【Q&A】マスク生活下で起こる現代病「呼吸負債」とは？自律神経の名医・小林弘幸教授に聞いた

「呼吸負債」とは「慢性的な浅い呼吸」のこと

コロナ禍で多くの人が「呼吸負債に陥っている」と警鐘を鳴らすのは、自律神経研究の第一人者である順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生。具体的に「呼吸負債」とはどのような状態を言うのか伺ってみました。

小林先生：ここ数年来、ストレス社会が叫ばれていますが、新型コロナウイルスの到来により生活様式が一変し、働いていらっしゃる方ですとリモートワークの促進によって、自宅のあまり開放的とはいえない環境下で仕事をされている方も多いと思います。どうしても狭い空間ですと、人は心理的圧迫感を強く感じるようになり、結果的に慢性的な「浅い呼吸」になることが考えられます。また、外出時もマスクが半ば義務となり、これも呼吸が浅くなる一因と考えられます。浅い呼吸は自律神経のバランスを乱す大きな原因です。不調につながる慢性的な浅い呼吸が続き、溜まっていってしまう状況を「呼吸負債」と私は考えています。

あなたは大丈夫？「呼吸負債」に気づくには

確かに現代人はストレスフルで忙しく、自分の呼吸が浅くなっていることに気づける人が少ないように思えます。自分の呼吸の浅さ・深さを自身でチェックする方法はあるのでしょうか？

小林先生：スマホのタイマーでいいのですが、1分間で自分が何回呼吸をしているかをチェックしてみてください。20回以上されていた場合は、少し浅くなってきている可能性が考えられるので、気づいたときに「長生き呼吸法」でリセットしてみてください。

呼吸法には即効性がある？

小林先生：ゆっくり深い呼吸をすると、副交感神経をすぐに刺激することができます。反対に、早く浅い呼吸をすると交感神経を刺激することができます。自律神経は、どちらかが高ければいい、というものではありません。交感神経と副交感神経どちらも高く、なおかつバランスがとれていることがいい状態です。ストレス社会の現代は、総じて交感神経が優位の状態の方がほとんどです。だからこそ、ゆっくり深い呼吸で副交感神経を高め、バランスをとっていただきたいと思っています。

全ての人が「呼吸」を見つめ直すべき

小林先生が呼吸法を最もオススメしたいのはどんな人でしょうか？運動が苦手なシニア層や時間がない若者など、小林先生が最もオススメしたい相手について教えてください。

小林先生：呼吸の仕方を常に意識している人はいません。だからこそ、これまですべての人が疎かにしてきたとも言えます。1回の呼吸が「これから100円かかります」と決められたら、必ず意識されると思いませんか。でも呼吸はしなければ生命活動を止めることになり、してさえいれば、今すぐに何か病気になるわけでもありませんので、適当ですませられるものです。また、いい呼吸の仕方なんて誰にも習いませんよね。だからこそ全世代におススメしたいですし、「呼吸負債」を考えると早ければ早い方がいいので、若い世代の方にもおススメです。

呼吸を整える！1日1分でOK「長生き呼吸」のやり方

小林先生が提唱する「長生き呼吸」は手軽に取り入れられ、続けられる呼吸法。「1日1回意識してリセットすれば呼吸負債が収まります」（小林先生）。早速今日から始めてみましょう！

長生き呼吸法のやり方

【基本の姿勢】

・脚を肩幅に開く
・まっすぐに立つ
・肩の力を抜く
・両手はお腹の横に（ろっ骨の下をつかむ）

 

呼吸を改善するためにできることは

自分が呼吸負債になっているとわかり、呼吸法にトライしてみても、うまく吸えなかったりうまく吐けなかったり…ということも考えられます。そういう人は呼吸自体の改善が必要かと思いますが、呼吸を改善するためにできることはありますか？

小林先生：呼吸筋の動きがうまくいっていないことが考えられます。著書『自律神経を整える「長生き呼吸法」』のなかでもご紹介しておりますが、胸を開く動作を取り入れた「昼のリフレッシュ呼吸」などを試してみてください。

昼のリフレッシュ呼吸のやり方

教えてくれたのは…小林弘幸先生
1960年埼玉県生まれ。 1987年順天堂大学医学部卒業。 アイルランド国立小児病院外科を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。 その後、順天堂大学医学部教授。最新著書に『自律神経を整える「長生き呼吸法」』（アスコム刊、2020年）がある。

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