栄養素【桶の理論】知ってる?「不足栄養素を補う」ことが、体にとって大事な理由|管理栄養士が解説

 栄養素【桶の理論】知ってる?「不足栄養素を補う」ことが、体にとって大事な理由|管理栄養士が解説
illustration by 石松佑梨
石松佑梨
石松佑梨
2023-02-07

すべての栄養素は歯車のように相互作用しながら、身体を正常に動かしています。そのため不足する栄養素があると、バランスが崩れて代謝を悪化させてしまうのです。 タンパク質を構成する9種類の必須アミノ酸(体内で合成できないアミノ酸)は、水の入った桶の板に例えられます。桶に入っている水はタンパク質です。ひとつでも不足するアミノ酸があると、そこから水は流れ出てしまい、その高さまでしか水をためられません。つまり不足するアミノ酸の量でしか、タンパク質も合成できないのです。

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栄養素の桶の理論

5大栄養素とはタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルです。さらに、タンパク質を構成するアミノ酸は20種類、脂質を構成する脂肪酸は… と細分化されます。

これらの栄養素は歯車のように相互作用しながら、身体を正常に動かしています。そのため不足する栄養素があると、うまく機能できずに、代謝を悪化させてしまうのです。

アミノ酸 桶の理論
アミノ酸【桶の理論】
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タンパク質の利用効率は「水の入った桶」に例えられます。

20種類のアミノ酸は、ひとつでも欠けるとタンパク質を合成できません。このうち9種類の必須アミノ酸は体内で作れないため、食事から摂取する必要があるものです。この図では、必須アミノ酸を桶の板、中の水をタンパク質に見立てています。不足するアミノ酸があると、そこから水は流れ出てしまい、その高さまでしか水をためられません。つまり不足するアミノ酸の量でしか、タンパク質も合成できないのです。

一般的に、動物性タンパク質(肉、魚、卵、乳製品など)は左図、植物性タンパク質(米、野菜、果物など)は右図の状態です。大豆は植物性食品ですが、左図のような良質なタンパク質を含みます。効率的なタンパク質摂取には、アミノ酸のバランスが良い食品を選ぶことが大切です。またアミノ酸バランスの悪い食品は、不足するアミノ酸を補える食品と組み合わせることで、タンパク質の利用効率が高まります。

これは、タンパク質以外の栄養素にも共通する考え方です。

栄養が足りないとどうなるか?

不足する栄養素を補って栄養バランスが整うと、血流がよくなり、筋肉量が増え、排出力が高まります。いずれも基礎代謝を高めて、太りにくい身体へと導いてくれるものです。ところが何らかの栄養素が不足していて、栄養バランスが崩れていると、それらを得ることはできません。

たとえば、貧血改善には鉄不足ばかりが注目されますが、血液の材料は鉄だけではないのです。血液はおもに鉄とタンパク質から作られています。また血液を作る際にはビタミンB12や葉酸が必要です。

このような栄養素が十分満たされ、血行が改善されればエネルギー代謝は上がり、細胞の生まれ変わるスピードも速くなります。熱産生能力が上がれば慢性的な冷え性の改善にも繋がるでしょう。また新陳代謝がよくなると若々しく疲れにくい体を手にできます。さらにはホルモンがしっかり作用するようになるため、自律神経も整うでしょう。

もっとシンプルに!自分の心身を観察してみる

自分と向き合う
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では、あなたにはどのような栄養素が、どのぐらい不足しているのでしょうか? それを把握するのは簡単なことではありません。なぜなら一般的に不足しがちな栄養素が、あなたにも当てはまるとは限らないからです。人によって食べているものは異なりますし、たとえ食べているものが同じでも体質や生活習慣は異なりますので、それぞれに求められる栄養素は違います。だからといって、難しく考えすぎる必要はないのです。

たとえば「糖質を多く摂る人はビタミンB群の必要量が増える」という情報が入れば「私は甘いものが好きだから、ビタミンB群の摂取を増やしてみようかな…」とそのくらいの気持ちで試してみましょう。ビタミンB群の中でも、糖質のエネルギー代謝に必須となるビタミンB1は、玄米、豚肉、ゴマ、落花生などに多く含まれています。糖質の摂取量が多い人は、これらを積極的に摂るように心がけてみましょう。

重要なのは、その後です!

それで調子がよくなれば、その食事を続ければいいですし、自分に合わないと思えばやめればいいのです。ただし、自分に合うかどうかを判断するためには、自分の心と体の声に耳を傾けてあげることがとても大切になります。そうしないと、自分に合うか合わないかの判断ができないからです。

不足栄養素を補うことが、代謝アップの好循環につながる

コンディションがいい
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過不足なく栄養素が摂れていれば代謝はあがります。食べたものをしっかり「エネルギー」に変えられれば、もっとアクティブな毎日を過ごすことができるのです。また、体内で「タンパク質」を効率的に合成できるようになれば、筋肉や肌、髪などが若返るだけでなく、睡眠の質もよくなります。人によってはメンタル面での改善もみられるでしょう。

このように自分の心身が喜ぶ食事は、意外とシンプルなものかもしれません。自分に合う食スタイルを見つけることが、代謝アップの好循環に繋がっていくはずです。

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石松佑梨

石松佑梨

サッカー日本代表選手をはじめ、世界で活躍するトップアスリートたちの専属管理栄養士として従事。のべ2万人以上に提供してきた「頑張らない食トレ」を武器に、近年は企業の健康経営や地域創生も展開する。幼い頃から「おいしい」への執着心が人一倍強く、おいしく健康に食べるための「ずるい栄養学」で、誰もがおいしく食べて健康になれる社会を目指している。著書に『過去最高のコンディションが続く 最強のパーソナルカレー』(かんき出版)がある。



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