1年半で250万円貯めた「貯金オタク」が節約生活を「後悔」している理由【経験談】

 『貯金オタク、5000円の石けんで目覚める。 金は生きてるうちに使い切れコミックエッセイ』(はちみつコミックエッセイ)より
『貯金オタク、5000円の石けんで目覚める。 金は生きてるうちに使い切れコミックエッセイ』(はちみつコミックエッセイ)より

会社員で副業漫画家の小日向えぴこさんは、ハードな節約生活を送り、1年半で250万円の貯金に成功!ところがある日、友人から5000円のハンドソープをもらい、お金を使うことへの考え方が大きく変化します。『貯金オタク、5000円の石けんで目覚める。 金は生きてるうちに使い切れコミックエッセイ』(はちみつコミックエッセイ)にはその経過が描かれています。インタビュー後編では「経験」にお金を使うようになって得られた変化や、節約生活を振り返って思うことを伺いました。

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今は節約よりも収入を増やしたい

——今も続けている節約はありますか?

がっつり節約していた頃に格安SIMに変えたり、保険も見直したり、固定費を抑えるためのことは一通り済ませています。変動費に関する部分では、ふるさと納税をやっていて返礼品は全部お米にしています。

固定費の見直しは効果が大きいので、取り組んだ方がいいと思いますが、細々とした変動費はあまり追求しなくていいと私は思っています。小さな節約を頑張るよりも、大きい支出を削った方が効率が良いので。ただ、今は節約を頑張るよりも収入を増やした方がいいと思っています。

——収入を増やすとは、本業と副業どちらでしょうか?

本業でのことを想定しています。私自身副業をやっていて思うことが、本業も副業も100%の力を出して頑張るのは無理ということ。

本業の方がかけている時間も多いですし、私の場合は、本業の会社が「頑張れば給与が上がる」という信頼があるので、本業関連でスキルを磨いたり、仕事に関する本を読んで勉強したり、昇進を目指したりした方が効率良く収入を上げられると思っています。

『貯金オタク、5000円の石けんで目覚める。 金は生きてるうちに使い切れコミックエッセイ』(はちみつコミックエッセイ)より
『貯金オタク、5000円の石けんで目覚める。 金は生きてるうちに使い切れコミックエッセイ』(はちみつコミックエッセイ)より

「経験」を大切に

——節約ストッパーが外れて、物を買ったり、外食したりなど経験にお金を使ってみて、どのような心境の変化がありましたか?

行ったことのないお店に行くようにしていたのですが、数年間、初めて使うものや初めての経験にお金を使っていなかったので、とても新鮮でした。

『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ダイヤモンド社)という本に出てくる「思い出の配当」という考え方にも影響を受けています。

経験を早めに得ると、その経験がその後の人生にずっと配当として残り続けるので、経験は早ければ早い方がいいということ。本を読んでいるだけでは「思い出の配当」の話もそこまで響かなかったのですが、初めての場所を訪れたり、物を買ったりすることで、「思い出の配当」が自分の経験として納得できました。

消費行動を変えるまでは、安心なので、同じものばかり買っていました。ですが、初めてのものを積極的に買うようになってチャレンジ精神が芽生えたのも変化です。以前の私は、ずっと同じことしかしなくて同じものしか食べなくて、どんどん視野が狭まっていました。経験が何も溜まっていかない状態だったのです。生活スタイルを変えて、新しいことを取り入れることの重要性を感じています。

——新しい経験の蓄積によって、ご自身にどんな影響がありましたか?

仕事で役立つ場面がありました。Webマーケティングの部署にいて、世の中にあるサービスの情報を職場の人と共有したり、面白かった広告の話をしたりするのですが、仕事で話に出た商品が、少し前に居酒屋で飲んだものであって。実際に自分が飲んでいることで、味やパッケージに抱いた感想が、自分がバナーを作ったり、他の作品を作ったりするときに参考になりました。

経験が多ければ多いほど、シナジーが広がり、チャンスが増えることを感じます。シンプルに知っていることで視野が広がったり、話が盛り上がったり、人に勧めることができたりすることもメリットですね。

——お金の使い方を見直して、どんなことを得ましたか?生活やご自身の考え方にどのような変化がありましたか?

人との付き合いにお金をかけるようになって、後ろめたさを感じなくなりましたし、良いものを買って堂々と渡せて自分も気持ちがいいです。

妥協したものをプレゼントしていた頃、自分は内心気まずかったです。相手はなんとも思っていなかったと思うのですが。なので、自分の気持ちとマッチしたものをプレゼントできた方が、自分にとってもプラスになると思います。

時間でお金を買うという考えを取り入れてからは、生活が楽になりました。書籍制作期間は特に忙しかったので、余計に噛み締めています。ドラム式洗濯機を導入しましたし、お惣菜に頼るのも色々なものを試せて楽しかったです。

最近は「これは時間とお金どっちがかかる?」と考えるクセもついて、自分の時間も大事にするようになりました。

——本書では、副業の仕事を断る描写も出てきます。時間もお金も限られている中で、優先順位を考えるようになったのでしょうか?

私が受ける漫画の仕事は2種類あります。一つは広告の漫画など、絵が描ける人ならできる仕事で、正直私でなくてもいいもの。今はこういったお仕事は全部断っています。

もう一つが私でないとできないこと。書籍のお仕事もですし、私だからご依頼いただいているとわかるお仕事は、私も逃したくないので受けるようにしています。時間は限られているので、やりたい仕事だけやるようになりました。

お金は持っているだけでは意味がない

——厳しく節約や貯金をしていた時期を振り返って、今どのように捉えていますでしょうか。

本当にもったいなかったと思います。貯金していた過去の自分には感謝はしているのですが、思い出の配当は早いほどお得なものです。

私が過酷な節約生活をしていたのは25~28歳の頃でした。人生の良い時期を月7万円貯めることに必死になって、あの頃の自分は今よりも体力もあって元気だったのに、人付き合いを最低限にしてしまったのは本当にもったいなかったと。借金さえしなければ、もっと使ってよかったと思います。

——仮定の話にはなりますが、25~28歳の頃に今の価値観を持っていたら、どれくらい貯金していたと思いますか?

月3万円ぐらいでしょうか。先取り貯金を3万円して、あとは全部使っていてもよかったと思います。

交際費は増やしたかったですし、本を読むなど自己投資も全然してこなかったので、あの頃に取り入れていたら、今の私に活かされていたのではないかと思います。

——現在、お金を使うことに極端に罪悪感や抵抗感を持っている人に、小日向さんからメッセージはありますか?

お金をたくさん貯めたからこそわかるのですが、お金は持っているだけでは何も意味がないんですよね。使い方を考えないともったいないものです。何に使うかだけでなく、「いつ使うか」もすごく大切だと思います。

やりたいことができる時間は自分が思っているよりもはるかに短いんですよね。最近でも、子どもと過ごす時間の短さを実感しています。健康でいられる時間も、思っているほど長くはないですよね。

5年ほど前、お金がまだなかった頃に、友達と近場に旅行に行ったのですが、今でも楽しかったことを鮮明に覚えているんです。付き合いの飲み会などは、私はあまり意味がないと思っているのですが、旅行など、大切な人と一緒に過ごすことにはお金を使っていいと思います。

私はコロナ禍で会いたい人に会えなかったこともあって、やりたいことはやりたいと思ったときにした方がいいと伝えたいです。

 

『貯金オタク、5000円の石けんで目覚める。 金は生きてるうちに使い切れコミックエッセイ』(はちみつコミックエッセイ)
『貯金オタク、5000円の石けんで目覚める。 金は生きてるうちに使い切れコミックエッセイ』(はちみつコミックエッセイ)

【プロフィール】
小日向えぴこ(こひなた・えぴこ)

会社員・漫画家。2020年、育休をきっかけに漫画を描き始め、2021年から副業漫画家になる。主にWEB連載や、広告漫画にて活動中。本業でもSNS投稿用の漫画・イラスト制作や、バナーデザインなどを手掛ける。FP(ファイナンシャルプランナー)の資格を持っており、家計のことを考えるのが得意。好きな食べ物はお寿司。コミックエッセイ描き方講座5期生。

■X(旧Twitter):@epico428

■Instagram:@epico428

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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