50代、慣れない飲食店でのアルバイト体験が教えてくれたヨガ的観点
私事ではあるが、短期間だけ、とあるレストランでバイトをさせていただいた。その時に体験した様々な出来事、しみじみ感じたことなどを、ヨガ的観点から見て行きたいと思う。
「強さは自分の内側にある」
私の仕事場は、ドイツにある和食レストラン。飲食店での経験がない私を「ドイツ語ができる」という理由だけで雇い入れてくださった。職務は朝のゴミ捨てから始まり、トイレ掃除、フロアの掃除がけ、モップがけ、テーブル拭き、テーブルのセッティングが一応のルーティン。店を開店させたら接客開始。その都度注文を取りにいき、配膳や片付けをおこない、暇を見つけて皿洗いをこなす。およそ40人ほどのキャパシティーがある店内の接客を平均3人でまわすのだが、店はいつも予約でいっぱい。ランチタイム終了の2時半ごろ、ヘトヘトになりながらディナー用のテーブルセッティングを開始。私の就業時間は週二回のランチタイムだけなのだが、毎日この業界で働く人のことを思うと、本当に心の底からすごいと思った。
子育てを終えた後とはいえ、様々なスポーツで体を鍛えた自信はあった。しかし自宅の掃除とは規模もやり方も違う故、思うように体が動かない。接客や片付けは得意だが、何しろメニューが多く、レジ打ちなどの細かい作業をすると思考が完全に停止する。目の前の一点に深く長く集中することは得意だが、複数作業を何個も、しかも素早くこなすことには慣れていない。要領が悪い。「更年期」という単語が頭の中をグルグル回る。それでも自分の長所や短所、向きや不向きをあらためて知ることにつながり、それが自分を客観的に見る事につながった。失敗することは怖くない。目の前の現実から目をそらして逃げず、できる事はとりあえず頑張ってみる。そうしているうちに上手くいくことも増え、私は少しずつ強くなっていった。
世の中は全てつながっている
一番苦労したことは、物覚えの悪さだ。メモを取っても、それを何度も見なおさなくてはいけない。一度覚えたつもりなのに、勘違いをしていたなんてことはザラだ。そんなに難しいことをしているわけではないのに、記憶力もなんだか曖昧。それを察してか、みなが辛抱強くいろいろと教えなおしてくれたり、助け船を出してくれる。店は若いチームで構成されていて、自分の子供と同い年の子もいる。落ち込んでいる時に手作りのお菓子を差し入れしてくれる目の前の優しい人に、私はどうしたら仕事で恩返しができるのかを考えていた。
この経験を通じて「歳をとること」の意味をまざまざと知り、悲しい気持ちになった。歳をとることはいい事ばかりではないな。生きていく上で人と関わる限り、迷惑かけずに生活するなどムリなのだと学んだ。と同時に、これから豊かに生きていくために、自分が得意とすることを今まで以上に頑張ることを決意した。その方が何より、精神的にも肉体的にも心地が良いから。そして何をするにも感謝のこころと謙虚な気持ちを忘れなければそれでいいのだと、一種「開き直り」にも似た気持ちが芽生えた。歳を重ねて良いことは、心臓に生える毛が増えることなのかもしれない。
何かやりたいことを見つけたら、思いきり挑戦してみることをみんなにおすすめしたい。もちろん無理は禁物だが、まずは何でもやってみるといいし、それが全てギフトとして自分の心の糧になる。強い自分も弱い自分にも敬意を表し、すべてありのままを許可しよう。自分に優しく接することができたなら、他人にも優しくなれる。そうすることで、あなたが本来持つ美しい魂が、もっと輝いていくことを信じている。
AUTHOR
キュンメルめぐみ
外資系企業勤務を経て、ストラスクライド・ビジネススクールにて経営学修士号(MBA)を取得。1999年独渡。現在はお茶ソムリエ・栄養士・ヨガインストラクターとしてカルチャースクールで教室を開催する傍ら、個人やスポーツ選手の栄養アドバイスなども行っている。日々のつぶやきをnoteで発信中。
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