「運動なし」「糖質制限」実はヒトの発達過程を無視したダイエット?「流行のダイエット」の落とし穴

 「運動なし」「糖質制限」実はヒトの発達過程を無視したダイエット?「流行のダイエット」の落とし穴
mikiko
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2023-03-28

ヒトの進化の過程をベースに身体の構造や代謝を考えると、「運動なし」や「糖質制限」といったダイエットが長期的な健康を無視した方法であるがことが分かります。ヒトの発達の観点から流行ダイエットのデメリットを見てみましょう。

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「運動なしでヤセる」「炭水化物を減らして即ヤセ」などは、注目を集めるためによく使われるフレーズです。運動嫌いな人にとっては、最高の方法にも聞こえますよね。幼少期から大学までスポーツをしていた筆者ですら、過去には「運動なしでヤセる選択肢があるなら、わざわざ運動してヤセる必要ないのでは?」と運動なしダイエットを選んでいました。

しかし、こうした“最新”ダイエットは、ヒトの進化の過程まで考えてデザインされておらず、短期間ヤセて満足するだけのためには代償が大きすぎる方法です。

毎日色々気にしながら頑張ってダイエットしているのに、「体力が落ちて疲れやすい」「身体の調子が悪い」「食べてないのにたるんできた」という悩みを抱えている人は、最新ダイエットのよくある誤解を解き、こうした方法のデメリットについて考えてみてください。

人類学的におかしい?「運動なしダイエット」

ヒトの進化の歴史をたどると、私たち人間は動くために身体を発達させてきたことが分かります。

例えば、身体の骨格。700万年前にチンパンジーの祖先から枝分かれしたヒトは、それからずっとよりよく動けるように身体の仕組みを変えていきました。数万年前には、私たちの先祖は「1日平均15キロ」歩いていたと言われています。長い距離を歩けるように足の形は進化し、直立二足歩行をするためにお尻背中の筋肉が発達しました。サルからヒトになる過程で起きた大きな身体の変化です。

足の進化
長い距離を歩けるように足の形は進化し、直立二足歩行をするためにお尻と背中の筋肉が発達した。

登ったり、走ったり、ジャンプしたり、投げたり、叩いたり、泳いだりと、様々な動作ができるように筋肉や骨が張り巡らされていきました。ヒトは動くようにデザインされたのだから、運動不足で身体に不調が出てくるのは当然のこと。現代人のお悩みであるお尻のたるみぽっこりお腹も、数百万年の時を超えて発達した身体が本来デザインされた形で使われなくなったから出てくる問題です。

それを食事だけで改善しようとするのは、全くの見当違い。一時的に脂肪が減ったとしても、運動不足で弱った筋肉は身体の悪い癖を作り、反り腰・猫背・肩こり・腰痛・坐骨神経痛などの長期的な問題を引き起こす原因になります。ふくらはぎや前ももに余分な筋肉がついてゴツく見えてしまうのも、こうした悪い癖や弱った筋肉が原因です。

流行ダイエットでは、「運動が面倒」「筋肉をつけたくない」という人々のニーズを利用して「運動なし」というキーワードが使われるのですが、運動なしで得た“理想の身体”など、長期的に見たら得るものよりも失うものの方が大きいのです。

人類学的におかしな「糖質制限ダイエット」

骨格だけでなく身体の内部のシステムを見ても、人は動くことで正常に機能する生き物だということが分かります。

つい数百年前まで、人間を1番死の危険にさらしていたのは飢餓でした。私たちアジア人は、稲作を覚え、家畜を育て、食糧を蓄えることを学んだわけですが、それでも天候や災害や戦争が起こるたびに食糧難に見舞われて多くの命を落としてきました。

この環境下で私たちの身体に必要だったのは「蓄える能力」。そう、私達の身体は生き残るために「蓄えるように」進化してきたんです。

現在のように餓死の心配がほぼなくなり、反対に「食べ過ぎで太る」「肥満が原因で死ぬ」なんてことが問題になったのは、たったここ数十年の話。人間の歴史から見れば一瞬で起こった出来事です。ヒトの身体はまだこの変化に対応していません。

運動の機会が減った私達が常に食べ物を手に入れられる環境で生きていると、代謝のシステムは乱れていきます。その1つが「糖代謝」という、糖を使う能力。

筋肉は「糖」を使うことで動きます。車で言うならば、糖は筋肉のガソリン。運動をすると筋肉や血液にある糖が使われますし、運動の機会が減ると糖の需要は減ります。
筋肉で糖を使う機会が少ないと、次第に糖を使う能力は衰えていきます。その結果、少しでも糖を摂取すると血糖が爆上がりするようになるのです。そして、高すぎる血糖値を急いで下げようと今度は身体がインスリンというホルモンを大放出するため、血糖は急降下します。こうした急上昇・急降下を繰り返すうちに代謝のシステムは乱れていくのです。

よく勘違いされているのですが、糖質を摂取することが悪いのではなく、身体が糖を上手に処理できないことが本質的な問題。糖質を制限するのではなく、質の良い糖質を取って運動で糖を使う機能を改善することで、代謝のシステムを正常に戻さなければいけません。

糖質制限ダイエットで短期間に体重だけ落ちたとしても、糖代謝は乱れたまま。続けていくうちに結果も出にくくなり、さらに長期的に続けると、食べてないのに蓄え始めるという悪循環に入ったり、炭水化物を食べ出した途端にリバウンドしてしまうようになります。

一度乱れたシステムを戻すのは大変。ブームの陰であまり話題にはなりませんが、糖質制限をきっかけに循環器系の疾患になったり血液検査の結果が悪くなったという話は現場でよく上がってきています。

ヒトの歴史を考えることの大切さ

人間の発達を無視した流行のダイエットでは、こうしたデメリットまで説明することはほぼありません。発信者がメリットしか見せてくれないからこそ、情報の受け手が自分で「デメリットは?」「長期的な影響は?」と考える視野を持つことが大切です。

情報が溢れてどれが自分にいいのか分からなくなってきている世の中だからこそ、与えられた情報ばかり追うのではなく、自分で立ち止まって考えるように心がけながら自分の正解を探していきましょうね。

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パーソナルトレーナー|自身の失敗経験を元に個人差や体質を重視した『mikiko式フィットネス論』を提唱|身体と人生観が変わるフィットネス哲学で、一生ブレないための視野と学びを発信しています|流行を根拠と本質で斬る人| 筑波大学健康増進学修士|NZベストトレーナー入賞



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