対人関係がうまくいかない人に伝えたい。心理師が教える、境界線を守り「健康的な人間関係」を築く方法
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自他の境界線とは、自分と他人を区別するために存在する物理的・心理的な境界線のことです。自他の境界線があることで、私たちはそれぞれの感情や欲求、アイデンティティなどを明確に分け、健康的に人との関係を築くことができます。今回は自他の境界線について紹介していきます。
自他の境界線とは?
自他の境界線とは、自分と他人区別するために存在する物理的・心理的な境界線のことです。他者に巻き込まれずに、主体性を持って自分を大切に生きるために、自他の境界線は欠かせないものです。
自他の境界線が引けないとどうなる?
自他の境界線が上手に引けないとさまざまな問題が生じる可能性があります。
自分の気持ちが分からなくなる
自分と他人の間に適切な境界線がない場合、自己と他者の区別が曖昧になり、人の気持ちに巻き込まれやすく、自分の気持ちが分からなくなります。これにより自分らしさや、何をしたいのか、何を欲しているのかニーズも不明確になり、精神的な不安定さや虚無感につながります。
人に依存しやすくなる
境界線が曖昧な状態では、他人の感情やニーズに過度に共感し、自分の気持ちやニーズを犠牲にして人に尽くしやすくなります。他人の困り事も自分の問題のように感じ、自己犠牲的になったり、罪悪感を抱いたりするでしょう。共依存の問題にも発展しやすくなります。
対人関係の問題が起きやすい
健康的な対人関係が築きづらくなります。適切な境界線がないと、コミュニケーションの誤解や摩擦が生じやすく、自分の思うように相手が行動しない等、些細なことでイライラしてしまったり、失望してしまったり、関係が不安定なものとなる可能性があります。
どのような関係性は自他の境界線が曖昧になりやすい?
自他の境界線は関係性によっても変化をします。例えば、友人とは適切な関係を築けても、恋人とは自他の境界線が曖昧になってしまう等です。
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家族関係
親子や兄弟姉妹など、近しい家族関係では、境界線が曖昧になりやすい傾向があります。
恋愛関係
恋愛関係では、相手との関係を深めるために自己の境界を柔軟にすることがありますが、適切なバランスが取れないと、両者の自由な意志や気持ちが侵害されたり、依存的な関係になったりするリスクがあります。
仕事上の関係
上司と部下など、仕事上の関係性でも自他の境界が曖昧になる可能性があります。例えば、上下関係が厳しい組織や機密性が高くプライバシーへの干渉が大きい組織などはリスクが高くなります。
自他の境界線を守る方法
どのような関係性でも、相手との関係を大切にする一方で、自分らしさや自分の意志、感情、ニーズ等を守るために、適切な境界線を維持することが大切です。適切な自他の境界線を守る方法をご提案します。
安心できる相手と関係を作る
現在、境界線が引けない事で悩んでいる場合、境界線を引く練習をするためには、安心できる相手との間で始めることが大切です。境界線をズカズカと侵入してくるような相手と練習しようとしてもうまくいきません。あなたの気持ちを大切にし、適切な距離を取ってくれる相手を探してみましょう。対人関係は同じようなパターンを繰り返す傾向があるので、あなたがなんとなく惹かれる相手ではなく、試しに今まであまり関わりがなかった人と話してみる事がおすすめです。
自分に関心を持つ
自他の境界線を引くためには、何が自分の気持ちなのか、何が自分のニーズなのか気づくことが必要です。自分自身に関心を持ち、よく自分を理解することで自己と他者の間に明確な境界線を見つけやすくなります。「これは私の気持ち」「これはあなたの気持ち」と主語を意識する事がポイントです。
自他の境界線をイメージしてみる
自他の境界線を頭の中でイメージしてみましょう。どのような材質でどのような太さでしょうか?コンクリートのような厚いもの、シールドのような透明なプラスチック、シャボン球のような薄い膜など、自分なりの境界線をイメージしましょう。筆者のイメージする自他の境界線はアニメ「エヴァンゲリオンのATフィールド」です。
必要なときには「NO」と断ること
自分のキャパシティの限界やストレスの度合いに意識を向け、「無理があるな」「ストレスが強いな」と感じたら、他人の要求に「NO」という勇気を持ちます。「NO」と言う事で肩の力が抜けたり、ほっとした気持ちになるのなら、無理をしていたという事でしょう。自分にお疲れ様を言いましょう。
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セルフケアをする
心身の健康を守るために、適切なセルフケアを実践することが重要です。自分を大切にすることで、他人とのバランスを保ちやすくなります。
インナーワークをする
ヨガやマインドフルネス瞑想などを通じて、自分自身の内側に目を向け、心の平静や内面のバランスを取り戻すことができます。これにより、自己と他者の境界線を感じやすくなります。
心理療法を受ける
必要に応じて、心理療法を受けることで、自他の関係性や境界線に関する深い理解を得ることができます。特に幼少期の影響が現在の対人関係パターンに影響を与えている場合は、一人で実践するよりも、専門家の支援を受けながら実践することがおすすめです。
今回紹介したようなさまざまな方法を試しながら適切な自他の境界線を見つけていきましょう。その道のりは人によってさまざまで、すぐにたどり着けるものではないかもしれません。少しずつ積み重ねながら自分なりの境界線を見つけていきましょう。
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