他人事じゃない強迫性障害|コロナ禍で"過剰な手洗い行動"に苦しんでいる人に伝えたいこと

 他人事じゃない強迫性障害|コロナ禍で"過剰な手洗い行動"に苦しんでいる人に伝えたいこと
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石上友梨
石上友梨
2022-01-11

長引くコロナ禍は私たちにさまざまな変化をもたらしました。感染予防のため手洗いを推奨されているため、今までより手を洗う回数が増えた人がほとんどだと思います。手洗いはもちろん必要なことです。しかし、1日に何度も長時間手洗いをすることで、日常生活に支障が出ている場合があります。今回は、コロナ禍における「強迫行動」についてお伝えします。

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強迫行動とは、不安な気持ちや不快感を打ち消すために何かの行動を繰り返すことです。

例えば、家を出る前に「ガスの火を消したかな?」「窓を閉めたかな?」と何度も確認してしまったり、家を出た後は「ドアを閉めたかな?」と不安になり、確認するために家に戻ってしまったりする行動のことです。私たちは誰しもが不安になり、何かを確認することがあります。しかし、強迫行動によって苦しみ、日常生活に支障が出ている場合は、「強迫性障害」と診断されます。

強迫性障害の症状は、「確認行動」だけではありません。「強迫観念」という、自分の意志とは無関係に頭に浮かんでくる「考え」にも苦しみます。そして、その考えを打ち消すために、「強迫行動」を繰り返してしまいます。頭の中では、おかしいな、やめたいなと思っていてもやめられないことが特徴です。

コロナ禍で増えた強迫行動

コロナ禍は、強迫性障害に悩む方の中でも、「手洗い」など洗浄に対する強迫を持っている人に与える影響が大きいと言われています。日本ではなく海外の研究ですが、394名の強迫性障害の患者さんにおこなった調査では、72%の人の強迫行動が増加したそうです。対象者の人数が多くないため追加の研究が必要だと思いますが、世界中の強迫性行為を持つ人が苦しんでいるかもしれません。コロナ禍では孤独を感じる人が増えています。人との繋がりが減ることで不安がつよくなり、強迫観念や強迫行動が増える可能性があります。

真面目な人や責任感が強い人ほど強迫行動に悩んでいる

強迫性障害は、脳の神経伝達物質のバランスの乱れが原因と言われています。神経伝達物質を自分でコントロールすることは困難なため、早めに医療機関を受診することがおすすめです。しかし、強迫行動に悩む人には、真面目な人、責任感が強い人が多く、人に頼らずに自分で何とかしようとする場合が多い印象を受けます。

「○○すべき」などの正論は、時に私たちを息苦しくさせます。「清潔にすべき」「汚れは落とすべき」など清潔感に関する考えや、「人に頼らず自分で対処すべき」「最後まで頑張るべき」など自分の在り方に関する考えはどれも最もなことです。これらは、正論であるが故に疑う余地がなく、それらを守ろうとするとキリがないため、際限がなくなって自分を追い込んでしまいます。

人間には限界があります。清潔さを目指してもきりがなく、頑張り続けてもどこがゴールか分からない場合がほとんどです。このような目に見えないものを追い求めていると、必ず限界が来て、あなたの心や身体がボロボロになってしまいます。

あなたやあなたの周りの人が苦しんでいたら

もし、あなたが苦しんでいるのだとしたら、あなたの周囲の人が苦しんでいるのだとしたら、できれば専門家や、少しでも安心や安全を感じる相手に話をしてみてください。それが難しい場合は、認知行動療法など強迫性障害に効果があるといわれている心理療法に取り組む方法があります。専門家のもとで実施することがオススメですが、現在は自分で取り組むワークブックが書店に並んでいます。まずは、そのような本を手に取ってもよいかもしれません。また、不安や不快感に対処するために、安心感を高めるようなリラクゼーション法のレパートリーを増やしてもよいでしょう。頭ではなく、身体で安心感を感じられるようになることは、必ず助けになります。ヨガや呼吸法などを通して、上がった肩が下がり、筋肉の緊張が解けて、「リラックスしている」という感覚に気づく練習をしてみてくださいね。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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