大きく変化する食生活。現代の日本人の食事に足りていないものとは?管理栄養士が考える

 大きく変化する食生活。現代の日本人の食事に足りていないものとは?管理栄養士が考える
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中村友也
中村友也
2024-02-20

近年、経済の発展や食の西洋化により日本人の食生活は大きく変化しており、便利な加工食品や外食の利用が増加しました。しかし、これらの変化は栄養バランスの偏りや食習慣の乱れをもたらし、健康への悪影響が懸念されています。 この記事では、日本人に足りていない栄養素に加え、食習慣や文化的に「日本人の食事に足りていないもの」を紹介します。

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日本人の食事に足りないもの

栄養バランス

加工食品や外食の利用などが増えたことをきっかけに、日本人の栄養バランスは偏ってきていると言われています。

そんな中でも、特に不足が懸念されている栄養素が以下の4つです。

・鉄

鉄は、特に女性や激しい運動をする方に不足しやすい栄養素です。

鉄が不足すると、酸素の供給量が減ることで集中力の低下や頭痛、食欲不振などの症状を引き起こすと言われています。

鉄は肉や魚、豆類や緑黄色野菜などに多く含まれています。

・カルシウム

カルシウムは、ほとんどの日本人が推奨されている摂取量を満たしていない栄養素です。

骨や歯を形成するだけではなく、血液の凝固や神経伝達など生命維持に不可欠なミネラルで、特に、成長期の子どもや、骨粗鬆症のリスクがある高齢の方などは積極的に摂取したい栄養素です。

カルシウムを多く含む食品は、乳製品、骨まで食べられる小魚、野菜などです。

・ビタミンD

ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨の健康維持のために必要な栄養素です。

ビタミンDを多く含む食品は魚介類やきのこ類ですが、それ以外の食品にはほとんど含まれておらず、これらの食品の摂取が少ない方はビタミンDが不足している可能性があります。

・食物繊維

食物繊維は、腸内環境の改善による便秘の解消や、免疫機能の改善などの効果を持っているため、普段から積極的に摂取したい栄養素です。

食物繊維は野菜やきのこ、海藻などに多く含まれていますが、肉や魚などにはほとんど含まれていないため、野菜類を食べる頻度が低い方は食物繊維が不足している可能性があります。

伝統的な食文化の継承

日本の食文化は世界でも高く評価されていますが、若い世代の間で伝統的な和食を食べる機会が減り、その伝統が失われつつあります。

また、これが栄養バランスの偏りにもつながっています。和食には、季節の野菜や魚を使用した栄養豊富なメニューが多く、これらの食材を日常的に取り入れることが健康維持には欠かせないため、伝統を守るという意味でも、健康的な食生活をするという意味でも、伝統的な食文化を継承することが必要です。

食を通じたコミュニケーションの不足

食事は、人と人とのコミュニケーションの重要な機会を担っています。

しかし、近年は家庭で食事をするタイミングが減っていることや、1人で食事をする孤食が増えていることなどから、コミュニケーションの不足が問題視されています。

これは、食事を共有することによる精神的な満足感の喪失や、伝統的な食文化の継承を妨げる原因となっており、社会問題の1つとして取り上げられることも多いです。

食育の不足

健康的な食生活を送るためには食に関する正しい知識が不可欠ですが、それらを育む食育が十分になされていないという問題もあります。学校などでは栄養バランスの重要性などの知識を普及させる取り組みが行われていますが、子どもが1人でご飯を食べる機会が増え、家庭での食育が行き届かないことも問題視されています。H2

食事はただ食べるものではない

食事は、ただ栄養を補給するだけの行為ではありません。

健康のために整った食事を摂り、伝統的な食文化を尊重・継承し、コミュニケーションや食育を行う場であることを意識することで、忙しい日本人が忘れてしまったものを思い出してみましょう。

まとめ

現代の日本人の食事に不足しているものについて紹介してきましたが、いかがでしたか?

忙しい毎日で意識できていないこともあったのではないでしょうか。食事という行為を楽しく健康的に続けるために、今回紹介した内容を思い返してもらえると嬉しいです。

参考:

日本人の食事摂取基準

国民・健康栄養調査

鉄 厚生労働省

カルシウム

ビタミンD

食物繊維

日本人の食事をめぐる状況と「健康な食事」のあり方

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AUTHOR

中村友也

中村友也

フリーランス管理栄養士。 私立大学の管理栄養士養成課程を卒業後、新卒で高度急性病院で栄養管理、栄養指導に従事。栄養指導件数は300件以上。その後独立しフリーランスへ。 現在は管理栄養士としての知識や経験を活かし、ライターとして健康、栄養ジャンルの記事を執筆。 また、自身の体験を元にしたブログの運営やコミュニティの代表も務めている。



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