妊娠すると貧血になりやすいのはなぜ?貧血予防におすすめの食材&食べ方とは|管理栄養士が解説
以前は健康だったのに、妊娠すると貧血に悩まされるようになった…という人はいませんか?今は症状がない妊婦さんも、妊娠中は貧血になりやすいため注意が必要です。この記事では、妊娠中に貧血になる理由を解説します。あわせて妊娠中の貧血を防ぐポイントも紹介するので、妊婦さんはもちろん、これから妊娠を計画している人も参考にしてくださいね。
妊婦の貧血はなぜ起こる?
妊娠すると貧血になりやすいのは、血液の液体成分と赤血球のバランスが悪くなるためです。
母親のおなかにいる胎児は、さい帯(へその緒)を流れる血液を介して、母親から酸素や栄養をもらっています。胎児に酸素と栄養を供給するには、十分な量の血液が必要です。
また出産時の出血に備えるためにも、血液量を増やしておかなければなりません。妊娠すると血液量は増加し、妊娠後期には妊娠前の約1.4倍になるといわれています。
血液には液体である血漿(けっしょう)と、赤血球などの固形成分が含まれています。赤血球の役割は、体中に酸素を運ぶこと。妊娠すると、血液量を増やすために赤血球がたくさん作られます。しかし、赤血球以上に血漿が増加してしまうのです。
つまり妊娠すると血液は、液体ばかり多くて赤血球が少ない、薄まった状態になります。すると体へ十分な酸素が行き届かなくなるため、貧血症状が現れるでしょう。
妊娠前から鉄は不足しています!
妊娠中の貧血を防ぐには、赤血球のもとになる鉄をしっかり摂取する必要があります。
18〜64歳の女性が1日に摂取すべき鉄の推奨量は、6.5mgです。さらに妊娠初期では+2.5mg、妊娠中期・後期は+9.5mgもの鉄が必要であると考えられています。
ところが多くの女性は、6.5mgの摂取推奨量すら満たせていません。令和元年の国民健康・栄養調査では、20代女性の鉄の平均摂取量は6.2mg、30代では6.4mgと推奨量を下回っています。普段の食事でも足りていないので、妊娠中は意識的に鉄を摂る必要があるといえますね。
貧血予防におすすめの食材
鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があることを知っておきましょう。
鉄は体に吸収されにくい栄養素ですが、非ヘム鉄よりもヘム鉄のほうが吸収率が高いことがわかっています。ヘム鉄を多く含むのは牛の赤身肉、カツオやマグロなどの赤身の魚です。
ただしミナミマグロやクロマグロ、メバチマグロは摂取量に注意が必要です。これらの魚を妊娠中に食べ過ぎると、魚に蓄積された水銀による胎児への悪影響が懸念されます。1週間で食べる量は、ミナミマグロであれば80g、クロマグロとメバチマグロは40gまでにしておきましょう。
また、一般的に鉄が豊富とされるレバーにも気を付けましょう。鉄とともにレバーに多く含まれるビタミンAは、妊娠中に摂り過ぎると胎児に奇形が起こるリスクが高まります。鶏レバーであれば1日に食べるのは15g程度までにして、連日食べることのないようにしてください。
効率よく鉄を摂る食べ方
非ヘム鉄は小松菜やほうれん草などの野菜、豆腐・納豆・豆乳などの大豆製品、卵に多く含まれています。
非ヘム鉄自体の吸収率は高くありません。しかし、肉や魚などの動物性たんぱく質やビタミンCと一緒に摂取すると、非ヘム鉄の吸収率は高まることがわかっています。
また鉄は胃酸の分泌が多くなると、吸収されやすくなります。酢や柑橘の果汁を使った酸味のある料理を取り入れ、よく噛んで食べて、胃酸の分泌を促しましょう。
牛乳のたんぱく質から生成されるCCP(カゼインホスホペプチド)には、鉄の吸収を促進する作用があります。そのためクリームシチューやグラタンのように、牛乳を料理に使うとよいでしょう。鉄鍋や鉄のフライパン、鉄瓶など鉄製の調理器具の使用もおすすめです。
鉄不足を防ぐことは大切ですが、もっとも重要なのは、健康な赤ちゃんを産むために栄養バランスが整った食事を摂ることです。食事にさまざまな食材を取り入れるなかで、今回紹介した鉄が豊富な食品や、効率的に鉄を摂取する方法も意識してみてくださいね。
【参考文献】
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」
厚生労働省 e-ヘルスネット「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」
厚生労働省「これからママになるあなたへ」
田中宏和「妊婦の生理学」
AUTHOR
いしもとめぐみ
管理栄養士。国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。食が楽しくなるレシピを発信するほか、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
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