「深い呼吸」をするためのコンディショニング|理学療法士がヨギに知ってほしい体のこと

 「深い呼吸」をするためのコンディショニング|理学療法士がヨギに知ってほしい体のこと
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得原藍
得原藍 2019-06-27

理学療法士として活躍する得原藍さんが、ヨギに知ってほしい「体にまつわる知識」を伝える連載。今回は、「深い呼吸」をするためのコンディショニングについて学びます。

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「深い呼吸」をするためのコンディショニング

どうも深い呼吸がしづらい…と感じることはありませんか。デスクワークをしていたり、子どもを抱っこする機会が多かったり、重い荷物を片方の肩に持って歩いたり、上半身が動きづらい生活をしている人からよく聞かれる訴えです。上半身、特に胸郭周りが緊張していると、せっかく横隔膜を動かして一生懸命腹式呼吸をしても、膨らむはずの肺を収めている肋骨周辺が広がりません。その結果、頑張っても空気が十分に入ってこない、という状況に繋がりやすくなります。

理学療法の臨床場面では呼吸苦を伴う疾患の方に多く出会います。そういった方の胸郭周りは、例外なく筋が硬いものです。呼吸の練習をする前には、必ず胸郭周りをほぐすことから始めます。今回は、呼吸に伴って柔軟に動かしたい筋を和らげるコンディショニング方法をご紹介します。

1 まず、ゆっくり呼吸をしてみてください。

どこが動きますか。また、どこが窮屈な感じがしますか。呼吸をすると、胸郭の前面は持ち上がるように膨らみます。また、肋骨の下の方は、横に広がります。同時に、胸郭が膨らむことで肩甲骨が内転(背骨側に動くこと)し、胸椎(肋骨とつながる背骨)は少し伸展します(反るような動きをします)。

2 詰まりを感じる位置を感じましょう。

自分が呼吸をしてみて、この四つの動きのどこに「詰まり」を感じるか、ゆっくりと内省してみましょう。その場所によって、アプローチする方法が変わってきます。この段階を「評価」と呼びます。どこに問題があるのかをまず考えることで、解決策が変わるので、とても大事です。この「評価」は、インストラクターの皆さんが生徒さんを見るときにも大事にしていただきたいのですが、呼吸ひとつ取っても、その動作の解決方法にはバリエーションがあり、的外れなことを行っても効果は少ないのです。さて、呼吸の結果、うまく動かない部分はありましたか。

「肋骨の前面がどうもうまく動かない」と感じる場合

左側の前面の肋骨を、鎖骨の下に探してみてください。そして、肋骨と肋骨の間の隙間に、両手の親指以外の指を並べて、グッと押してみてください。そこに肋間筋という筋があります。グッと押したら、その位置で指を止め、深呼吸をしましょう。すると、指が押し返され、少し痛いような感覚とともに、胸が広がってくるのがわかると思います。そのまま3−4回呼吸をします。それを、上から順に下の肋骨まで、指を移動させながら繰り返します。上から下まで、左の肋骨が終わったら、その時点で一旦、「評価」に戻ってみてください。すると、右の胸より左の胸の呼吸が楽になっていることがわかると思います。肋間筋が緩むとこんな動きになるんだ、と、わかりやすく理解できると思います。その後、右も同じように繰り返しましょう。肋間筋はこうして指の圧力を外から加えることで緩めることができ、胸郭を広げる手助けになります。

「肋骨の下の方が横に広がらない」と感じる場合

肋骨の下部に、掌をあて、左手で左の肋骨下部を、右手で右の肋骨下部を、親指が上になるように覆います。そのまま息を吐きましょう。吐いたら、手をそのままの位置に固定するようなイメージで、その手を押し返すように息を吸ってください。腹式呼吸を意識しすぎて腹部が膨らむことを重視していると、この肋骨下部の動きが小さくなっていることがあります。最初はうまく吸うことで押し返せないこともあるでしょう。ゆっくり、肋骨が手を押し返す感じを確認しながら呼吸を繰り返しましょう。横隔膜はこの肋骨下部にくっついている筋なので、横隔膜が効率よく動くためには肋骨下部の動きが大切です。ここが広がることで横隔膜は収縮できるのです。

「肩甲骨が内転し(寄ら)ない、または胸椎が伸展し(伸び広がら)ない」と感じる場合

この場合は、少し道具の力を借りましょう。円柱状、あるいは円柱を縦半分にしたような形のストレッチポール、あるいは、バスタオルを円柱状に丸めたものを用意してください。高さは10センチから15センチあるといいでしょう。それを背骨に沿わせるように縦にあてて、仰向けに寝ます。膝は立てていてかまいません。バスタオルの場合は枕も用意して、背骨と頭が支えられるようにしてください。その姿勢でまずは深呼吸をしましょう。そのときに、肩甲骨が地面に落ちるようなイメージで、背中の力を抜いてください。すると、呼吸とともに、肩が地面のほうに引き寄せられ、胸椎も自然に伸展してきます。このパターンの人は、肩や背中に力が入りすぎて、呼吸を阻害してしまっています。背中を地面から離すことで、肩甲骨の動きを自由にして呼吸をしてあげることで、肩と背中の緊張が緩むでしょう。

これら3つの方法は、一般的に安全なものと言えると思いますが、重度の骨粗鬆症を抱えている場合は力加減に工夫が必要です。肋間筋や肋骨を押さえる力は「痛みが出ない程度」としてください。また、ストレッチポールなど硬い素材は避け、あえてバスタオルを使用し、骨盤の下にも枕などを置くことで過度に脊椎が伸展されないようにしてください。

こうした呼吸のためのコンディショニングは、スムーズな運動への入り口としても有用です。運動をするには酸素が必ず必要なわけですから、ヨガの前に呼吸のコンディショニングを取り入れてみてもいいのではないでしょうか。

ライター/得原藍
大学時代にアメリカンフットボールの学生トレーナーをした経験から身体運動に興味を持ち、卒業後社会人経験を経て大学に再入学し理学療法士となる。総合病院と訪問リハビリテーションで臨床経験を積み、身体運動科学について学ぶために大学院に進学、バイオメカニクスの分野で修士号を取得して5年間理学療法士の養成校で専任教員を勤める。現在はSchool of Movement®️ IES Directorとして様々な運動関連職種の指導者に対してバイオメカニクスを中心とした身体運動の科学を教えている。

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