「私が本当に欲しいものは手に入らない…」その諦め思考、自己犠牲が原因かも?臨床心理士に聞く対処法
前回から自己犠牲への対処法についてお伝えしています。前回の記事では、まず「自己犠牲してしまう場面をリスト化してパターンに気づくこと」、そして、「自己犠牲のルーツを探すこと」「怒りや罪悪感の感情に気づくこと」をお話しました。パターンを変えるためには、自分自身が繰り返すパターンにしっかりと気づき、受け入れることが大切です。私たちは気づいていないもの、認めていないものは変えることができないからです。
自己犠牲的なパターンを持っている人の周りには、自分の欲求や要求を押し付ける人が集まりやすくなります。もしかしたら、なんでも思い通りにしようという、あなたの想いを大切にしない恋人ばかり選んでしまう人もいるでしょう。自己犠牲を繰り返すあまりに、自分が本当に欲しいものは手に入らないと諦めてしまっていませんか?私たちは本来、みんな平等に同じ権利を持っています。そして、私たちは、自ら変化する力があります。奇跡が起きて、全部解決することを望んでいても、それがいつになるのか分かりません。生きづらさを感じているのなら、自分の自己犠牲的なパターンに目を向け、変化するために自ら少しずつ取り組んでいきましょう。
自分の好きな物に気づく
今まで自分の欲求を抑えてきた方は、安全だと思えるところから少しずつ自分の気持ちに目を向けてみましょう。あなたは、どのような物や活動が好きでしょうか。嬉しさ、楽しさ、心地よさ、幸福や満足感など、自分の気持ちが動くのはどのような時でしょうか。はじめは上手に感じられないかもしれません。少しでも心が動くもの、少しでも「悪くない」と思える物を探してみましょう。例えば、好きな紅茶を飲む、好きな音楽を聴くなど、自分の想いを大切にした行動を取ってみましょう。
自分の意見を考える
自己犠牲してしまう場面で、自分の想いに従った場合は、どのような意見を伝えてみたいでしょうか。例えば、職場で会議資料の作成をお願いされた時に、「今日は残業できるし大丈夫」「資料作成の勉強になる」等、仕事を受けることを正当化せずに、「本来の担当は私ではない」「疲れているから残業したくない」という想いがあるなら、どのように伝えてみたいでしょうか。資料をギリギリまで作らない等、受動的な攻撃で不満を主張するのではなく、きちんと自己主張する場合は、どのような意見になるのでしょうか。実際に主張するかは置いておいて、まずはセリフを考えましょう。そして、ハードルが低く、やりやすい事から自己主張の練習をしましょう。
他者に手助けを求める練習をする
自己犠牲的に何でも自分でやってしまい、他者に手助けを求めることが苦手な場合は、手助けをお願いする練習をしてみましょう。相手に申し訳ない感じがするかもしれませんが、あなたのお願いを「受ける」「断る」など、行動を選択する権利は相手が持っているものです。あなたが聞いてみること自体に罪悪感を抱く必要はありません。相手のタイミングを見て声をかけ、もちろん相手がどちらの選択肢を選んだとしても受け入れましょう。はじめは、短時間で済むような手助け等、相手の負担が少ないもので練習してみましょう。
怒りを少しずつ表現する
理不尽なこと、無理があることを要求された時に、怒りを感じることは当然です。どのような感情を感じようが、あなたの自由です。しかし、怒りの表現方法には工夫が必要です。私たちは、怒りを感じる場面で困っている場合が多いです。そのため、怒りを「困りごと」に変換して伝えてみても良いでしょう。例えば、「そのお願いは難しくて、困ってしまいます」と伝えてみます。または、客観的な事実のみ「現在急ぎの仕事を抱えています」と伝えても良いでしょう。
あなたが自分の想いを主張した際に、お互いの想いを認め合い、お互いの意見をすり合わせて現実的な解決策を検討できると良いでしょう。しかし、あなたが自己主張しても、あなたの想いを認めずに無視する人がいるかもしれません。もし、相手が繰り返しあなたの欲求や望みを無視する場合には、相手との関係について考えることも必要でしょう。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
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