ホロコーストの経験が原点に|世界のオーガニックシーンを牽引するドクターブロナーが製品に込めた思い

 ホロコーストの経験が原点に|世界のオーガニックシーンを牽引するドクターブロナーが製品に込めた思い
ドクターブロナー
横山正美
横山正美
2021-05-12

美しくなることは、地球に優しいことーこれからの時代に必要なのはそんなポリシーだ。日々目まぐるしく変化する環境や世界情勢の中で、ビューティーに対するこれまでの価値観が大きく揺さぶられている現在。独自の美を創造することにいち早く乗り出した先駆者たちに聞く、ビューティービジネスと環境への取り組みとは。

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ナチュラルソープのジャンルでは、常にアメリカでトップのセールスを記録し、今では世界中でファンを獲得しているロングセラーアイテム「マジックソープ」。その歴史は長く、遡ること1948年にエマニュエル・ブロナーが作り上げた一つの100%ナチュラル&オーガニックなソープから始まった。しかし、「マジックソープ」が、世代から世代に受け継がれ、21世紀に入ってもなおロングセラーたり得る所以は一体どこにあるのか?その秘密と、ソープに込められた彼の深い哲学について、マーケティング・PR担当の上山 愛さんにお話を伺った。

石けんに込められた、世界平和への思い

ーードクターブロナーは「マジックソープ」が有名ですが、現在は一歩先を行く新たな農法に注目するなど、世界のオーガニックシーンをリードする存在となっています。ブランドを設立した当初から化粧品を通じて訴えたかったこととは何でしょうか?

ドクターブロナーがブランドとして成り立った経緯はとてもユニークで、創設者エマニュエル・ブロナーが世界平和への思いを広めたいということから始まりました。1858年からドイツのユダヤ人街でソープメーカーを経営していたハイルブロナー家に生まれた彼は、ドイツで学んだ後、アメリカで石けんメーカーの化学者として働いていましたが、その最中に第二次世界大戦が勃発し、不幸な事にあのホロコーストで家族を失ってしまいました。

ドクター・ブロナー
「ドクターブロナー」の創設者エマニュエル・ブロナー

ですが、彼はこの悲劇からある1つの哲学に辿り着きます。それは現在のドクターブロナーの企業理念でもある「オールワンビジョン」——世界平和と宗教や民族の差別のない結束を唱え、地球に生きる全ての生き物や植物、地球自体もピースフルにいられる世界を目指すと言うものでした。1948年の会社設立から受け継がれるこの理念は、今もあらゆる企業活動の根幹になっており、ブランドとして品質の良い製品を提供することはもちろん、石けんで世界を変えることを目指して、様々な社会貢献活動に取り組んでいます。

“あるがままの自然”を模範にした農業で作られた原料

ーーブランドとして唯一成分的もしくは製造過程的な面から環境に配慮している点は何でしょうか?

ドクターブロナーは1948年から植物性のソープを作り続けています。創設当初は、一般的には多くの石けんは動物性油で作られていたため、ドクターブロナーはナチュラルプロダクツのパイオニアとなり、2003年にはUSDAの全米オーガニックプログラムに認定されました。これは、世界中でソーシングしている全てのオイルを有機農家からのみ輸入/使用することにコミットしている、という証でもあります。そして2007年にフェアトレードの認証を受け、以降ソープの原材料はフェアトレードのサプライチェーンを保証するオイルのみ使用することを決定しました。

ドクターブロナー
左から:ガーナからパーム油、スリランカからココナッツオイルを。そしてインドのミント畑にて。ドクターブロナーの原料は世界最先端の「リジェネラティブ・オーガニック農法」を採用。

ですがソープの製造に必要なだけのフェアトレードオイルの世界的な供給が追いつかなかったため、独自にフェアトレードとオーガニックを実践する小規模農家との現地契約をし、さらにその地域コミュニティと人々の健康を鑑みて、スリランカ、サモア、ガーナに系列会社を設立しました。

現在は、環境改善に貢献する最新の農業として注目されている“リジェネラティブ・オーガニック”レベルの原材料ソーシングをはじめ、土壌の健康、動物福祉、そしてフェアトレードなどを独自の基準として設けています。このようにドクターブロナーは常に、世界をより良くする原材料のソーシングを最重要とし、原材料を決定しています。

ーーブランドとして取り組んでいる最新の“リジェネラティブ・オーガニック農法”について詳しく教えてください。

まず、2020年にアメリカで新しい認証マーク「リジェネラティブ・オーガニック認証(ROC)」が設立されました。これは、地球環境の再生を目指す総合的な認証システムで、工業型農業/気候変動/経済的不平等などの問題に対応し、エコロジカルで有効的な農業生産システムの見本となるべくつくられたものです。その根幹にあるのは、以下の3つの柱です:

①   土壌の健康(例:オーガニック)

②   動物福祉(アニマルウェルフェア)

③   社会的公正(例:フェアトレード)

これらすべてにおいて設けられている高い基準をクリアして初めて認証を受けることができます。ドクターブロナーは、この認証マークの立ち上げから携わると同時に、率先して取り組むなどシステムを牽引してきました。

現在、「マジックソープ」などの製品にも使用されている原材料のココナッツオイルやミント油がROCを取得しています。また、日本では取扱いのない製品「ココナッツオイル」が、製品としてはROCを取得していますが、将来的には全製品がROCを取得することを目指しています。

ドクターブロナー
あるがままの自然に委ねる「リジェネラティブ・オーガニック農法」で耕された土壌は滋養に富み、様々な動植物の育成にも繋がっている。

また、ブランドとして栽培は、ROCの柱の1つである土壌の健康を目指すため「リジェネラティブ・オーガニック農法」を実践しています。これは、従来の有機栽培をさらに深め、古代の人々が行っていたような、化学に頼らない“あるがままの自然”を模範にした農業と言ってもいいでしょう。

具体的に言うと、化学肥料や農薬を使わず、マメ科の植物を植えて大地を覆うことで土壌の栄養価を高めつつ雑草を防いだり、深く耕さないことで土壌微生物への妨害を最小限にするなどの様々な工夫を用いた農法です。さらに、生態系を保護するだけでなく、土壌有機物を増やして従来の農業よりも多くの炭素を貯留できる可能性があるため、土壌を肥沃にしながら気候変動を抑制するための有力な方法として考えています。

ドクターブロナーは世界10か所のフェアトレード先のうち、インドのミント油、ガーナのパーム油、スリランカのココナッツオイルはこの農法で栽培しています。このリジェネラティブ・オーガニック認証取得や農業の取り組みは、化粧品ブランドとしてはドクターブロナーが世界初となります。

ーー化粧品と環境という視点からブランド独自でどのような取り組みをしていますか?

ドクターブロナーは、全ての製品がオーガニックであることにこだわり、人にも地球にもやさしい製品づくりをしています。さらに、原材料の植物をオーガニックで栽培することで、肥沃な土壌と生産者の健康を守りつつ、現在世界10か所の地域から、主要原材料をフェアトレードで調達しています。

ドクターブロナーのフェアトレードには5つのガイドラインがあります:

①   公正な価格で取引をすること

②   公正で安全な労働環境を提供すること

③   生産性向上のための技術を伝えるトレーニングをすること

④   有機農業を実践し、健康的な土壌をつくること

⑤   取引価格の10%を奨励金として積み立て、農家や地域コミュニティの支援をすること

ドクターブロナー
左上から時計回りに、ガーナの学校、そして医療サービスの様子。生産地とウィン=ウィンの関係を築きながら、得た利益を現地の子供たちの教育や健康のために還元することはブランド創業以来のポリシーだ。

一方で環境への配慮から、業界に先駆け2003年からマジックソープのボトルに100%リサイクルプラスチックを採用したことも付け加えたいと思います。

ドクターブロナーが目指すもの

ーー化粧品を開発する上で、もしくはコンセプトを立ち上げる時点での困難はなんでしょうか?

ブランドとして環境問題や社会的不平等を改善することを企業活動の大きな目的にしているため、時間がかかる点でしょうか。例えば、ペパーミントのオーガニッククリーンスプレーの発売には時間がかかりました。ですが発売を急ぐより環境に良い原材料のソーシングを重要視したことで、結果的には環境に良く高品質の製品をお客様にお届けすることにつながったと考えています。

ホロコースト、という人類史上最大の悲劇で家族を失ったがゆえに、深い学びを得たエマニュエル・ブロナー 。宗教や民族の差別のない結束を唱え、地球に生きとし生けるもの全ての平和を心から願う彼が立ち上げた「ドクターブロナー」は、2015年からブロナー氏が新たな時代のブランドを牽引している。21世紀に入ってもなお人気が衰えない最大の理由—それは、製品のクオリティの高さはもちろんのこと、マジックソープに込められたドクターブロナーの人類普遍の想いと叡智が、製品を手にする一人ひとりにきちんと届いているからに違いない。

スポーツやヨガに、ドクターブロナーからのおすすめ

ドクターブロナー
マジックソープ S  ペパーミント(全11種) 237ml ¥1,320(税込)/ネイチャーズウェイ(ドクターブロナー) 問い合わせ先:0120-677167

「マジックソープは、天然由来成分100%のオーガニックソープで、ヴィーガン認証も取得しています。天然エッセンシャルオイルの香りが豊かに香るので、気分に合わせて香りを選ぶ楽しみもあります」。水の量を調整することで、顔や体だけでなく、食器洗いや部分汚れの洗濯にも使えたり、無香料タイプのベビーマイルドは野菜や果物を洗ったり、こどものおもちゃのお手入れにも使用可能。マルチタスクの便利なオーガニックソープは、まさに必須アイテムだ。

ドクターブロナー
オーガニッククリーンスプレー ペパーミント 59ml ¥1,078(税込)/ネイチャーズウェイ(ドクターブロナー) 問い合わせ先:0120-677167

「オーガニッククリーンスプレーは、USDA認証も取得している除菌*スプレーです。身の回りのモノの除菌*や手指の汚れ拭きに使用できます。スマートなボトルなので持ち運びしやすく、外出先でも便利にお使いいただけます。ヨガマットにスプレーして拭き取って除菌*をしたり、アロマスプレーのようにヨガの前に空間に吹きかけて気分をリフレッシュするのもおすすめです」。リラックスにはラベンダー、気分のリフレッシュにはペパーミントと、2種類の香りを使い分けている人が多いのだそう。ヨギーやヨギーニのファンも多いアイテム。

*全ての菌を除去するわけではありません
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横山正美

横山正美

ビューティエディター/ライター/翻訳。「流行通信」の美容編集を経てフリーに。外資系化粧品会社の翻訳を手がける傍ら、「VOGUE JAPAN」等でビューティー記事や海外セレブリティの社会問題への取り組みに関するインタビュー記事等を執筆中。



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