骨盤と膝を繋ぐ「腸脛靭帯」の仕組みを理解しよう
腸脛靭帯の硬さの解消法として注意したいこと、さらにそれを踏まえたうえでの腸脛靭帯を良好に保ついくつかのポーズを紹介する。
体の仕組みを学ぼう 腸脛靭帯を理解しよう
ちょう脛けい靭帯は腱のような厚い筋膜組織で、ヨガだけではふつう悪化しない。ただ、後方にジャンプするのが好きな人や、強い衝撃を受ける爆発的運動(ランニングや高強度インターバルトレーニングなど)を日常的にこなしていてバランスをとるためにヨガを行っている人は、腸脛靭帯の硬さを感じていることがある。それは正しい感覚だ。腸脛靭帯には一定の硬さがあって、その硬さが太腿の外側を保護するプロテクターの役割を果たしている。ヨガを使って腸脛靭帯の「ストレッチ」や炎症の手当てをする前に、なぜ腸脛靭帯に炎症が生じるのか、炎症を改善するには何をすべきか、基本的なことを押さえておくことが重要だ。
特に膝を曲げたときに膝の外側に痛みを感じたら、腸脛靭帯症候群が起きているサインかもしれない。ヴィーラバッドラーサナⅡ(戦士のポーズⅡ)のように片方の膝を深く曲げるポーズに入るときなどに、痛みは生じる。この痛みはどこからくるのだろう。大腿筋膜張筋と大臀筋のバランスがとれていないために、腸脛靭帯がピンと張ることが原因だ。このふたつの筋肉は、腸脛靭帯の骨盤付近の接続点となっている。膝関節包と脛けい骨の外側につながっている腸脛靭帯が、このふたつの筋肉に引っ張られると、膝の外側に痛みが引き起こされる。ただ、腸脛靭帯の症状はふつうあまり重くならず、周辺の筋肉を強化することと張りを解消することで高い効果が得られる。特に、大臀筋と大腿筋膜張筋、さらにその近くにある大腿四頭筋、ハムストリング、股関節の屈筋群と回旋筋に働きかけるとよい。
腸脛靭帯症候群の主な原因4つ
どの腱でも使いすぎや伸ばしすぎによって繰り返しストレスがかかると、小さな亀裂や外傷が生じて、けがや痛みにつながる可能性がある。これが腸脛靭帯に生じると、腸脛靭帯症候群と呼ばれる。腱は修復に必要な血流を筋肉ほど得られないため、筋肉よりも回復しにくい。しかも、腸脛靭帯には神経終末部が多数存在するために、ローラーによるマッサージがひどく痛く感じることがある。腸脛靭帯症候群の4つの主な原因を紹介しよう。
①過度のランニング、ジャンプ、サイクリング
特に、膝と腰の位置が整っていないときが問題だ。どんな動きでも膝と腰の位置が整っていないと、問題につながる可能性があることを覚えておこう。腸脛靭帯の働きのひとつが、膝が体の動きに合わせられるようにすることだからだ。このため、(歩行時に足が回内したり、自転車走行時に外に向いたりして)関節の位置が常にずれている場合、腸脛靭帯に炎症が起きる可能性がある。
②臀筋の伸ばしすぎ
運動や良くない習慣(足を組んで座る、ハイヒールを頻繁に履くなど)から起きる。
③座りすぎ
大腿筋膜張筋が慢性的に短くなるのに対して、臀筋が伸びすぎるため、腰とハムストリングと臀筋が弱まり、腸脛靭帯の状態が悪化する。
④脚の長さの違い
腰の片側に過度の負担がかかり、長いほうの脚の腸脛靭帯に問題が生じる。
腸脛靭帯の解剖学的特徴
腸脛靭帯はさまざまな働きをする腱で、骨盤の最上部(腸骨)からすねの骨(脛骨)まで太腿の外側に伸びている。また(股関節屈筋のひとつである)大腿筋膜張筋と(臀部の最大の筋肉で、股関節屈筋であると同時に股関節外旋の働きもする)大臀筋を、脛骨の外側に結び付けている。特に、ランニングやジャンプなどの素早い爆発的な動きをするときに、腰と膝を安定させる役割を担っている。厚い帯状の腸脛靭帯を、骨盤と膝をつなぐピンと張った橋のようなものだと考えよう。
また、腸脛靭帯は大腿四頭筋を覆ったのち、次第に細くなって膝関節包に入っていく。腸脛靭帯の上部に付着しているふたつの筋肉(大腿筋膜張筋と大臀筋)が収縮すると、腸脛靭帯に張力が加わり、膝と腰の結びつきを安定させるのを助けている。ただ、どちらか一方の筋肉を使いすぎたり(十分に使わなかったり)すると、腸脛靭帯に過度の負荷がかかって膝の外側を強く引っ張り、痛みが引き起こされる。
①腸骨
骨盤の最上部にある、骨盤で最も大きな骨。左右に広がった骨で、腰と胴体の多数の筋肉が付着している。
②大腿筋膜張筋
この小さな筋肉は股関節の前面にあり、腸脛靭帯の接続点のひとつとなっている。
③大臀筋
3つの臀筋の中で最も大きく、最も表面に近いところにある筋肉。股関節の主な伸筋であると同時に、腸脛靭帯のもう一方の接続点になっている。
④腸脛靭帯
この厚い筋膜組織は、大臀筋と大腿筋膜張筋の腱付着部の役割を果たしている。外がい側そく広こう筋きん(大腿四頭筋の外側の筋肉)の外縁であり、大腿四頭筋を覆う筋膜の役割を果たしている。
⑤脛骨
膝から下の2本の骨のうち、大きくて強いほうの骨。
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