"体"を媒体に表現活動を行う作家チョーヒカルが語る「誰もがエイリアンである」という言葉の真意
——学校の課題で、ニューヨークの街をリサーチしてネズミのペイントをされていましたね。
「社会問題に沿ってボディ・ペイントを使ってみようと、害獣と呼ばれるアライグマとネズミの問題とその生息地を調べたところ、人間の生活様式があって初めて彼らの生態系が成立していることがわかったんです。害獣というのは人間からの一方的な視点でもあるので、ネズミもアライグマも同じニューヨーカーなんじゃないかと。写真雑誌『ニューヨーカー』風にネズミのペイントした人を表紙として、生息地やどうすれば共存できるかといったことを掲載しています」
《The New Yorker》
——動植物モチーフの作品が多いですが、自然に対する関心もありますか?
「以前、北海道の草原でエゾシカに会うという番組企画で、エゾシカに1メートル以内まで近づいたことがあります。鹿が本気出したら死ぬなと思いつつ、「いいスか?」という感じでちょっとずつ距離を縮めていったんです。そのとき、それまでしたことのない、言葉を使わないコミュニケーションをしているような感覚があって、人間や機械に囲まれてばかりだと言葉以外の感覚が失われるなと思いました。また、動物を保護してあげるとかじゃなく、お互いの居住地を尊重して別々に共存して生きていくという方向性もあるのかなと思いました。ヨガでも、近代社会で失われつつある感覚を研ぎ澄ませることがありそうですね」
profile
趙燁(チョー ヒカル)
1993年東京都生まれ。2016年に武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業。体や物にリアルなペイントをする作品で注目され、衣服やCDジャケットのデザイン、イラストレーション、立体、映像作品なども手がける。アムネスティ・インターナショナルや企業などとのコラボレーション多数。国内外で個展も開催。著書に『SUPER FLASH GIRLS 超閃光ガールズ』『ストレンジ・ファニー・ラブ』『絶滅生物図誌』『じゃない!』がある。https://www.hikarucho.com
ライター/白坂ゆり
WEEKLYぴあ編集部を経て、1997年、フリーのアートライターに。『SPUR』『Marisol』、ウェブサイト『アートスケープ』などに寄稿。共著に『作家名でわかる逆引き美術館手帖』(世界文化社)、『フェルメール 16人の視点で語る最新案内』(美術出版社)など。
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