ほてり、イライラ、倦怠感は栄養補充で緩和!更年期症状で悩む人が即摂取すべき栄養素|内科医が解説

 ほてり、イライラ、倦怠感は栄養補充で緩和!更年期症状で悩む人が即摂取すべき栄養素|内科医が解説
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梶 尚志
梶 尚志
2024-10-18

更年期症状トップ3と言えば、ほてり(ホットフラッシュ)、イライラ、倦怠感です。内科医師が更年期症状が起こるメカニズムと、食事でできる解決策をご紹介します。

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ホットフラッシュは、なぜ起きる

更年期に入ると、卵巣の機能が低下し、エストロゲンというホルモンの分泌が減少します。エストロゲンは、体温調節に重要な役割を果たしています。エストロゲンが減少すると血管の収縮・拡張がうまく調整できず体温調節が不安定になることで突然のほてりや発汗が起こります。これがホットフラッシュです。

突然のほてり、発汗を防ぐ栄養素

ホットフラッシュを緩和、防ぐには体温調整の要となる女性ホルモン「エストロゲン」が必要です。では、エストロゲンの分泌やバランスを保つために必要な栄養素は何か見て行きましょう。

イソフラボン

イソフラボンは植物性エストロゲン(フィトエストロゲン)と呼ばれ、エストロゲンに似た作用を持つため、エストロゲン減少による症状を緩和する効果があります。大豆製品(豆腐、納豆、味噌、豆乳など)に豊富に含まれています。

ビタミンE

ビタミンEは強力な抗酸化作用を持ち、血行促進や細胞の老化を防ぎ、血管の健康を保つのに役立ちます。血行を良くし、ホルモンバランスを整える作用があるためホットフラッシュの症状を軽減する可能性があります。ナッツ類、種子、緑黄色野菜に含まれます。

ビタミンD

ビタミンDは炎症を抑える働きがあります。炎症がホットフラッシュの引き金となることがあるため、ビタミンDの補給がその頻度や強度を軽減する可能性があります。ビタミンDを多く含む食品としては、サケ、マスなどの魚介類に多く、きくらげなどのきのこ類にも含まれます。

食事から必要量の摂取が難しい場合はサプリメントを利用する手段もあります。その場合は天然由来型のビタミンD3製剤をお勧めしています。

イライラ・不安感は、なぜ起きる

女性ホルモン「エストロゲン」は、脳内のセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質(メンタルホルモン)のバランスを保つのに重要なホルモンです。これらの物質は感情の安定性に関わっており、エストロゲンの減少により、神経伝達物質のバランスが乱れ、イライラや不安感が生じます。

イライラや不安を防ぐ栄養素

イライラや不安を緩和するには神経伝達物質(メンタルホルモン)の分泌やバランスを整えることが重要です。そして、そのホルモンの分泌やバランスを整えるためにはビタミンB群やオメガ3系脂肪酸が必要となります。では、それぞれがどのように作用するのか見て行きましょう。

ビタミンB群

ビタミンB群は神経伝達物質の生成に関与し、心の安定に寄与します。特にビタミンB6やナイアシンは、セロトニンやドーパミンの生成に関与しています。これらのビタミンが不足すると、メンタルホルモンの生成が低下し、気分が不安定になりやすくなります。また、神経系の健康を維持し、エネルギー代謝を助ける役割を持ちます。

ビタミンB群は、鶏肉(特に胸肉)や魚(サーモン、マグロ)、玄米やナッツ類に多く含まれます。

オメガ3系脂肪酸

オメガ3系脂肪酸は、脳内の神経伝達物質(特にセロトニンとドーパミン)の合成と機能に影響を与えます。これにより、気分を安定させ、不安感やイライラを軽減する作用が期待されます。また、脳内の慢性的な炎症は、うつ病や不安感の一因とされており、オメガ3系脂肪酸はその強力な抗炎症作用を通じて、これらの症状を緩和する可能性があります。DHAは脳の細胞膜の主要な構成成分であり、神経細胞の健康と機能を維持するために必要です。これらの理由から、オメガ3系脂肪酸の減少が精神的な不安定を引き起こします。EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の2種類が、脳の健康に重要な役割を果たしており、これが不安やイライラの軽減に寄与すると考えられています。

オメガ3系脂肪酸が多く含まれる食品には、EPA・DHAが豊富なサバ、サーモン、マグロ、イワシ、ウナギ、カツオがあります。植物性食品は、チアシード、亜麻仁油、エゴマ油、アーモンド、アボカドです。

疲労感・だるさは、なぜ起きる

疲労
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細胞内のエネルギー生成をサポートしているエストロゲンが減少すると、エネルギーの生成効率が低下し、体がだるく感じることが多くなります。また、血行不良によって筋肉への血流が低下すると、疲労物質を回収できず栄養物質が行き渡らなくなり、だるさや疲労感に繋がります。

疲労感・だるさを防ぐ栄養素

タンパク質

更年期症状の疲労感やだるさに対して、タンパク質は非常に重要な栄養素です。十分なタンパク質の摂取は、エネルギー代謝、筋肉量の維持、免疫機能のサポートに貢献し、これらを通じて疲労感やだるさを軽減するのに役立ちます。また、タンパク質は、女性ホルモンの合成にも必要です。更年期には、タンパク質の低下がホルモンバランスの崩れにつながり、これが疲労感やだるさの原因になることがあります。バランスの取れた食事で、毎食のタンパク質摂取を心がけることが、更年期を健康に過ごすための一助となります。動物性タンパク質として、鶏肉、魚、卵、牛肉、豚肉が、植物性タンパク質としては、大豆製品(豆腐、納豆、豆乳)、ナッツ類などがお勧めです。

鉄は、赤血球のヘモグロビンの構成成分であり、酸素を全身に運ぶ役割を担っています。鉄が不足すると、酸素が十分に供給されず、全身が疲れやすくなります。鉄を多く摂取するためには、吸収率が高いヘム鉄を多く含む肉や魚介類などの動物性食品を摂りましょう。代表的な食品には、レバー(鶏、豚、牛)や赤身の肉(牛肉、ラム)、魚介類(サバ、マグロ、カキ)、卵があります。また、非ヘム鉄に当たる植物性食品、ほうれん草、ケール、ブロッコリーなどは、ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が高くなります。一方、紅茶、コーヒー、緑茶に含まれるタンニンは非ヘム鉄の吸収を妨げると言われているため食べ方には注意が必要です。

また、食事だけで十分な鉄を摂取できない場合は、ヘム鉄のサプリメントを利用することをお勧めしています。ただし、海外からの輸入サプリメントの摂取は注意が必要です。サプリメントによっては鉄の過剰症のリスクもあるため、必ず栄養療法専門の医師に相談してから使用することをお勧めします。

ビタミンB12と葉酸

ビタミンB12と葉酸は、赤血球の生成に必要で、鉄の利用をサポートします。ビタミンB12や葉酸が不足すると、貧血が進行し、疲労感が増します。日常生活でバランスよく摂取することで、健康維持や特に更年期に関連する疲労感やだるさの軽減に役立ちます。

ビタミンB12は主に動物性食品として、魚介類(サバ、マグロ、サーモン、カニ、イワシ)、肉類(レバー、牛肉、豚肉、ラムなどの赤身肉)、卵(特に卵黄)などの食品に豊富に含まれています。葉酸は、主に緑黄色野菜(ほうれん草やケール、ブロッコリー、アスパラガス、レタス)や豆類、果物に多く含まれています。葉酸は熱や水に弱く、調理中に失われやすい栄養素です。野菜を蒸すことで、葉酸の損失を最小限に抑えることができます。また、 サラダやスムージーに緑葉野菜を取り入れ、生で食べることで、葉酸を効果的に摂取できます。

ツライ症状を緩和させる食品と食べ方

忙しい主婦の方でも実践しやすく、長続きする方法で、【更年期症状のトップ3】を緩和する症状別の食品や食べ方をご提案します。

ホットフラッシュ

ホットフラッシュを緩和、予防するためにはイソフラボン、ビタミンE、ビタミンDの含まれる食品や食事を心がけてください。イソフラボンは、大豆製品から摂取できます。ビタミンEはナッツ類、種子、緑黄色野菜から、ビタミンDはサケ、マスなどの魚介類に多く、きくらげなどのきのこ類にも含まれます。

調理不要、そのまま食べられるから継続しやすい

エストロゲンに似た作用を持つ大豆イソフラボンは大豆製品に多く含まれ、植物性エストロゲンとしてホルモンバランスをサポートし、ホットフラッシュの軽減に役立ちます。

納豆は、そのまま食べられる上、調理不要なので時間がない時に便利です。朝食にご飯と一緒に納豆を加えるだけで、簡単に大豆イソフラボンを摂取できます。また、豆腐はサラダに加えたり、冷奴として夕食に取り入れやすく手軽です。さらに、豆乳を日常的に飲むことをお勧めします。コーヒーやスムージーに豆乳を加えることで、簡単に大豆製品を摂取できます。大豆製品は、普段の食事に組み込みやすいため常備しておくと便利です。

イライラや不安感

イライラや不安感の原因は、神経伝達物質(メンタルホルモン)の減少が一因でした。ホルモンの分泌やバランスを整える作用があるビタミンB群やオメガ3系脂肪酸を積極的に摂取しましょう。ビタミンB群は、鶏肉(特に胸肉)やサーモン、マグロ、玄米やナッツ類に、オメガ3系脂肪酸はサバ、サーモンに多く含まれています。

冷凍サーモンや缶詰で時短調理

オメガ3系脂肪酸は、脳の健康をサポートし、感情を安定させます。EPAとDHAが豊富な魚を摂ることが効果的です。サバの缶詰や冷凍サーモンは、手軽にオメガ3系脂肪酸を摂取できる優れた食材です。ご飯に乗せて丼にしたり、サラダに加えたりするだけで簡単に食事に取り入れることができます。缶詰や冷凍サーモンを常備することで、いつでも簡単にオメガ-3を取り入れることができ、忙しい日々でも無理なく続けられます。

疲労感やだるさ

疲労感やだるさはエストロゲンの減少によるエネルギーの生成率の低下や血行不良による疲労物質の回収や栄養物質の運搬が滞ることが要因でした。よって、それらをサポートするタンパク質、鉄、ビタミンB12と葉酸はしっかり摂取してください。

ちょい足し食材で毎食ごとに高タンパク質を摂取

タンパク質は筋肉の維持とエネルギーの代謝をサポートし、鉄分は酸素の供給を助け、疲労感の軽減に役立ちます。そのためには、毎食ごとのタンパク質摂取と積極的な鉄分摂取を心がけましょう。

しかし、毎食ごとにタンパク質を摂取するのは難しいとお考えの方も多いはずです。そこで、ちょい足し食材を活用しましょう。

高タンパク質の卵は週に一度まとめてゆで卵を作り冷蔵庫に保管しておけばサラダやおにぎりの具にできます。鶏胸肉は茹でてほぐしておけば、サラダやスープ、炒め物にすぐに使え時短で栄養価の高い食事が作れます。また、ほうれん草や豆類は鉄分が豊富なので、冷凍ほうれん草や缶詰の豆類を使いお味噌汁やスープにすると時短調理で簡単に摂取できますので試してみてください。

まとめ

今回は更年期を代表する症状3つについて引き起きる要因やそれを補う栄養素の解説を行ってきました。症状の頻度や度合いは個人差があるため医師のもと適切な治療を受ける必要がある方もいらっしゃるかと思います。しかし、大前提として栄養バランスのよい食事は欠かせません。前述の症状に心当たりのある方は一度、食生活を見直すことも試してみてください。

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梶 尚志

梶 尚志

梶の木内科医院 院長。総合内科専門医、腎臓専門医、家庭医として患者を診察する中で、通常の診察では解決できない「体の不調」に栄養学的なアプローチから治療と生活指導を行う。著書に『「え、私って栄養失調だったの?」その不調は病気ではなく状態です!』、『「えっ、うちの子って、栄養失調だったの?」その不調は食事で改善します!』(共に、みらいパブリッシング)がある。



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