「聴力検査の結果が悪かったけど…自覚がなければ放置してもいい?」→医師が回答!


聴力検査でわかること、異常所見がある場合に疑われる病気などについて医師が解説します。
聴力検査とは?
私達が、音を正しく聴くためには、音が入ってくる道(耳介、外耳道)、それを伝える装置(鼓膜、耳小骨、中耳腔)、伝わってきた音の振動を電気信号に変える場所(内耳にある蝸牛)、電気信号を脳へ伝える聴神経、音を感じ取る大脳が正常に働いている必要があります。
一般的に、聴力は、情報の収集、コミュニケーション、楽しみ、さらには身の安全を守るために、日々の生活で不可欠な役割を果たしているため、聴力の健康状態を定期的にチェックすることは大切な健康管理となります。
特に、聴力検査は、低い周波数(1000Hz)と高い周波数(4000Hz)の両方の音が聞こえるかどうかを調べる検査です。
聴力検査の結果、異常所見がある場合に疑われる病気としては、中耳炎、先天性難聴、騒音生難聴などが挙げられます。
通常、労働安全衛生法で決められている職場の定期健診では、騒音性難聴を早期に発見する目的で、1000Hzと4000Hzの二つの音(周波数)についての聴こえを調べます。
工場など騒音の大きな職場などで長期間働き続けることによって難聴がおこってくる場合には、騒音性難聴、または職業性難聴とよびます。
騒音性難聴では、原因となる騒音の種類とは関係なく、4000Hz付近の聴力から低下し始めることが知られています。
騒音性難聴の初期には、4000Hz付近の聴力が低下し、通常であれば、この時点では自覚症状はありませんが、騒音性難聴は早期発見が重要となりますので、職場の健診で異常を指摘された場合には、なるべく早急に耳鼻咽喉科を受診してください。
聴力検査の1000Hzと4000Hzは、音の周波数が異なり、周波数は、音の高さを表す指標で、Hz(ヘルツ)で表現されます。
4000Hzは高周波数の音であり、鳥のさえずりやシンバルの音などがこの周波数域に含まれる一方で、1000Hzは中程度の周波数の音で、男性の声やピアノの中程度の音がこの周波数域に含まれます。
聴力検査で4000Hzの音が聞こえない場合は、高周波域の聴力障害の可能性があり、1000Hzの音が聞こえない場合は、中程度の周波数域の聴力障害の可能性があります。
聴力検査では、様々な周波数域の音を聞き分けることができるかを評価するため、4000Hzと1000Hzの両方の音を検査することが一般的です。
聴力検査結果が悪くても自覚がなければ放置していいのか?
日常生活において、音のきこえが悪いということは、下記のいづれかによるものです。
- 音を伝える装置(鼓膜,耳小骨、中耳腔)の障害(伝音障害)
- 音の振動を電気信号に変える場所(蝸牛)の障害(内耳障害)
- きこえの神経の障害(神経性障害)
- 脳の障害(中枢性障害)
一部が単独に障害される場合だけでなく、同時に障害されている場合もありますので、具体的にどこが障害されているかを評価するため、あるいは色々な治療法を選択する上でも、いくつかの聴力検査をしなければ正確な判断がつきません。
人間の聴力は、当然のことですが加齢に伴って徐々に悪くなります。
聴力の度合いによって難聴の程度は分類され、難聴の程度は、音の大きさ(dB)を目安にして「軽度難聴」、「中等度難聴」、「高度難聴」、「重度難聴」の4つのレベルに分類されます。
聴力検査は、難聴の有無を調べる検査であり、日本人間ドック・予防医療学会では、1000Hz(ヘルツ)で30dB(デシベル)以下、4000Hzで30dB以下の音が聞こえていれば正常と評価し、それ以上の音圧でないと聞こえない場合は、難聴と診断されます。
1000Hzは日常会話に必要な低音域、4000Hzは高音域の難聴を早期発見するために行い、大きな音に曝露されて引き起こされる騒音性難聴の場合は、4000Hzの検査で発見されることが多いとされます。
また、難聴は、大きく分けてふたつのタイプがあります。
ひとつは、外耳や中耳など音を伝える部分に障害で生じる「伝音難聴」で、中耳炎などが原因で起こります。
もうひとつは、内耳や聴神経の障害で生じる「感音難聴」で、先天性難聴や耳下腺炎、ウイルス感染、聴神経腫瘍などが原因で起こります。
もし、難聴と診断された場合、詳細な検査を受けて、外耳、鼓膜、耳小骨、中耳腔、内耳などのどこに原因があるのかを調べることが重要です。
症状を放置していると悪化する可能性もあるので、早めに耳鼻科専門医の診察を受け、適切な治療を受けるようにしましょう。
まとめ
一般的に、聴力検査を実施する目的はふたつあります。
一つは聞こえの程度が正常か異常か、異常とすればどの程度の聞こえの悪さかということを検査することであり、もう一つは、聞こえの悪さがどの部位の異常によるものかを大まかに判断することです。
普段から、「少し聞こえにくいけれど、何とか生活できているから大丈夫」と考えて、聞こえにくさを放置していると、うつ病の発症率が高まったり、社会的孤立につながったりすることが指摘されています。
また、難聴がある人はない人と比べ、認知症になるリスクが約2倍になるとの研究もあります。
難聴があっても補聴器を使っていると、使っていない人と比べて収入の下がり幅が緩やかで、けがを伴う転倒の発生率も下がることが明らかになっています。
日常生活や仕事場面などにおいて、「音は聞こえるのに言葉が聞きとりにくいな」という自覚症状があり、検査を希望される場合は最寄りの耳鼻咽喉科医師に相談してください。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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