「自分の国籍問題から見えた、人生」モデル・NOMAさんの生き方
――インド旅では何が印象に残っていますか?
「2週間ほどの滞在の中で、食べたことのないインド料理にも出合いながら楽しんではいましたが、自分の身も守らなければならず、大変なことも多かった。国籍のことを考える暇もなかったですね。そうしたら、もともとの野生的な自分が蘇ってきたんです。これまではなんでも直感を大切に生きてきたのに、国籍を選ぶというのが大きなテーマすぎて、自分らしい頭の使い方、選択の仕方ができなくて苦しんでいました。でも元のワイルドなNOMAに戻れた感じ(笑)。」
「インドには着替えもほとんど持っていかなかったので、現地でバンジャービースーツを仕立ててもらい、後半はそれを着ていました。帰りの飛行機でも着ていたら、インド人の方にヒンズー語で話しかけられたんです。もちろん私は何を言っているのか分からずにキョトンとしてしまったら、あとから『君、インド人にしか見えなかった、ごめん!』って。そんなことを言われ、インドが染み付いている自分に気がついたんです。大変だったインド旅も、成田空港に着いたらすっかり恋しくなってしまって。インドに帰りたくなり、一人で号泣してしまいました。」
――そこからの人生、何か変化はありましたか?
「まずはとりあえず東京に行こうと、直感で決めることができました。大学で学んでいた国際法律を通し、紛争など国際問題を知識としては持っていましたが、現場がどうなっているのかを目の当たりにしました。これからも旅を続け、そこで自分が体験したことを本にしようと思いました。そのためには、モデルとして活躍し、多くの方に自分の存在を知ってもらおうと。そうやって、少し未来が見えたような気がしましたね。」
――国籍を決めるという大きな悩みが、インドに向かわせてくれたのですね。
「思い返すと、ちゃんと伏線があるんですよね。そうやって点と点は繋がっていくものです。」
――2011年に世界各地を巡った異文化体験談を綴ったエッセイ本を出版されましたね。人生を楽しむ秘訣が詰まった本でしたが、いつも旅先はどのように決めているのですか?
「やはり感覚です。私は18歳からヨガをやっているのですが、リトリートにはよく行きますね。良かったのはネパール。ファルピンというお寺に滞在しながら、瞑想とヨガができるクラスがあり、とても意味のある時間を送ることができました。世の中“常識”が多いですよね。その中で、自分の声を聞きづらくなっている人って多いと思うんです。だから、今何を感じているのか、どうしたいのかを明確にするための時間は必要。それをリトリートの旅で定期的に行っています。」
――自分と向き合い、心の声を聞きながら、進むべき道を歩んでいるNOMAさん、これからはどんな生き方をしたいと考えていますか?
「最初の話にも関係しますが、私がモデルを始めた頃は、きっと皆さんが持つイメージの中で仕事を依頼してくださっていたのだと思います。でもモデルも一人の人間として想いを伝えることができるようになった今、もっと自分のライフスタイルに沿った中で、表現ができたらベストだと考えています。だから発信することは続けていきたいですね。」
――最後に、NOMAさんが自然な笑顔でいれるときについて、聞かせてください。
「好きな人と好きな時間を過ごしているときかな。でも私はちょっと変わっているので、一人で家の植物を見ていて新たな発見をしたとき、テンションが上がって声を出してしまうこともあります。きっとそれも笑顔。自分が感受性豊かでいれる環境が大事だと思っています。何に対しても一生懸命になりすぎて、些細なことに感動できなくなってしまうのは寂しい。植物の小さな変化に感動する日々を送っていたいですね。」
誰だって、何も手につかなくなるほどに悩んでしまうことがある。しかし、いつもとは違う景色に身を置くことで、ふと答えが見えることだってある。NOMAさんのインド旅がそれを教えてくれた。
独自の道を歩む唯一無二の存在だ。モデルは何も、ファッションやコスメを素敵に見せるためだけに存在するわけではない。幼い頃から土を感じ、たくましく育った彼女が、これから何を表現するのか…私たちはきっとそこから多くの学びを得ることになるだろう。旅する女性・NOMAさんの物語は、これからもきっと様々な場所で見ることができるはずだ。
NOMA(Instagram: noma77777)
ファッションからビューティーまで幅広いジャンルの雑誌や広告、映像等を中心に活躍中のモデル。
日本人の父とシシリア系アメリカ人の母の間に生まれ、佐賀県で自然に囲まれて育つ。大学では国際情勢や環境法について学び、在籍中より始めていたモデルの仕事を本格的に行うため、卒業後に上京。2011年にアジア圏をはじめアフリカ諸国など、世界各地を巡った異文化体験談を綴ったエッセイ本を出版。アーティストやアパレルブランドとのコラボ制作にも携わり、2012年以降は植物の知識やフードコンシャスさを活かして、ダイニングレストランやカフェのプロデュースも手がける。
趣味は自然科学を探求する旅、ポラロイド、料理。
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