沖縄の即席味噌汁「かちゅーゆー」がすごいんです|せきねめぐみの、肩の力を抜くごはん
SNSで見かける、彩り豊かな食事の写真。見るからに栄養がありそうで、こんな食生活を送ってみたいと思う人は多いでしょう。でも「そんなに頑張れない…」という人も少なくないはずです。時間もない、料理が得意じゃない、不器用なあなたに伝えたい「頑張らないごはん」。意識すべきポイントは、とってもシンプルです。今日からできる「簡単な食養生」、教えてくれるのはマクロビオティックマイスターの関根愛さんです。
秋も深まり、冬の気配を感じつつありますね。秋の季語でもある「神嘗祭(かんなめさい)」という、五穀豊穣の感謝祭が伊勢神宮で行われる頃です。これは「初穂」と呼ばれるその年最初の稲穂を天照大神にお供えし、実りの秋の感謝を伝えるという儀式。日々食べるものがあり、雨風をしのげる場所に住み、生きていけるということ。実りの秋に今改めて、身の回りのさまざまな「実り」に思いを馳せ、ありがとうで胸をいっぱいにして過ごしたいものですね。
さて、今日ご紹介したい料理は「かちゅーゆー」といいます。皆さん、聞いたことはありますか?これは昔からの琉球料理のひとつで、いわゆる即席お味噌汁のこと。「かちゅー」はかつお、「ゆー」はお湯。かつお節とお味噌を溶いたお湯、ということです。私がこの「かちゅーゆー」を知ったのは、琉球料理家の山本彩香さんの著書『にちにいまし』(本の題名は、似ているけどちょっと良い、という意味の琉球言葉だそうです)がきっかけでした。
沖縄の料理では、昔からかつおだしが頻繁に使われてきたそうです。なんでも沖縄の水は硬水とのことで、昆布からはあまり良い出汁を取ることができなかったとか。そのため沖縄で使う出汁といえばかつおだしということになったのだそうです。たしかに沖縄の有名な「ソーキそば」を思い出すと、かつおたっぷりの出汁の良い香りが今にも漂ってきますもんね。
どうしてこの時期に「かちゅーゆー」をおすすめするかというと、冷えやすい時期にとってもお手軽にお腹から温まることができ、しかも栄養満点のメニューだからです。かつお節とお味噌、あとは熱々のお湯さえあればものの1分ほどでできあがってしまうんですよ。これなら朝昼晩どんな時でも、目が回るくらい忙しい方でも嬉しいですね。
基本はお椀にかつお節と好きな味噌を入れて、ジャーっとお湯を注ぐだけ。これだけでも充分小腹が満たされるうえ、身体もポカポカになります。私はちょっとひと工夫していただくのが好きで、白すりごま、乾燥わかめか海苔、そして小さめの小魚(いりこやちりめんなど)を加えます。ごまの豊潤な香りがさらに食欲をそそりますし、海藻はミネラルだけでなく意外とビタミンCも豊富。小魚をプラスすることで栄養としても文句なしの一品ができあがります。
さらにオススメの変化球としては、お天気の良い日にきのこや人参、大根などで干し野菜を作ってストックおくことで、太陽エネルギーがたっぷり詰まった野菜もいっぺんに摂れてしまうスペシャルな「かちゅーゆー」にもできますし、ねり梅をひとさじ加えるか、梅干しを潰して入れ、梅風味にするのもまた良し。味噌と梅で疲れや不調を吹き飛ばす抜群の一品になります。
山本さんのおすすめは、あらかじめお味噌とかつお節を混ぜておいて冷蔵庫にストックしておく「かちゅーゆーの素」を作ることだそう。本当に心身疲弊してしまっているときは、お味噌やかつお節を別々に出してきてお碗に入れるだけの行為でもひと手間に感じてしまうものですが、「かちゅーゆーの素」ができあがっていればあとはお湯を沸かして注ぐだけ。まるで健康的なインスタントらーめんでも作るかのような手軽さです。
これから寒さが増してくる季節、海の幸と発酵の力を借り、沖縄の知恵を借り、即席お味噌汁「かちゅーゆー」で日頃から冷えない身体を作っていきましょう。
AUTHOR
関根愛
俳優を始めた十数年前よりアトピーなどさまざまな心身の不調を感じてきたことで、薬に頼るのをやめて自分の体の声を聴きながら養生していくために自然食を始める。「じぶんらしく生きるための食養生」をテーマにInstagramやnote、Youtubeで日々発信をつづける。マクロビオティックマイスター。映画制作者、ライター、翻訳者としても活動。座右の銘は「山動く」。
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