世界チャンピオンの座に3度輝いたサーファー、カリッサ・ムーアにとって「ヨガ」が必要な理由

 世界チャンピオンの座に3度輝いたサーファー、カリッサ・ムーアにとって「ヨガ」が必要な理由
Photo by yogahawaiimagazine.com

ハワイ生まれ、ハワイ育ちで、サーフィンの世界チャンピオンの座に3度も輝いたカリッサ・ムーア。彼女の側には常にヨガがあった。カリッサが語る、「サーファーにとってのヨガ」とは?

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ヨガに懐疑的な人にたいして、ヨガのすばらしさを説明しようとしたことがあるだろうか?あなた自身、ときどき、ヨガというものには本当にちゃんとした効果があるのだろうか、とか、一過性の流行に過ぎないのではないだろうかと、確信が持てなくなることがあるのではないだろうか?具体的にはそれぞれだと思うが、ヨガの効果を信じていない人に対する反論のためのちょっとした材料を以下で提供したい。あるいはあなた自身、自分でもう少し確信を持ちたいという場合にも、ハワイ生まれ、ハワイ育ちで、サーフィンの世界チャンピオンの座に3度も輝いたカリッサ・ムーアの証言を聞いてみるというのはどうだろうか?


カリッサが元気よく部屋に入ってきた。彼女のもつエネルギー、はつらつとした精神が、すぐに伝わってきた。彼女から笑顔が消えることは滅多にない。しかも、こちらもつられてほほえんでしまうような笑顔だ。その輝かしい成功の経歴にもかかわらず、彼女からは親しみやすいあたたかな雰囲気がにじみ出ている。カリッサは、今まさに誕生しつつある伝説レベルのサーファーだ。まだご存じない方のために書き添えると、彼女は25歳で、オアフ島出身。ここ20年間でもっとも注目を集めるようになったサーファーのひとりだ。彼女の謙虚さはきわだっている。人生において何が大事であるかということについて、彼女がじつによく理解しているということが、話すほどに、はっきりと伝わってくる。彼女は、ささやかなことを楽しみ、味わう時間をきちんと持てるように心がけており、人生にたいしてバランスのとれた態度でいることが分かる。一日の終わりには、彼女は愛情と幸福とを感じる。そして、そのことがコンテストでのどんな結果よりも大事なことだ、ということをよく知っているのだ。

サーフチャンピオン
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カリッサは、サーフィンを始めたころのことをほとんど覚えていないそうだ。ただ、小さいころ、外で遊ぶことが好きで、父親と一緒に楽しい時間を過ごしたことが出発点にあるという。彼女はごく自然な流れのなかでサーフィンをやり始め、しだいにコンテストなどにも出るようになった。競技としてのサーフィンのキャリアは2004年にスタートさせている。カリッサが群を抜いてトップグループに躍り出るまで長くはかからなかった。彼女が別格だということは、誰の目にもすぐに明らかとなった。カリッサは2011年のASP(世界プロサーフィン連盟)の世界ツアーで女性部門の最年少優勝者となった。だが、この優勝が彼女にとってたんなる助走に過ぎないことを知っているものは少なかった。彼女は進撃を続けた。2013年にも同大会でタイトルを勝ち取り、続けて――あたかもそれでは飽き足りないというかのように――2015年の大会で3度目の世界タイトルを勝ち取ったのだ。彼女がヨガの道に足を踏み入れたのは、いちばん最近のタイトルのために準備を進めている最中のことだった。

世界タイトルを目指している年に出会ったヨガ

「世界タイトルを目指している年にいつも、これまでやったことのないことを何かやらなければ、という気持ちがあるんですね」そうムーアは説明する。「それで、ヨガをルーティンに加えることになりました。私にとって、最初はそういうちょっとしたことだったんです」それ以来、ヨガは彼女に、個人的にも競技をやる上でも、大きな影響を与えることになった。


カリッサは、明るくおおらかな性格をしているが、だからといって彼女を軽く見てはいけない。彼女は、自分で決めた目標を達成するために信じられないくらいの努力を重ね続けてきた人間なのだ。彼女の毎日の日課には、厳しいトレーニングが含まれている。週7日サーフィンをするし、時には1日のうちに2回やることもある。海での時間に加えて、パーソナルトレーナーとともに、週に3〜4回、持久力、安定性、俊敏性、心肺能力、筋力などを強化するトレーニングを行っている。1年のうちの半分はツアーに出て過ごしているが、たいていの場合、毎朝6時までにはパドリングして沖へと出ていく。


一方で、こうしたきついトレーニングメニューをこなしつつ、カリッサ自身も、彼女のトレーナーもある必要性を感じていた。それは、水とつきあい、波を乗りこなすときに、体の力を最大限に、かつ効率よく引き出すことができるようにするため、最適なバランスを見つけださなければならない、という課題だった。「それが私の旅の始まりでした」彼女は、2015年にトップを目指して努力を重ねた日々を振り返った。ヨガが、柔軟性を高め、筋肉を伸ばし、ケガを予防するために、きわめて効果的な方法となった。


「というのも、私はあまり体が柔らかくないんです」とムーアは笑う。「でもヨガは楽しいです。とうとうヘッドスタンド(頭立ち)ができるようになったんです」


身体的な面での利益は、カリッサの場合、明らかだった。「あるマニューバ(波に乗っているときのひとつひとつの動き)から次のマニューバに移るときの身体の動き方がなめらかになりました。私はヨガのおかげだと思っています」と彼女は言う。カリッサはサーフィンをする人たちの間で最近ヨガの人気が高まってきていることにも気づいたという。そして、ヨガをやっているサーファーとやっていないサーファーの間に、彼女の目には明確な違いが見て取れることにも気づいた。

運動量の多いアスリートにとって効果のあるヨガの利点

身体的な側面以外にも、ヨガは――特に意識的に「呼吸をする技術」が――彼女のように運動量の多いアスリートにとって利点の多いツールとなった。彼女は、ヨガでやしなった鋭い感覚が、競技の最中にコンテスト自体からフォーカスを外すのに役立っていることに気づいた。「自分ではコントロールできないあるひとつのことにエネルギーを注ぎすぎるようになり始めたら、それは上手くいかなくなる前兆です」


大会の熱気のなかで、緊張から手をぎゅっと握ってしまうようなとき、ボードの上でただただ「今・ここに存在する」ことこそが何よりも重要だ、ということをカリッサは理解している。ヨガで積んだ修練が彼女の身について、いつでもその成果を利用できるようになった。「熱気の渦に気圧されてしまいそうなときには特に、この『ヨガ』というツールボックスに手を伸ばすようにしているんです。それがヨガで学んだ技のひとつです」

サーフィンとヨガ
Photo by Jason kenworthy

ムーアにとって、競技に占める身体的な要素は試合全体の10%程度に過ぎないという。残りの80〜90%を占めるのはメンタルな側面だ。彼女は気持ちを落ち着けるために呼吸を利用することを学び、そうして体と心のコネクションを形成していった。コンテストで競いあうなか訪れる挑戦の瞬間において、誘惑に負け、自分自身から気持ちをそらせてしまうことがある。そうすると弱さが生じてしまう。ムーアはそのことを率直に認める。 彼女は、毎瞬ごとにベストの自分でいるために、集中した状態を保つよう努力をしている。最高の瞬間というのは、「どんな結果であろうと受け入れられる」「私は自分にできる全てをなしたのだ」ということを知っているときのことをこそ言うのだ。そしてこれもまた、ヨガを通して彼女が学んだ智恵の一片であった。

競技前の狂ったような精神状態で行うアーサナとは?

競技前の狂ったような精神状態は、彼女にすべてのフローをするだけの時間を与えてくれることはめったにないが、ムーアはそれでも、海に入る前にいくつかのポーズをとってみることにしている。「私は、下向きの犬のポーズ、コブラのポーズ、戦士のポーズはかならずやることにしています」ムーアは言う。「そうすると体をあたためるのに確実に役に立つんです」
ムーアは1年の半分をツアーに出て過ごすという環境で育ったため、彼女の旅は、ヨガプラクティスも一緒にツアーに連れて行くという新しい展開を迎えることとなった。彼女のプラクティスは途切れることなく一貫しているため、今やチームのなかでフローをリードするほど。シンプルに太陽礼拝を通してやることで、体に中心軸が通り、地に足が根づいた状態を保つことができる。

 

サーフィン
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「これからどうなるのかわかりませんが、何をするようになるにしても、ヨガは人生の一部として続けていきたいです」カリッサは彼女のヨガの旅についてそう述べる。「結果は十分に目にしてきましたから」


カリッサは家にいるとき、コアパワーヨガのプラクティスをするのが好きだと言う。彼女曰く、安心してくつろげる感じ、自分が愛されており、受け入れられているという感じを得ることができるとのこと。カリッサの行きつけのスタジオは、祖母が近くに住んでいるカハラのスタジオ。祖母も同じ場所に通っている。いつの日か、彼女が自分のプラクティスを「オハナ・イベント」(家族行事)にまでしたとしたら、彼女が母親の隣でプラクティスしているところに出くわすかもしれない。


カリッサはまた、学校や地元のイベントで若い聴衆を前にして話す機会が多い。彼女は、さまざまなタイプの人々、わけても若い女性に言葉を届け、なにかヒントや刺激を与えられたら、と思っている。そのために、自分の能力を活用し続けたいと考えている。未来のことに目を向けると、カリッサは2017年12月に愛する人と結婚するというのでワクワクしているという。(インタビューは2017年秋)


サーフィンについては、彼女はこのスポーツの身体的なレベルを塗り替える準備ができている。「私はスポーツ心理学者と一緒にメンタルトレーニングをしたいと思っています。あるいは毎日、日記をつける時間を持つようにするとか、瞑想したり、明確なビジョンを持つ練習をしたり」彼女はそう言う。「それに、もっとヨガをする時間を取りたいですね。精神的に休息をとれるよう心がけたいです」


これからの彼女の活躍が楽しみだ。このヨギーニは注目すべき存在。間違いなく、もっともっと沢山のことを彼女から聞けるはずだ。

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Text by Alana Michele
Article from yogaHAWAIImagazine.com
Translated by Miyuki Hosoya



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