ヨガは絶望からの「自立」を促せるのか|「がんフレンズヨガ」クラスを取材

Mika Nakayama

ヨガは絶望からの「自立」を促せるのか|「がんフレンズヨガ」クラスを取材

スクールでは、どのような背景から「がん患者」向けのヨガクラスがスタートしたのでしょうか。また、精神的な回復も含めたヨガの役割をどのように考えているのか? このクラスを主催するアンダーザライト ヨガスクール(以下、UTL)統括マネージャー守田あつ子さんにお話を伺いました。

「がんサバイバー同士が気兼ねなくヨガを楽しめる場を作りたい」というがん経験者の想いを形に

――UTLでは、どのような経緯でがんサバイバー向けクラスを始めたのですか?

現在UTLでは2つのがんサバイバー向けクラスを開催しています。一つは、「がんサバイバーのためのヨガ」クラスで、講師のムラヤマ美智子先生は旦那様の看病と看取りの経験者。UTLの指導者養成コースの卒業生というご縁もあり、先生からの打診を受けて2015年にスタートしました。もう一つのクラスは、その翌年に始まった「がんフレンズヨガ」です。講師の中里貴子先生は長い間UTLでレギュラークラスを担当し、がんサバイバー向けクラスの発端はご自身の乳がん発症でした。「ウィッグを外し、サバイバー同士が気兼ねなくヨガを楽しめる場を作りたい」、その思いに共感しクラスが実現しました。

――がんサバイバー向けクラスを行ううえで、UTLが重視していることとは?

海外の研究によるとヨガが病気による心理的不安を軽くし、リラックス効果を生むと報告されていますが、ヨガはがんに効くという科学的根拠はありません。ヨガでがんが治るという見え方になると混乱を招くので、医療との境目を理解してヨガ本来の効果を伝えられるヨガ講師の選定を重視しています。そして、病気で力を落としている生徒さんに、自立を促す真の寄り添いができることも大切な要素。UTLでは以前からこうした条件を満たすヨガ講師を探しており、看護経験者であるムラヤマ先生と、自身もサバイバーで患者の心理を理解できる中里先生に出会えたことで、安心してがんサバイバー向けクラスを開催できました。

ヨガで絶望からの「自立」を促す。アンダーザライト ヨガスクールのがんサバイバー向けクラス
Photo by Mika Nakayama

「ガンを受け入れ、ヨガで自立を促す」の意味とは?

――サバイバーに「自立を促す」とは、具体的にどのようなことを意味しますか?

「ヨガで自立した人になる」というのが、ヨガスクールとしてのUTLの基本理念です。それはレギュラークラスや指導者養成コースだけでなく、がんサバイバー向けクラスにも共通しています。がんになって大きなダメージを受けている生徒さんがいたとして、先生が過剰なケアを施せば依存心を抱かせることに。外からの刺激で成り立つものは、その刺激がないと崩れやすく、先生に会わないと落ち着かないという状況は望ましくありません。UTLでは、大変な状況を受け入れる冷静さ、その状況を自分なりにケアして自力で立ち上がる強さ、その両方をヨガで養ってほしいと考えています。

――2つのがんサバイバー向けクラスは、それぞれどんな特徴がありますか?

「がんサバイバーのためのヨガ」は、病気のストレスでこわばった心身をポーズと呼吸法でゆるめていくクラスです。クリスタルボウル奏者の演奏もあり、音によるバイブレーションからもリラックス効果を得られると思います。「がんフレンズヨガ」は、中里先生が自身の乳がん経験を活かし一人ひとりと丁寧に向き合い、ゆったりとしたポーズと呼吸法を用いて病気で急速に変化する心身をケアしていきます。2つのクラスの共通点は、抗がん剤の副作用で外見が変化しても人との違いを気にせず、自分らしくヨガを楽しめる環境作りをしていること。気分が沈みがちなときほど思い切ってクラスに参加し、同様の境遇の人たちに会って話すだけでも気分が晴れるのでは。どちらのクラスもサバイバーご本人と同伴で、家族をはじめ患者さんを支える立場にあるケアギバーの方も参加が可能。身近な人の闘病で不安や負担を抱える家族は第二の患者と言われ、患者さん同様にケアする場が必要と感じています。

――がんに罹患する人が増加傾向にある今、がんサバイバーのヨガニーズも高まりつつあります。その流れを受けてUTLの今後の取り組みを聞かせてください。

確かにがんは特別な病気ではなくなり、UTLでもさらなるサバイバーの受け入れの必要性を感じています。ただ、安易にクラスを増やすのではなく、まずヨガの先生が過剰に医療に踏み込まないように啓蒙する機会を作り、ヨガの先生として守るべき境界線をクリアにする取り組みを始めていけたら。ヨガの先生からはサバイバー向けクラスをやりたいけれど、生徒さんとの接し方に不安を感じ一歩を踏み出せないという声が届いています。それは知識がないが故の不安であり、がんの症状や治療による心身の変化を学ぶ機会の必要性も感じています。もちろん、ヨガはストレッチではなく、ポーズの出来不出来を競うものでもないという、ヨガの本質を理解していることが大前提。その部分をきちんと伝えられたうえでがんサバイバーと向き合えるヨガ講師の育成を進めていきたいと思います。

決して珍しい病気ではなくなったがん。とはいえ、罹患した時の肉体的、精神的なダメージは他人には計り知れません。大事なのは、がんに罹患したその先の人生を見つめ、自分らしく生きていくこと。そのためにもヨガは、有効なツールであることを取材を通して感じました。

ヨガで絶望からの「自立」を促す。アンダーザライト ヨガスクールのがんサバイバー向けクラス
Photo by Mika Nakayama

守田あつ子さん
アンダーザライト ヨガスクールのスクール統括マネージャー。UTLおよび同スクールが主催するヨガイベントの企画・運営を担当している。

クラス情報

がんフレンズヨガ

日時:第3月曜日 14:20~15:40
受講料:1,500円(現金のみ)
※年内の開催日は10月21日、11月18日、12月16日

がんサバイバーのためのヨガ

日時:第1日曜日 11:30~13:30
受講料:1,500円(現金のみ)
※年内の開催日は10月6日、11月3日、12月1日

それぞれ詳細はアンダーザライト ヨガスクールWEBサイトに掲載。

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Photos by Mika Nakayama
Text by Ai Kitabayashi

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