きほぐす。
     
  • 食べ過ぎに注意し、規則正しく、栄養バランスのとれた食事を摂る。
     
  • 1日1時間、体を動かす習慣を生活に取り入れる。運動不足の人が、突然ジョギングなどを始めるのは危険なので、まずはウォーキングを。胸を張り、上を向いて歩くように心がけると、精神的にも前向きになれる。
     
  • 疲れているときは無理をしない。NOという勇気を持つ。
     
  • アルコールの飲みすぎに注意する。仕事や人間関係の疲れを飲酒で解消しないこと。
     
  • どうしても休めないときはドリンク剤を活用するのも一案。朝は“カフェインが入った”もの、夜は“カフェインが入っていない”ものを飲むと疲労物質が分解され、疲れがとれる。

まとめ

一過性の疲労であれば、通常は一晩ゆっくり休養すればほとんどが解消できます。しかし、疲れが長期に及んだり、強く受けたりすると、一日程度の休養では回復できなくなります。

このような場合、内科や内分泌の病気、仮面うつ病、慢性疲労症候群などが潜んでいる可能性もあります。医療機関を受診し、疲労の原因となっている病気を特定することをおすすめします。

また、規則正しい生活、栄養バランスのとれた食事、適度な運動、ストレスの解消など生活習慣を整えることも疲労の解消につながります。

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AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



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