「猫背の人は自尊感情が低い」その理由とは?臨床心理士が解説する【姿勢と心理状態】の深い関係性

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「猫背の人は自尊感情が低い」その理由とは?臨床心理士が解説する【姿勢と心理状態】の深い関係性

南 舞
南 舞
2022-05-30

ヨガをしていると、ほっとしたり、ポジティブな気持ちになったりと心が穏やかになるという経験をしたことがある人も多いと思います。それは一体なぜでしょうか。その理由はヨガによって作られる姿勢に影響しています。ヨガと姿勢がもたらす心への影響について、心理学の視点から紐解いていきましょう。

姿勢は自尊感情に影響する?

『受け身の姿勢』や『前向きの姿勢』など、その時の心の状態を表す表現として姿勢という言葉がよく使われますよね。その言葉の意味の通り、姿勢と心理状態が大きく関係することが様々な研究の中で明らかになっています。例えば、身体心理学者の山口創氏は、猫背の度合いが高い人ほど抑うつ度が高く、自尊感情が低いという結果を明らかにしました。また、アメリカの心理学者であるオレニナ氏たちの研究によれば、身体を縮めて小さくみせるポーズをとった人たちと、身体を伸ばして大きく見せるポーズをとった人たちとでは、後者の方が自尊感情が高くなるという結果に。これらの現象は【ジェームズ=ランゲ説】という理論で説明できます。この理論によれば、筋肉の緊張パターンが脳に伝わることによって、そのような体のパターンに一致した心が作られるそう。つまり、身体が緊張していれば心も緊張し、自分の心の中がうまく表現できず人との関わりに影響する、一方で身体がほどよくリラックスしていれば、自分の思っていることを表現しやすくしたり、それによって人との関わりも過度に緊張せずにすむということなのです。

ヨガは心の解放に影響する?

カナダの健康科学者・ウィルソンとペパーは、自分にとって良い姿勢は、認知機能に影響を与え、周囲の情報を理解する力を高め、それによって自尊感情やポジティブ感情を引き出すということを明らかにしています。良い姿勢の状態を作ることは、心の治癒効果も期待できるということなのです。精神分析という心理セラピーを研究していたウィルヘルム・ライヒが提唱した概念に【心の鎧】というものがあり、この理論によれば、人が悲しみや不安など心が傷つく出来事を経験すると、呼吸に関わる筋肉を緊張させることで、『息をつめる』反応をとり、ショッキングな出来事から心を守ろうとするというのです。筆者がヨガの指導をしている時に『体の中が優しい感じがして、涙が出てきた』といった体験をした人の話をきくことがあります。これは、ヨガというツールによって呼吸が深くなり、鎧のように硬くなった身体や浅い呼吸によって生まれるネガティブ感情に対して、ゆるみや快適さ、スペースが生まれるからなのかもしれませんね。

自分にとっての良い姿勢は、呼吸が教えてくれる

ヨガをする際に意識してもらいたいのが、鏡で見える自分の外側の姿勢ではなく、自分の内側から姿勢を見ようとすること。例えば、一見胸が開いて良い姿勢に見えていても、身体のどこかに力みを感じる、無理して呼吸している感じがするのであれば、それは胸が必要以上に開きすぎていて、自分にとって良い姿勢とは言えません。また、自分の内側の声を聞くというと難しく感じる人もいると思います。そんな時は【呼吸】に従ってみて。『呼吸がしやすいか、快適であるか』ということを意識しながらヨガの練習をしてみると、実は身体に負荷をかけすぎている、無理な姿勢をとっているということが分かるようになります。また、姿勢とは環境に適応するためにとっている行動です。ヨガによって自分にとっての良い姿勢が分かってくると、『自分の姿勢に影響するものは何なのか?』という気づきにもつながっていきます。もしかしたら、自分の置かれている環境がストレスになり、それによって身体や心を硬くし、姿勢にも影響が出ているのかもしれません。ヨガと姿勢の関係は大変奥深いものであり、そして1日にしてならず。定期的に練習を続け、呼吸がしやすい姿勢を探求していくことで、快適な心のあり方を見つけていきましょう。

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南 舞

南 舞

公認心理師 / 臨床心理士 / ヨガ講師 中学生の時に心理カウンセラーを志す。大学、大学院でカウンセリングを学び、2018年には国家資格「公認心理師」を取得。現在は学校や企業にてカウンセラーとして活動中。ヨガとの出会いは学生時代。カラダが自由になっていく感覚への心地よさ、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングの考え方と近いものを感じヨガの道へ。専門である臨床心理学(心理カウンセリング )・ヨガ・ウェルネスの3つの軸から、ウェルビーイング(幸福感)高めたり、もともと心の中に備わっているリソース(強み・できていること)を引き出していくお手伝いをしていきたいと日々活動中。

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