【実は誤解している人が多い!?】たんぱく質の正しい摂り方|元ボディビルダーの現役大学教授が解説

 【実は誤解している人が多い!?】たんぱく質の正しい摂り方|元ボディビルダーの現役大学教授が解説
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トレーニング、ダイエット、フレイル予防のカギとして、タンパク質に注目が集まっています。

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健康のために摂取したい【タンパク質】、正しく理解してる?

近年、トレーニングに励む方だけではなく、ダイエットやフレイル予防といった点からも、タンパク質に注目が集まっています。2021年にインターネット調査会社であるマイボスコム株式会社が10代〜70代へ行った調査によると、年齢・男女問わずタンパク質への意識が増加していることがわかります。しかしその一方、タンパク質について正しい知識を持っている方は意外にも少ないのです。

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タンパク質の基礎知識

タンパク質は、臓器・器官、皮膚、靭帯や腱、骨や軟骨、血管やリンパ管、髪や爪といった「身体の構造を作る」重要な構成成分であり、さらに以下のように、健康な生活を送る上で必須の機能があることが知られています(注1)。

・酵素として体内の化学反応を助ける
・ホルモンとして情報を伝達する
・免疫抗体として身体を守る
・物質を運搬・輸送する

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男性の体づくり・女性のダイエット・シニアのフレイル予防というように、目的が異なればタンパク質の必要な量や摂取のタイミング、また気を付けなければならないポイントが異なります。ここからは、それぞれの目的別のタンパク質の摂り方を解説します。

タンパク質の摂り方:男性の体づくり編

バランスの良い食事 

まずは、「食事バランスガイド」に従った食事を3食、朝昼晩と食べることが基本です。毎食、肉類、魚介類、卵類、大豆製品などの主菜を食べるようにすれば、よほどの高強度・長時間運動を行うアスリート以外、タンパク質が不足することはないでしょう。

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参考:農林水産省, 食事バランスガイド

タンパク質の目安量

1日に摂取したいタンパク質の目安は、1.4〜1.6g/kg体重/日です。レジスタンス運動(筋力トレーニング)をする人が1.62g/kg体重/日を超えるタンパク質を摂取しても、筋肉はそれ以上増加しないことが明らかとなったというデータ(注2)や、実際にはそれ未満でも不足しないとするデータも多くあります。

できるだけ精製されていない食品を

精製されていない食品には、代謝を助けるビタミンやミネラルに加え、食物繊維や抗酸化成分など、健康に寄与する多くの成分が含まれているためおすすめです。主菜を十分に摂取できない場合は、粉末のプロテイン、タンパク質を強化した菓子、飲料、ヨーグルトなどの食品を追加で1品入れるなどして活用するのは問題ありません。量としては、1食あたりタンパク質として10〜20gを目安に追加します。

※精製...原料や粗製品に手を加え、純良なものに作り上げること。また、不純物を除いて純度の高いものにすること。

レジスタンス運動(筋力トレーニング)を行う

タンパク質を必要量摂取すること以上に重要なのが、レジスタンス運動に代表される筋肉に負荷をかける運動です。これができていなければ、筋量が増加することはありません。筋肉に十分な刺激を与えても効果がない場合には、プロテインを補助的に取り入れるのもよいでしょう。ただし、1度に吸収できるタンパク質の量には限りがあるため、タンパク質15〜20gを目安に、1日2回程度、間食として摂取することがおすすめです。

タンパク質の摂り方:女性のダイエット編

エネルギー摂取量は脂質を減らすのが楽?!

健康的な体づくりを目指すものであり、過度なダイエットは厳禁です。ダイエットの基本は、エネルギー摂取量を減らし、エネルギー消費量を増やすことです。エネルギー摂取量は、炭水化物、脂質のどちらで減らしても効果があるため、体質、好み、普段の食習慣等により、何をどう減らすか決めるのが良いです。

ただ、日本人の場合、炭水化物の多い食品を好む人が多いので、脂質を減らす割合を多くした方が楽と感じる人が多いかもしれません。体重により、減らすべきエネルギー量は異なりますが、1週間に体重の1%以上減らすと筋肉を失うリスクが高まります。

そのため、体重50kgの方であれば、最大で1日500kcal程度を目安にエネルギー摂取量を減らすようにします。これで、週あたり0.5kg弱の体脂肪を減らすことができますが、現実的にはこの半分程度に抑えた方が、ダイエットを継続しやすいでしょう。

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タンパク質はやや増やし、レジスタンス運動を行う

炭水化物、脂質を減らす一方、タンパク質は減らすのではなくやや増やし、エネルギー摂取量の30%程度にします(注3)。そうしなければ、筋肉を失うことになるのです。筋肉を失うとスタイルを維持できなくなるだけでなく、代謝が低下し痩せにくい体質になってしまいます。しかし、これらの対応をしても、ダイエット時は筋肉の減少を完全に止めることはできません。

そこで重要なのが、レジスタンス運動です。ダイエット時にこれを行うことにより、筋量を維持できることが報告されています(注4)。

ダイエット時におすすめのタンパク質

ダイエット時には、エネルギー量の少ない食材を選択することが基本です。牛肉や豚肉はひれやもも、鶏肉はむね肉やささみといった脂の少ないものを選び、調理時には目に見える脂身や皮は取り除きます。ダイエット時はビタミンやミネラルが不足しがちになるので、レバーもおすすめです。

一方、魚の油は脂質酸化を高め体脂肪を減少させることが報告されています(注5)。従って、それほど食材の種類を気にする必要はありませんが、気になるようであれば脂質の少ない白身魚やまぐろの赤身を選択しましょう。また、いかやえびも脂質が少ないです。

加工食品では、練り製品、ノンオイルのツナ缶、サラダチキン、カテージチーズは、元々脂質が少ないのでこちらもおすすめ。しかしいずれも食塩の摂取増に繫がり、練り製品の場合は炭水化物の含量も多いため注意が必要です。卵、乳製品、大豆製品もよいタンパク質源ですが、脂質も多いです。そのため、卵は卵黄の摂取を控えて卵白を主体にする、乳製品は低脂肪にする、大豆製品は摂りすぎないようにするなどの工夫が必要になります。

世間では大豆プロテインの摂取がダイエットに良いといわれることがありますが、対象者により効果が異なり明確な結論は出ていません(注6)。

タンパク質の摂り方:シニアのフレイル予防編

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高齢者はよりタンパク質が必要

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、成人の体重1kgあたりのタンパク質の推奨量は、約0.9g/日です。一方、高齢者では少なくとも1.0g/kg体重/日以上のタンパク質を摂取することが望ましいとされています(注7)。

基本はバランスの良い3食の食事

健康なシニアであれば、「男性の体づくり編」と同様の考え方で、バランスの良い食事を3食、朝昼晩と食べることが基本です。また、フレイル予防に重要な筋肉の維持・増強のために、筋肉に負荷のかかる運動も必要となります。その場合は、タンパク質を1.4〜1.6g/kg体重/日程度まで増やすのがおすすめです。

量が食べられない方は捕食を活用

あまり量が食べられない方の場合、積極的に補食を利用することをおすすめします。液状やゲル状の食品の方が摂取しやすいため、タンパク質を強化した飲料、ゼリー、スープ、ヨーグルトなどを活用しましょう。

実は知らない?!タンパク質のアレコレ

植物性タンパク質と動物性タンパク質の違い

一般に植物性タンパク質は動物性タンパク質に比べ、消化吸収率が低く必須アミノ酸のバランスも悪いため、栄養価が低いとされます。タンパク質の摂取を目的として、植物性食品の中から選択するのであれば、大豆や大豆ミートがおすすめです。

多量摂取しない限り、健康への害は報告されていない

健常者では、タンパク質がエネルギー摂取量の35%未満であれば、腎機能を低下させることはないと調査によって明らかとなりました(注9)。タンパク質の摂取は、多い場合でもエネルギー摂取量の30%程度と考えられます。従って、少なくとも健常者では、極端な多量摂取をしない限り、タンパク質の摂りすぎによる腎臓への影響を気にする必要はないと考えられます。

実は知らない?!プロテインのアレコレ

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摂取しているだけでは筋肉はつかない

筋肥大に必要な強度・量のレジスタンス運動をしなければ、いくらプロテインを摂取しても筋肉はつきません。筋肉の代わりに体脂肪が蓄積することになります。単に体を動かす程度のレジスタンス運動では筋肥大しないため、適切な強度・量のレジスタンス運動を取り入れましょう。

プロテインの摂取に「ゴールデンタイム」はない

筋力UPを目的とした場合、高齢者など特定の限られた対象者では、レジスタンス運動直後のタンパク質摂取が良いとする研究結果があります(注8)。しかし、複数の研究結果を解析した信頼性の高い調査では、筋肥大や筋力増強と、摂取タイミングに関係性は認められませんでした(注2)。従って、「ゴールデンタイム」の一般化は間違いと考えられます。

プロテインの選び方

日本国内で通常プロテインとして利用されるのは、ホエイ、カゼインおよび大豆タンパク質ですが、どれが良いか明確に結論付けることは困難です。筋肥大や筋力増強を目的とした場合、プロテインの種類による違いは認められないという複数の報告があります(注10・11)。

どのプロテインメーカーが販売している製品も、原料となるプロテインは少数の特定の原料メーカーが製造するものであり、大差ありません。タンパク質あたりの価格の安いもの、または美味しいと感じられるものなど自身の好みで選んでも問題ないでしょう。

【参考文献】
(注1) 田村ら, イラストスポーツ栄養学, 東京数学社, 75-77, 2019. (注2) Morton RW et al. Br J Sports Med 52, 376–384, 2018. (注3) Abete I et al., Nutrition Reviews, 68, 214-231, 2010. (4) Dudgeon WD, J Strength Cond Res, 31,1353-1361, 2017. (注5) Couet C et al., Int J Obes Relat Metab Disord, 21, 637-643, 1997. (注6) Akhlaghi M et al., Adv Nutr, 8, 15705-15717, 2017. (注7) 厚生労働省, 「日本人の食事摂取基準」(2020年版), https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html (注8) Esmarck B et al., J Physiol, 535, 301-311, 2001. (注9) Van Elswyk ME et al, Adv Nutr,9, 404-418, 2018. (注10) Candow DG et al. Int J Sport Nutr Exerc Metab, 16, 233-244, 2006. (注11) Denysschen CA, J Int Soc Sports Nutr 6:8, 1-9, 2009.

教えてくれたのは…御堂 直樹教授

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東京医療保健大学 医療保健学部 医療栄養学科 教授。東北大博士(農学)/ NSCA-CSCS※。専門分野は食品機能学、食品学、食品加工学。※アメリカに本部を置く国際的な教育団体であるNSCA(National Strength and Conditioning Association 全米ストレングス&コンディショニング協会)が認定する資格の1つで、スポーツに携わるコーチや トレーナー向けの資格。

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Text by Chiaki Okochi

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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