なぜ、かくれ繊細さんは人に頼めないのか?負のループを断ち切るために今すぐできること

Adobe Stock

なぜ、かくれ繊細さんは人に頼めないのか?負のループを断ち切るために今すぐできること

仕事をしていて、人に頼むのが良いと言われても、おいそれと頼むことができない方がいます。頼める人からしたら、「なんで頼めないの?頼んでしまったほうが圧倒的に楽だし、早いじゃない。」と思うのに。 「人に頼めない」「頼れない」それでキャパオーバーになってパンクしてしまう。この負のループを断ち切るためには、理由と突破する方法を知る必要があります。そして、この悩みは、かくれ繊細さんの持ち前の特性と切っても切れない構造を持っています。今回はかくれ繊細さんならではの「頼めない理由」を大きく3つ、お伝えしていこうと思います。

1:かくれ繊細さんはそもそも気になることが多い。だからもうこれ以上気になることを増やしたくない!

そもそもかくれ繊細さんが人に頼めない理由の一つ目は、HSPならではの生まれもった感受性の広さ、繊細さが理由です。

繊細な人は、普通は気にならず、スルーできることにこだわったり、気になったりします。この「こだわる」とか「気にする」ということは、頑張ったらやめられるという代物ではありません。そもそも持ち合わせて生まれてきた部分なので、生まれたときから自動的に気になってしまうものです。意思の力でやめることはできない。

気にしようと意識して気にしているのではなく、もう自然に自動的に目や耳から五感を通して脳内に伝わります。気にするのはやめようとしても、やめられませんし、むしろやめようとすると、前よりもっと「気にしなけばいいのに気になっている。そんな自分をダメだと意味付ける」のように、さらに気になることが増えてしまうのです。これは、HSPならではの生まれもった感受性の広さ、繊細さがゆえに起こる自然現象です。

こうした「気になることをどうにか、気にしないようにならないだろうか」とHSPは奮闘します。誰かに話したら、気にならなくなるのではないかと思って話すこともあると思います。気になっていることを周囲に話すと「え、まだそのこと気にしているの?」「もう気にしなくていいんじゃない」などと驚かれたり嫌がられたり、面倒がられてしまいます。なので、本当は気にしているのに「もう気にするのやめる」と気にしていないようにふるまうと思いますが、心にはひっかかったまま、気になったまま滞留していくのです。

人に頼む、という行為ができない理由は、この先天的な特性が大きな理由のひとつだと考えられます。

ただでさえ気になることが人より多いのに、人に頼むことで頼んだ仕事の仕上がりや納期、頼んだことで気を悪くしていないか、など気になることを増やすことになります。「人に頼む」と、気になることが増える。それで「頼む」のはわずらわしいと感じます。「メリットもあるんだろうけど、わずらわしいのよね」と。

ちょっと頑張ったら自分ができること。ならば、わざわざわずらわしい思いをしてまで頼むまでもない。自分だけで処理してしまえば、人に頼んで気になることを増やすわずらわしさは発生しないわけですから。

さらに、他にもかくれ繊細さんが頼めない、頼らない関連の理由が出てきます。

HSPの持つ4要素(DOES)(*注)の「D=深く処理する」が、頼めない、頼れないという現象に深く関与しています。HSPは「深く処理する」という自動的な反応を持ち合わせていることによって、気になることひとつひとつを深く内面で処理します。

気になることが深く処理されるので、気になることが増えれば増えるほど、内面処理が膨大化し、ややこしさを増加させて、処理キャパシティを圧倒していきます。気になることが1から2に増えたとしたら、内面処理は倍々に増えるイメージです。そのように気になることが深く処理されて処理できない量になることで、処理しきれないことにパニックになったり、茫然としたり、ひたすら絶望を感じたりします。その仕事自体を放り出したくなり、追い込まれます。

でも、仕事ですから簡単に放り出すことはできません。

放り出すとしても、そこにはありとあらゆる「手続き」が求められます。手続きを踏んでそれを放り出すというややこしさを考えただけで、脳内がさらにパニックになり、お手上げ状態になります。こうなるともう、逃げ出したいのを、必死に抑え込んでいる状態だと思います。

このように、かくれ繊細さんは自分の内面の膨大な動きを他者に察されることのないように押し殺しながら、まんじりとした状態のまま「人に頼まないで実行」を継続していると言えます。

そんな経緯を自分の中で一周経て、その結果、誰にも頼まずにひとりでやることにしていると言えるのではないか、と推察しています。

このような生まれながらの気質を抱えて踏ん張っているのですから、気になることは増やしたくないし、人に頼みたくない、と思うのはむしろ妥当である気がします。

かくれ繊細さんは、これらの持って生まれた特性のS(気になること)とD(深い処理)が理由で、人に頼むのがそもそもなんだか苦手なのではないかと思うんです。

*注:HSPの持つ4要素(DOES)

D:深く処理する

O:感情反応が大きい

E:共感性

S:細かいことに気づく

2:かくれ繊細さんがこの世で最も見たくないものは「人の顔色が曇る瞬間」、だから頼めない

さらに、人に頼めない理由の二つ目は、HSPがこの世で最も見たくないもののせいではないかと考えられます。HSPがこの世で最も見たくないもの、それは「他人の顔色が曇る瞬間」です。人に頼む行為こそ、最も他人の顔色を曇らせる可能性が高い行いだから避けたいと思うのかもしれません。

人にものごとを頼む時は、相手の時間を奪ったり、相手の既にある予定を調整してもらう必要があったりします。またさらに、頼みづらいことを頼む際には、相手の機嫌の良し悪しを伺う必要があり、より相手の顔色を見なければならなくなり、刺激的であることは間違いありません。

繊細な人は、普通よりも他人の表情にこだわるという研究データがあります。他人がどんな表情をしているかを無意識に読み取っており、そして周囲の人たちの表情がにこやかであることを希求していることがわかっています。

だから、人の顔色を曇らせる事に強い抵抗を持つことが、人に頼みたくない理由としてあげられるわけですが、ここにさらに、もうひとつやっかいな特性が潜んでいます。

▶「人に頼む」と公平性、利害関係、損得勘定が絡んでくる。かくれ繊細さんはここにこだわる傾向がある。

人に頼む、という行為は、他者との単純な関わりにとどまらず、人同士の利害関係に踏み込むことも多い行為です。

人との利害関係に関して、かくれ繊細さんはかなり明確なラインを持っています。踏み込まれるのも、踏み込むのも良しとしないのです。

一見大らかで、何事にも気にならないようにふるまうかくれ繊細さんのイメージと、この利害関係へのこだわりは意外な組み合わせのように感じるかもしれませんが、時間、お金、労力、褒賞、すべてに公平であることを望みます。それらが自分の労力と見合わない場合、とてもカチンときます。公平で平等であるべきだし、自分の労力に見合った報酬、賞賛があるべき。つまり褒められたいし、労われたいし、認められたいし、対価を支払われるべきだと願っているのです。それが叶わないとき「もういい!」と腹を立ててしまうようなところがあるのです。

さらに、かくれ繊細さんを複雑にしているのは、腹の中で不公平感に腹を立て続けているにも関わらず、そのことを一切見せない点です。「公平性大事、平等であるべき。でも、世の中はそんな不条理に満ちたものよね」といった表面的な寛大さを持ってふるまいつづけていくようなところがあるので、周囲にはその内心の「ささくれ立ち」を気づかれることなく自分の中でジクジクさせてしまいます。この内面のジクジクした不快感を表す言葉は、表に出したら最後。嫌われるばかりか、やっかいな人扱いされるので、不平等にかなりカチンときていることを表に出さないように見せ続けています。

中には、顔に出てしまう、態度に出てしまう、という方もいらっしゃいますが、大多数のかくれ繊細さんはここを隠蔽しつつカチンときています。

「強い承認欲求」を隠し持っているのですが、このあたりのモヤモヤはご自身でも気づきづらい感情の一つです。

つまり、「人に頼むこと」は、表面上、他人の不機嫌な表情を見たくない、という理由ですが、さらに踏み込むと、他人との利害関係を公平に保つことが難しくなり、隠し持った承認欲求がちらつくが取り扱いがうまくできないもどかしさを伴う「とてつもなく不快な行為」なのだと言えそうです。

これが、「頼めない」「頼れない」ふたつめの理由ではないかと思います。

とはいえ、後天的学習によって人に頼めるようになったかくれ繊細さんたちもいらっしゃいます。頼めるようになった方と対照的に、人に頼めなくなってしまったかくれ繊細さんたちはなぜ、頼めないままなのでしょうか?

3:これまで頼んでろくな目に合わなかったから頼めない

これまで人に頼んで、ろくな目にあわなかった方は、「頼むわずらわしさ」が「頼むメリット」を上回り続けているからではないかと思われます。

後天的学習で人に頼めるようになった人たちは、頼んで良い結果を得られた。そこで味をしめたのです。が、頼めないままの人の場合は、頼んでも良い結果を得る事ができなかったのかもしれません。

誰にでも、人に頼んだものの、あがってきたもののレベルが思った以上に低くて驚き、がっかりしたことはあるのではないでしょうか。センスが悪かったり、出来上がったものに過不足があったり、間違いがあったり。そういうものを自信満々に持ち込まれたとき、「どういったらいいんだろう?」と途方にくれることは誰にもあります。

特に、かくれ繊細さんは仕上がったものに異を唱える、意見を言うことや、人の間違いを指摘する事が苦手です。なぜなら、「誰か他人の要望」が先にあって、その要望に自分を合わせていくというやり方をし続けてきた人たちだからです。他人が望んでいることをサッと察して、なにも言われないうちに叶える。そのやり方で、一定の評価を得て自分の立ち位置を獲得してきた人たちなのです。その「察する・叶える」やり方で社会に適応しています。

ところが、人に頼む段になると、その、これまでの成功法はまったく使えなくなります。

「この人は、こうしてほしいんだな」と先読みして、それを叶える側ではなくなるためです。頼む側(かくれ繊細さん)が「こうしてほしい」と最初に要望を出さなければならず、察して叶える方法を使うことができなくなります。

とはいえ、かくれ繊細さんがまったく意見を持っていないわけではありません。いえ、むしろどちらかというと、強い意見をお持ちです。だからそれを最初から出せばよいのですが、そこには高いハードルがあります。頼むときに、自分の意見を伝えればよいのですが、残念ながらかくれ繊細さんの意見は、一般的な意見とズレがあります。これは、生まれながらに感じ方や共感性の度合いが強いために生まれる「独特の観点」で、うまくつかえば「独創性」という言葉で言い表せるような能力として認められます。ですが、独創的すぎて引かれてしまうことも多いのが難点、欠点なのです。

この「ズレ」があることを、かくれ繊細さんたちもわかっています。わかっているから、この独創的な観点を隠すことで「普通であろう」としています。

普通であろうとするのは、その独創性を周囲から異物扱いされた過去が原因です。

学生時代、特に小学5年生〜中学時代に、その独創性による「空回り」「孤立」あるいは「いじめ」などを経験したことのあるかくれ繊細さんは多くいらっしゃいます。基本的に繊細なので自分が孤立したこと、いじめにあったことを、普通以上に強く自分の「傷」として刻み込んでしまいます。さらには、つらい出来事であったにも関わらず、「自分はそんなことに傷ついてはいないよ」という見せ方をしつづける(外にバレたくないという気持ちもとても強い)ため、周囲に気づかれないように心の奥深くに隠蔽されつづけてきてしまっていることは、まったく珍しいことではありません。

そのようにして、周囲から浮くのを恐れるがあまり、自分の意見を言う事ができなくなってしまうのです。

こんなに自分の独創的着眼点を隠して普通であろうと頑張っている。なのに、人に頼んで、仕上がったものに異を唱えたり、意見を言ったり、人の間違いを指摘してしまったら、自分が人と違う意見を持っていることがバレるかもしれません。

そんなことをしたら、かつて味わった「独創性」を表したときの苦痛をまた、味合わなければならないかもしれない。ならば自分の意見など言わなくても良い。

こんな風に決めつけるのは極端だ、と思うかもしれませんが、ゼロか100かを選びがちな傾向も持っていますから、「人に頼むのはなんだか苦痛。だったらぜんぶ自分でやる」のように、周囲の人が「え?」と思うような選択をする思考回路を持ちやすいのです。

3つめの「頼めない理由」は、「自分の意見を言うのが怖いためかもしれない」でした。

ここまで3つの理由をお話してきました。こんなにずらずらと理由があると、人に頼めなくても仕方ないかもしれないですよね。

「その理由のせいにしたくない」というルールが、「頼めない」克服の足かせになっている

最後にもうひとつ、この文章を読んで理由に納得したとしても、あなたがかくれ繊細さんなら、こう思うかもしれません。

「たとえ、そのような明確な理由があったとしても、私が頼めないのは私の責任であって、過去のせいにしてはいけない」と。

「ああそうか。だから、私は人にものが頼めないのか」「この理由のせいにしてもよいのか、なーんだ」とは簡単に問屋が卸さない。

それは、かくれ繊細さんの高潔さからくるのでしょう。「なにか他のもののせいにすべきではない」という強いマイルールを作り、それを死守したいと頑張ることで、潔く生きている方たちが多いと感じます。

もちろん、そのルールは、とても素敵です。たやすく人のせいにしている人たちをよしとしない気持ちは、強く共感できます。もし、頼めないことで行き詰りを感じており、それを打破しようと思われているのならば、「人にのせいにすべきではない」「過去の出来事を理由に甘えてはいけない」という強い信念に向き合うことから、あなたの生き方が変わるかもしれません。

ここではまず、「頼めない理由」を知り、そのことで「ならば仕方ないのかもしれない」とふんわりと感じていただけたら、ひとまず良いスタートダッシュが切れたと思います。

AUTHOR

時田ひさ子

時田ひさ子

HSS/HSP専門カウンセラー。繊細で凹みやすいが同時に好奇心旺盛で新しいものへの探求欲が旺盛なHSS型HSPへのカウンセリングをのべ5000時間実施。講座受講生からのメール、LINEのやりとりは月100時間以上。著書に『その生きづらさ、「かくれ繊細さん」かもしれません』(フォレスト出版、2020年)がある。

RELATED関連記事

facebook

Yoga Journal Onlineをフォロー

Facebookページでいいね!する